真保 裕一 (しんぽ ゆういち)

1961〜
東京都生まれ。
千葉県立国府台高校卒。
アニメーションディレクターを経て
1991年『連鎖』で江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。
『取引』『震源』と続く通称『小役人』シリーズで着実に読者を獲得する。
1995年『ホワイトアウト』が人気を決定づけ、
1996年、吉川英治文学新人賞を受賞。
1997年『奪取』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を受賞。
1995「ホワイトアウト」★★★★
日本最大の貯水量を誇るダムが、武装グループに占拠された。 職員、ふもとの住民を人質に、要求は50億円。 残された時間は24時間! 荒れ狂う吹雪をついて、ひとりの男が敢然と立ち上がる。 同僚と、かつて自分の過失で亡くした友の婚約者を救うために―。 圧倒的な描写力、緊迫感あふれるストーリー展開で話題をさらった、 ハードアクション・サスペンスの最高峰。吉川英治文学新人賞受賞。 日本最大貯水量を誇るダムが武装グループ「赤い月」に乗っ取られる。 同僚と亡き友の婚約者を救うべくダムに向かう富樫。 彼のもう一つの敵は厳寒期の雪山に絶え間なく降りしきる雪。 ダムを舞台に展開するハードアクション・サスペンス。 雪山の臨場感は手ばなしで称賛。 国内の冒険小説でトップレベルでしょう。 そもそも日本向きのジャンルじゃないですし。 ヒロイン(パート)がしょぼいけど、 ダムの運転員・富樫の根性がやばい。漢だ。 タイトルのホワイトアウト(whiteout)は、 (1)極地の雪原で、一面の雪の乱反射のために   天地の区別や方向・距離などの感覚が失われる現象。 (2)猛吹雪のために視界が極度に低下すること。 をさします。 それ以上の語義をこの物語からすくい出せますな。 しかし、最初に遭難したふたりが一味なのは読めるとして、 少し手を加えれば「じつは富樫が黒幕」なのにも 仕立てあげられただけにおしい。 これをやってのければミステリとしても とんでもねえ作品になってたのにねえ――ダメか?
2000「ストロボ」★★★☆☆

走った。ひたすらに走りつづけた。 いつしか写真家としてのキャリアと名声を手にしていた。 情熱あふれた時代が過ぎ去った今、 喜多川は記憶のフィルムを、ゆっくり巻き戻す。 愛しあった女性カメラマンを失った40代。 先輩たちと腕を競っていた30代。 病床の少女の撮影で成長を遂げた20代。 そして、学生時代と決別したあの日。 夢を追いかけた季節が、胸を焦がす思いとともに、甦る。 ジャンルはとくになし。連作短編小説です。 ひとりの写真家のヒストリー。目次も、 第五章 遺影   ―50歳 第四章 暗室   ―42歳 第三章 ストロボ ―37歳 第二章 一瞬   ―31歳 第一章 卒業写真 ―22歳 あとがき といった具合に月日の潺湲を溯っていきます。 あとがきで本人もいってるけど、ミステリ的な切り口もあり。 同時に死という安易な切り口に頼りすぎな気が……。 写真について専門的であるのが長所で短所。 単純に好奇心を刺激され見方さえ変わる反面、やや説明不足かも。 それでもひとりの男の生き様はリアルで上質です。
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