amours, Delits et morgue & Le parti le plus honorable
1985「21のアルレー」★★★☆☆
太りに太った妻に愛想をつかした夫は、
ふと小耳にはさんだ砂風呂療法の話を利用して妻を片づけようと……
哀れで滑稽な「阿呆は誰だ?」をはじめ、
貨物船に密航した男が味わう飢えと渇きの恐怖を描く「慈悲の鐘の音」や、
おなじみ悪女もの、SF、ホラー、実話、ショート・ショートなど、
才知あふれるアルレーはじめての万華鏡のような傑作短編集。
21話収録の短編集。
原題を直訳すると「愛と犯罪と死体公示所」
「※」付きは実話が原形です。
多少は脚色されていると思いますが――
慈悲の鐘の音 En un vieux coup de misericorde
船倉に閉じこめられた密航者の物語。
食料確保のため、荷箱を開くと、そこにはボア(大蛇)が…
神経症の患者たち Les petits mentaux
悪女もの。ジョギングで夫殺害を目論む妻の話。複数形(w;
見知らぬひとの子を宿して A naitre de pere inconnu
SF。見知らぬ"ひと"の子を宿した女性のお話。
雌鶏と死 La poule et la mort ※
夕食にボイルドされる雌鶏と少年の話。ラストの1行がナイス(w
家 La maison
家そのものを愛した夫婦の顛末。
「クリスマス、おめでとう!」 "Joyeux Noel!" ※
単純なミステリ。ベタすぎるかな…でも実話なんだよね。
信じ難い物語 Une incroyable histoire ※
クジラに呑まれ生還した漁夫の話。
現代のヨナことジェームズ・バートレー。
片腕の男 Le Manchot ※
ヒッチハイクで乗せた片腕の男のエピソード。
オチが洒落てるけど、あれも実話の範疇なのかな…
テスト Le test
心理テストを受ける粗暴な男。テストの目的とは?
ありふれた事件 Fait divers
よくある齟齬が生むありふれた殺人事件。
地獄へのツアー Calvaire a forfait ※
砂漠で遭難する男女4人の物語。
これはなかなかショッキングでした(;´Д`)
これが実話だとよく判明したよなあ…
赤い電話 Le telephone rouge
大統領の前にある赤い電話。受話器を取り上げたら
大戦の幕開けで人類滅亡必至。オチのギャップが(^^;
大典礼の働き蜂たち Les Abeilles du grand rituel
SF。上の続編?(w 巨大なカニって不気味すぎ('A`)
わが友フランク Mon ami Frank
叙述者とフランクの友情物語。不自然さが最後で解消。
樅の木 エドガー・ポオに捧ぐ Le Bois de sapin:En hommage a Edgar Poe
意識がありながら埋葬された女の子。ポオに捧ぐんだ(w
人情の問題 Simple question d'humanite
突如、侵入してきた犯罪者らしい男に襲われ、
はずみで殺してしまい、死体処理をする女性の話。
「主の御心ははかり難し」 "Les voies du seigneur sont impenetrables"
猫に生まれ変わった視点で進行。どうかフィクションたれ(^^;
阿呆は誰だ? Kikekon
太りに太った妻の殺害を計画する夫。
老夫婦の話なんですが、とても切ない(´・ω・`)
非常に特殊な被告 Un Accuse tres special
弁護士の最終陳述のみの構成。被告と背景が深い。
むさぼるばかりの情熱 Une passion devorante
浮気性の夫を持つ妻の話。――こわかった。
理想の相手 Le parti le plus honorable
中年女性が理想の相手を語るだけ。なにこれ(w
と、21話もあるのでかさばるなあ。
じっさいはショート・ショートがメインで、
文庫で300ページ程度なので一瞬で読破です。
統一性がないはずながらもアルレーの魅力は
発揮されていると思うので入門にもよさげでした。
巻末に「文庫データ・ボックス」なるコーナーがあって驚く。
仲睦まじいアルレー夫妻来日のエピソードなどが掲載。
創元文庫ってばこういうのもっとやりんさいよ。
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