1961「砂の器」★★★☆☆
宿命とはこの世に生まれて来たことと、生きているということである。
東京・蒲田駅の操車場で男の扼殺死体が発見された。
被害者の東北訛りと“カメダ”という言葉を
唯一つの手がかりとした必死の捜査も空しく捜査本部は解散するが、
老練刑事の今西は他の事件の合間をぬって執拗に事件を追う。
今西の寝食を忘れた捜査によって断片的だが貴重な事実が判明し始める。
だが彼の努力を嘲笑するかのように第二、第三の殺人事件が発生する……。
刑事ミステリ。上巻。
操車場で発見された惨殺死体の捜査の物語。
ベテラン刑事・今西の丹念な捜査がメインで、
犯人らしき人物とその関係者の視点も入りまじり進行します。
取りたてて魅力的なミステリー(謎)はありません。
倒叙風で、現実的、社会派路線ですのでね。
人間は背負った宿命から逃れることはできない。
善良この上ない元巡査を殺害した犯人は誰か?
そして前衛劇団の俳優と女事務員殺しの犯人は?
今西刑事は東北地方の聞込み先で見かけた
“ヌーボー・グループ”なる新進芸術家たちの動静を
興味半分で見守るうちに断片的な事実が
次第に脈絡を持ち始めたことに気付く……
新進芸術家として栄光の座につこうとする青年の
暗い過去を追う刑事の艱難辛苦を描く本格的推理長編である。
下巻。
第二、第三の殺人事件と断定しちゃってるけど、うーん……。
こちらも捜査捜査で一歩ずつ確実に真相へ近づいていきます。
その過程もね、ちょっと長すぎるかなぁと。800ページだもん。
会話主体でスラスラ読みやすいけど、重複してる部分や
難航してる部分は削ってもよさげ。さすがに冗長。
ミステリ面を欲張らなきゃすっきりしてただろうに。
(凶器はエグくて好き)
でも、まあ、これが清張らしい作品なのでしょうね。
特有のうまみはありますよ。
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