村上 春樹 (むらかみ はるき)
1949.1.12〜
京都府京都市生まれ。
西宮市立香櫨園小学校、芦屋市立精道中学校、
兵庫県立神戸高等学校、早稲田大学第一文学部演劇科卒。
ジャズ喫茶"ピーター・キャット"の経営を経て、
1979年「風の歌を聴け」でデビュー。
同書で第22回群像新人文学賞を受賞。
1982年「羊をめぐる冒険」で第4回野間文芸新人賞を受賞。
1985年「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」で第21回谷崎潤一郎賞を受賞。
1987年「ノルウェイの森」が世界的ベストセラーに。
1996年「ねじまき鳥クロニクル」で第47回読売文学賞を受賞。
1999年「約束された場所で―underground 2」で第2回桑原武夫学芸賞を受賞。
2006年、フランツ・カフカ賞・フランク・オコナー国際短編賞を受賞。
2009年、エルサレム賞を受賞。
超参考
1979「風の歌を聴け」★★★★☆
1970年の夏、海辺の街に帰省した<僕>は、 友人の<鼠>とビールを飲み、 介抱した女の子と親しくなって、退屈な時を送る。 2人それぞれの愛の屈託をさりげなく受けとめてやるうちに、 <僕>の夏はものうく、ほろ苦く過ぎさっていく。 青春の一片を乾いた軽快なタッチで捉えた出色のデビュー作。 僕と鼠ものシリーズの第一作。 1970年の夏休み中の物語。 文庫で150P程度の短い長編。隙間も多いので2時間で読み終わっちゃう。 本書最大のトリック(?)はデレク・ハートフィールドが 実在する作家ではないところですね(w 作風がどこかヘミングウェイっぽいなぁと思ってて、 名前も出てきたからあの時代の感じなのかなと思ったら。 (読了時にはそんな印象も消失いていたのだけれど) 脈絡がないようで整然としていて、軽妙でいて鋭利で、 独特の文体センスに酔いしれられること請けあい。 じっさい、作中で飲んでばっかりだし(w 比喩の表現が頭抜けています。
1987「ノルウェイの森」★★★★☆
暗く重たい雨雲をくぐり抜け、飛行機がハンブルク空港に着陸すると、 天井のスピーカーから小さな音で ビートルズの『ノルウェイの森』が流れ出した。 僕は1969年、もうすぐ20歳になろうとする秋のできごとを思い出し、 激しく混乱し、動揺していた。 限りない喪失と再生を描き新境地を拓いた長編小説。 なんの前ぶれもなく自殺をしたキズキ。 彼の無二の親友だった主人公(ワタナベトオル)と 彼の恋人だった直子は死の影にとらわれてしまう。 1969年、学生運動が盛んな大学の学生寮で暮らす主人公の 19〜20歳のできごとを回想形式で描く物語。 全体に自殺と性描写があふれた青春恋愛小説。(レイコさんとまでやるかw) なんていったらそりゃもう陳腐な先入観を持ってしまいそうですが、 その辺は世界的に売れてるの本なので読んで損はないはず。 ……ベストセラーという先入観のほうがこわいんですけどね(w どうにも自閉的でばりばりの鬱展開。 喪失だけで再生しているのかな。 軽薄に見えるか重く思えるかどうかが評価の分かれ目。 べつに正解のあるものでもないですしね。 "回収"されない消えた突撃隊や緑パパのメッセージなど、 ほったらかし手法はあんま私にはあわないみたい。 草原にぽっかりあいた穴のイメージが好きだ。▼BACK▼ ▽TOP▽
Kafka on the Shore 2002「海辺のカフカ」★★★★★
「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年になる」 ――15歳の誕生日がやってきたとき、 僕は家を出て遠くの知らない街に行き、 小さな図書館の片隅で暮らすようになった。 家を出るときに父の書斎から持ちだしたのは、現金だけじゃない。 古いライター、折り畳み式のナイフ、ポケット・ライト、 濃いスカイブルーのレヴォのサングラス。 小さいころの姉と僕が二人並んでうつった写真……。 15歳の誕生日に家出をし、東京から四国へ旅立つ田村カフカ。 導かれるかのようにある私立図書館で暮らすことに。 一方、戦時中、小学生時代になぞの集団昏睡事件に遭って以来、 記憶が欠落してしまい、知的障害を抱える老人ナカタさん。 少年と老人、平行する2つの物語が ある殺人事件を契機に交差へ向かう―― 表層だけでもかなりのエンタメ作品。 会話が多いので(ネコとの会話まであるw)どんどんページも進むし、 思春期の葛藤、幻想的な風景、不条理で不思議な人物たち、 (文学や音楽の)古典のスクラップ、エログロ描写、 夢幻と現実の境界をふらつき、世界の領域を越えちゃったり、 あれこれ詰めこまれていて、なかなかぶっ飛んでます。 でもやっぱり象徴・抽象的でいろいろ疑問も残るかも。 メタファと連呼されると素養学識の浅い私はしっぽを立てます。 博覧強記なお方はさまざまな深読みができて、 エレメントのそれっぽい符合を楽しめるんだろうなぁ。 (ソースは作中に語られているものばかりの気がするけど) んまあ、そんなん抜きでおもしろかったからいいや。 けど未確認飛行物体と集団昏睡、ファフロッキーズ現象、 殺人(自殺?)罪のありかとかその他色々曖昧でいいのか、自分。 しかし田村少年は心身ともに磨かれて達観しているので そのままでも折り合いつけられそうだよなぁ。