The Japanese Nickel Mystery
2005「ニッポン硬貨の謎」★★★★☆
1977年、ミステリ作家でもある名探偵エラリー・クイーンが
出版社の招きで来日し、公式日程をこなすかたわら
東京に発生していた幼児連続殺害事件に興味を持つ。
同じ頃、大学のミステリ研究会に所属する小町奈々子は、
アルバイト先の書店で、五十円玉二十枚を
「千円札に両替してくれ」と頼む男に遭遇していた。
奈々子はファンの集い「エラリー・クイーン氏を囲む会」に出席し、
『シャム双子の謎』論を披露するなど大活躍。
クイーン氏の知遇を得て、都内観光のガイドをすることに。
出かけた動物園で幼児誘拐の現場に行き合わせたことから、
名探偵エラリーの慧眼が先の事件との関連を見出して…。
敬愛してやまない本格ミステリの巨匠EQの遺稿を翻訳したという
体裁で描かれる『ニッポン硬貨の謎』The Japanese Nickel Mysteryが、
十余年の歳月を経て堂々完成。
アメリカの作家にして名探偵が日本の難事件をみごと解決する、
華麗なるパスティーシュの世界。
エラリー・クイーン生誕百年記念出版。
まず、この作品は、
【第6回本格ミステリ大賞〈評論・研究部門〉受賞】
なのですよ。評論・研究なんですね。
「競作 五十円玉二十枚の謎」(若竹七海)までからめた
倒叙ものの小説としても読めるけど、
やはり随所にちりばめられたクイーン論がおもしろい。
何重ものメタ構成――ここでは"描表具"というべきか――も
なんだかめまいとニヤケがしてきてたまんない。
クイーンを知っているほどにたのしめるはず。
とりわけ「シャム双子の謎」論は別格、
というか、これありきって感じ。このためにって感じ。
ハム・ソーセージの原典?(^^;
しかし、脚注のひとつ、
"後期クイーン流の天空を飛翔する論理"(P.303)
には爆笑しちゃったな(w
なんていいまわしだ、最高。
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