1992「地獄の奇術師」★★★★☆
十字架屋敷と呼ばれる実業家の邸宅に、
ミイラのような男が出没した。
顔中に包帯を巻いた、異様な恰好である。
自らを「地獄の奇術師」と名乗り、
復讐のためにこの実業家一族を皆殺しにすると予告をしたのだ。
「地獄の奇術師」の目的は何なのか。
女子高生で名探偵、二階堂蘭子の推理が冴え渡る、本格探偵小説。
二階堂蘭子シリーズ第1弾。ミステリ。
…ああ、驚いた。
別に「驚愕の真実」や「意外な犯人」に
ビックリしたわけじゃないんですけどね。
(珍しく大雑把には看破できましたよ)
まず、
>女子高生で名探偵、二階堂蘭子
これがもう数年前から興味はあったんですよ。
でものびのびになっててようやく読破。
んで、蘭子たんなんですが、序盤の作中でこのように紹介されています。
私の隣には、私と色違いの茶色いコートを着た、
綺麗な顔立ちの少女が歩いている。
その若々しいはつらつとした表情を見ると、
勝気な漆黒の瞳が印象的に輝いており、驚くほど豊かな巻き毛が、
映画女優と見間違うばかりに、肩の上へ美しく降りかかっていた。
彼女の名前は二階堂蘭子。私と同年の義妹である。
義妹キタ━━━(゜∀゜)━━━!!!!
や、もう、この時点で歴史的かつ画期的名作ですよ!
"私"ってのは記述者の二階堂黎人くんです。
(ちなみに父親・二階堂陵介は警視庁警視正)
義妹のホークショーちゃんなんて「チェキー!」とかいってるあの娘しか
知らないもんなあ、萌えるけどあれは探偵とはいいがたいもんなあ。
序盤にこんなシーンもあります。
二階堂兄妹と親友の英希がミステリ談議をして、
英希が乱歩を批判的に攻めたてます。すると…
「それは認めるわ。でもやっぱり、乱歩の悪口は嫌だわ」
乱歩叩かれてすねてる━━━(゜∀゜)━━━!!!!
ああ、驚いた。こんなすてきな探偵を今まで知らずにいたなんて…
ただ極めて遺憾なことに"私"の呼称が「黎人」なんですorz
ぜんぜん異性の意識もしてないし、もったいねぇ…
この辺が星4つのゆえんです(w
(探偵役がおっさんとかだったら星3つ)
さてさて、ついで(!)に内容の紹介でも軽く。
作風は「乱歩が生みの親、カーが育ての親」と豪語するだけあって
怪奇趣味がちりばめられています。
作中にもいろんなミステリの名作が引用されてるので、
ある程度 ミステリの大局観はつかんでないと食あたりするかも。
あとあんまりにも名作を引用するもんだから、
この作品の魅力がすべてオマージュに思えてきちゃうんだな。
自分で自分の首をしめてる感じ。
(あのオチでQの「十日間の不思議」の引用をよくできるね…)
オリジナルな部分もも少し頑張って欲しい要素が多い。
科学捜査をきらって舞台を昭和中期にするのも姑息といえばそれ。
これシリーズ第3弾あたりでやればよかったのにね。
あわよくば「人狼城」まで繋ごうかと思ってたけどキツいかな…
まあ、雰囲気至上なら問題ない完成度だし、
乱歩やカーの呼吸が好きならおさえておくべき作品ではありますね。
90年代初頭の島荘の解説が読めるのもおいしいです(w
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