アルベール・カミュ (Albert Camus)

1913.11.7〜1960.1.4
アルジェリア生まれ。
フランス人入植者の父が幼時に戦死、不自由な子供時代を送る。
高等中学の師の影響で文学に目覚める。
アルジェ大学卒業後、新聞記者となり、第2次大戦時は反戦記事を書き活躍。
またアマチュア劇団の活動に情熱を注ぐ。
1942年「異邦人」が絶賛され、「ペスト」「カリギュラ」等で地位を固めるが、
1951年「反抗的人間」を巡りサルトルと論争し、次第に孤立。
以後、持病の肺病と闘いつつ、「転落」等を発表。
1957年、ノーベル文学賞を受賞。
数年後、自動車事故で短い生涯の幕を閉じる。

タレントのセイン・カミュは大甥に当たるそうな。
     L'Etranger
1942異邦人★★★★★

母の死の翌日海水浴に行き、女と関係を結び、 映画をみて笑いころげ、友人の女出入りに関係して人を殺害し、 動機について「太陽のせい」と答える。 判決は死刑であったが、自分は幸福であると確信し、 処刑の日に大勢の見物人が憎悪の叫びをあげて迎えてくれることだけを望む。 通常の論理的な一貫性が失われている男ムルソーを主人公に、 理性や人間性の不合理を追求したカミュの代表作。 養老院から母の死を知らせる電報が届き、 淡々と通夜と埋葬を見届けるムルソー。 その翌日、海水浴に行き、女と寝て、喜劇映画を見て、 友人の色恋沙汰のトラブル相手を太陽の照りつける浜辺で射殺する。 ここまでが第1部。第2部は裁判と獄中の模様。 ムルソーという男の魅力に尽きる作品。 ("ムルソー"は死と太陽の合成語) 自身にただ誠実な彼には現在と具体的なものが重要で 意味のないことはわざわざしゃべらない。 母親の葬儀で涙を見せない、規範のお芝居をしないと、 社会では異邦人としてあつかわれるが、 嘘(演技)をまとうよりも実在の死を選び、真理に到る。 いかに人類が思い上がっていることか。 最後の叫びの迫力もすごい。
    Le Mythe de Sisyphe
1942シーシュポスの神話★★★★
神々がシーシュポスに科した刑罰は大岩を山頂に押しあげる仕事だった。 だが、やっと難所を越したと思うと大岩は突然はね返り、 まっさかさまに転がり落ちてしまう。 ―本書はこのギリシア神話に寓してその根本思想である “不条理の哲学”を理論的に展開追究したもので、 カミュの他の作品ならびに彼の自由の証人としての さまざまな発言を根底的に支えている立場が明らかにされている。 不条理を題材にした思想書。 不条理な論証、不条理な人間、不条理な創造、 総括的で象徴的なシーシュポスの神話の考察、 カフカ論を付録した構成。 真に重大な哲学上の問題はひとつしかない。自殺ということだ。 人生は生きるに値するか否かを判断する根本問題。 不条理を結論ではなく出発点と見なし試論が展開されます。 当然、キルケゴールやらフッサールやら名高い哲人が ぞろぞろ出てくるけどその属性の説明がほぼないので 基礎知識に欠けるときびしいものがあります(経験者談) ニーチェ(永劫回帰)とドストエフスキーの影響が強いのかな。 不条理な世界に対峙するにはどうすべきか。 シーシュポスの神話の見解は感心するばかり、まとめとして最適。 サルトルは本書を「異邦人」の"正確な注釈"で"哲学的翻訳"と評す。  "不条理、それは神のない罰だ"
 "悲哀に沈む人間の場合、そうなる理由がふたつある、  無知であるか、期待をいだいているかだ" も好き
    La Peste
1947ペスト★★★★★

アルジェリアのオラン市で、 ある朝、医師のリウーは鼠の死体をいくつか発見する。 ついで原因不明の熱病者が続出、ペストの発生である。 外部と遮断された孤立状態のなかで、 必死に「悪」と闘う市民たちの姿を年代記風に淡々と描くことで、 人間性を蝕む「不条理」と直面した時に示される人間の諸相や、 過ぎ去ったばかりの対ナチス闘争での体験を 寓意的に描き込み圧倒的共感を呼んだ長編。 194*年4月16日、アルジェリアの要港オランで 血を吐いた鼠の死体が次々と発見される。 その死骸が街中にあふれた頃、不調を訴える市民が増加。 ここにきて医師たちはこの蔓延する疫病をペストと宣言。 市全体が遮断され、隔離された市民と病魔の闘いがはじまる。 医師リウー、旅人タルー、老吏グラン、新聞記者ランベール、 神父パヌルー、判事オトン、犯罪者コタール…… 閉鎖された生活でのそれぞれの心境の変化に刮目。 タルーの手帳に記された奇天烈な考察もすばらしい。 序盤の時間をむだにしない方法なんて最高ですね。 もっとも謎多き彼の物語がようやく語られると 軽い見方は一変してしまうのですが。 グランの執筆の試行錯誤など重く暗い中にもユーモアもあり。 (彼が記述者じゃないのね。リウーじゃまんまだ) 不条理の象徴として捉えられるペストの扱いも手厚い構成ですね。 まったく想像でこれだけのものをよく描けるものです。
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