岡嶋 二人 (おかじま ふたり)

徳山 諄一と井上 泉(井上 夢人)の共作筆名。
ともに東京都出身。
誘拐ものに定評がある。読ませ上手。
1982年「焦茶色のパステル」で第28回江戸川乱歩賞、
1986年「チョコレートゲーム」で第39回日本推理作家協会賞、
1989年「99%の誘拐」で第10回吉川英治文学新人賞を受賞。
同年、「クラインの壷」を刊行し、コンビを解消。
1989「クラインの壷」★★★★
ゲームブックの原作募集に応募したことがきっかけで ヴァーチャルリアリティ・システム『クライン2』の 制作に関わることになった青年、上杉。 アルバイト雑誌を見てやって来た少女、高石梨紗とともに、 謎につつまれた研究所でゲーマーとなって 仮想現実の世界へ入り込むことになった。 ところが、二人がゲームだと信じていたそのシステムの実態は…。 現実が歪み虚構が交錯する恐怖。 ホラミス・SFメタ風味。 リズムが非常にいいので400ページ(文庫)も一瞬で読み終えられます。 (会話にオウム返しが多いのは気にかかったけど) とにかく"近い"んですよ、作品世界との距離が。 それゆえ歪みや軋みがひしひし伝播してくる恐怖。 細かいこと気にしないなら間違いなく星5つの良作です。 破綻から始まる物語っていいやね。
1988「99%の誘拐」★★★★
末期ガンに冒された男が、病床で綴った手記を遺して生涯を終えた。 そこには8年前、息子をさらわれた時の記憶が書かれていた。 そして12年後、かつての事件に端を発する新たな誘拐が行われる。 その犯行はコンピュータによって制御され、 前代未聞の完全犯罪が幕を開ける。 第十回吉川英治文学新人賞受賞作。 倒叙ミステリ。ほぼサスペンス。 親子2代にわたる2つの誘拐もの。 本書なんですが、本屋(サティ)で、 「この文庫がすごい!2005年版 第1位  ミステリー&エンターテインメント部門」 という帯に巻かれ、本棚を4段も占拠していました(^^; 講談社こそすごいね、文庫と年度と部門があるんですよ、 もはや販売促進術が陥穽に思える(w まあ、購入したのは近所の古本屋なんですけどね(まさに外道w) この作品が発表されたのは1988年。 現代(2005)では常識のPC関係の知識がてんこ盛りで仰天。 きっと、当時 読めば「???」、 現代では「古臭い、無理がある」と、なんとも儚い作品です(w とはいえ、「クラインの壷」と同様、ものすごい読みやすいし、 斜に細部をつついたりしなけりゃ傑作なのはお墨付き。 ラストではもっと露悪趣味を煽ってもよかったですけどね。 タイトルの「99%」っていうのも、 綿密に計画された完全犯罪なのになぜ100%じゃないのか、 この辺も読み応えあります。
1989「解決まではあと6人 5W1H殺人事件★★★☆☆

次々と興信所を訪れては、 およそ事件とは思われない奇妙な依頼をしていく謎の女・平林貴子。 いったい、彼女の本当の目的は何なのか。 やがて、それぞれの調査報告が、ひとつの輪のように繋がって 隠された大事件の全容が明らかになっていく。 斬新なスタイルで、読者に挑戦する華麗なるメドレー・ミステリー。 ミステリ。 まずは目次のコピーでも。 第一章 WHO?  ――あと6人 第二章 WHERE? ――あと5人 第三章 WHY?  ――あと4人 第四章 HOW?  ――あと3人 第五章 WHEN? ――あと2人 終章  WHAT? ――あと1人 これが副題の「5W1H殺人事件」の由来ですな。 ひとりの女性があちこちの探偵事務所で不思議な依頼を続け、 だんだんと浮かび上がってくる事件の全体像―― 最後が WHAT? なのもニクいぞ。 ちょっと詰めこみすぎの気もするけど。 この著者は新感覚のギミックがほんと上手いです。 変格でいて本格なのは、バランス崩すと地雷ですもんね。
1987「そして扉が閉ざされた」★★★★★

富豪の若き1人娘が不審な事故で死亡して3カ月、 彼女の遊び仲間だった男女4人が、 遺族の手で地下シェルターに閉じ込められた! なぜ?そもそもあの事故の真相は何だったのか? 4人が死にものぐるいで脱出を試みながら推理した意外極まる結末は? 極限状況の密室で謎を解明する異色傑作推理長編。 本格ミステリ。 プロットは上記のとおり単純。 富豪の娘が不審な事故死をとげ、 その遊び仲間だった男女4人が、 娘の母親によって地下シェルターに閉じ込められる。 どうやら母親は事故ではなく殺人で、 犯人がこの4人のだれかだと確信しているらしい。 そして閉じこめられた男女4人は、 この事件についてあらためて推理をはじめるが……。 真相はただあざやか。 微妙とはいえ一人称なので、はずされると思わせてあれですよ! これは早期にぜひとも読んでおきたい一作ですね。
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