ジェイムズ・エルロイ (James Ellroy)
1948〜
ロサンジェルス生まれ。
10歳の時に母親を殺害され(迷宮入り)、
17歳の時に父親を失う。
学校教育はほとんど受けず職を転々としながら
チャンドラーやマクドナルドを愛読し独学で作家修業に励む。
1981年に「レクイエム」で作家デビュー。
Blood on The Moon 1984「血まみれの月」★★★★☆
その孤独な殺人者は内なる妄念に衝き動かされ、 次々と若い女を惨殺していた。 ある時は路上で。またある時は被害者の部屋で。 "詩人"と呼ばれるその男はいつも彼の最愛の女性を殺すのだった―。 一方この殺人者を追い求めるロイド・ホプキンズは ロス市警強盗殺人課の部長刑事。 仲間から"ブレーン(頭脳)"と呼ばれる天才肌で、 異常なほどの正義感をもつ男だった。 そのホプキンズの直感が犯人は一種の天才であると告げていた。 天才対天才の闘いが始まった直後、 ホプキンズに市警の上層部から圧力がかかった。 上司からも部下からも見放され、 〈静かな狂気〉と化したホプキンズは、 ひとりロサンジェルスの街を駆けめぐり、 〈激しい狂気〉である"詩人"を追いつめる。 ミステリ。ロイド・ホプキンズ・シリーズ第1弾。 身長2メートルの頭脳派刑事ロイドと 救済のもとに殺人を続ける"詩人"の狂詩曲。 ロイドのプロファイリングは たんに飛躍ともとれるけど天才ありならいいのかな。 同調同化していく過程は見事だし。 論理より狂気が最高のスパイスになってますからね、 警察小説にしてクライム。そしてサイコ。 ただ文章が荒削りな観は拭えないです。 リズムが安定してないし、緻密ともちがう。 解説の人が終盤にバテてると評するのもわかります。 それでも絶対的魅力があるのもたしかなんで "降板"は考えられないと(w なんかねぇ、純朴なんですよ。でもやはり悪食かな。 天才対天才、詩想と信念、狂気と狂気、の図式だけでも成功してます。 ("詩人"がしゃべる必要はまったくないけどね、私見では) 輸血もえぐいぞっ。
Because The Night 1984「ホプキンズの夜」★★★★☆
ロス市警の警官ハーゾグが失踪して3週間が過ぎた。 勤続13年の模範的な警官で変装を得意とし、 単身で市内の各署によく駆り出されていた。 同僚のロイド・ホプキンズ部長刑事は ハーゾグの部屋に泊まり込み独自の捜査を開始するが、 しばらくして奇妙な事実をつきとめる。 ハーゾグは6人の市警警官の資料をとりよせ、 彼らの言動をさぐっていたのだった。 しかもリストの6人目には「ロイド・ホプキンズ強盗殺人課」とあった。 何のためなのか。 一方同じ頃、小さな酒屋で3人が射殺される強盗事件が発生し、 ホプキンズの興味をひく。この凶悪事件と警官失踪を結ぶ糸とは…。 鬼才J・エルロイが放つ新警官小説ロイド・ホプキンズ・シリーズ第2弾。 ロイド・ホプキンズ・シリーズ第2弾。 構成は前作と同様、ロイドと犯人視点が交互に流れます。 今回は精神分析医が相手。やっぱり天才的知能犯。 ロイド、レッドへリング食いまくり(w アメリカンクライムはそれだけで絵になるねぇ。 これが欧州じゃもうひとつだし、国内(アジア)など論外。 しかし「血まみれ」と同年に発表された作品なのに ずいぶんと文章に磨きがかかってるなあ。読みやすい。 単純な慣れもあるだろうけど物語の運び方など別人のよう。 …もしかして訳者のせいか? クイーンをクウィーンとかしやがるし…(w;▼BACK▼ ▽TOP▽
Suicide Hill 1986「自殺の丘」★★★★☆
ロス市内で3人組による銀行強盗事件が続けざまに起きた。 犯人は各銀行を入念に下調べし、不倫進行中の支店長に狙いをつけると、 その愛人を人質にとるという手口だった…。 停職処分中のロス市警部長刑事ロイド・ホプキンズは上司に呼ばれ、 処分がとけると同時にこの強盗事件の担当を命じられた。 ただし、職場はFBIロサンジェルス支部銀行強盗課への出向だった。 調査を開始したホプキンズは、犯人たちに"知性"を嗅ぎ取った。 と同時に彼はこの一件が自分の最後の仕事になると思っていた。 市警の上層部が彼を切りたがっていたのだ。 そして、市警内の宿敵である上司との最終的対決も予感していた。 『血まみれの月』『ホプキンズの夜』に続くホプキンズ・シリーズ第3弾。 ロイド・ホプキンズ・シリーズ第3弾(完結) 前作までの破天荒な行動がたたって、 ついに退職へ追い込まれそうになる我らがロイド。 (よく20年もったよなあ^^;) 冒頭で殺人課から除外され強盗事件を担当します。 そのせいか序盤の展開や犯人たちがやや鈍重な印象に。 それでも後半からの疾走感のある叙情文は健在。 登場人物がみな暗黒を抱え狂ってゆくのも相変わらずですが 今回は性急だったような気もしますね。 ラストの対決も完結篇としては賛否が問われそうです。 もう少し未来性を示唆してもらいたかったのが感想。 ペンギンがやけに愛くるしいですし(w 3部作、最初から最後まで片ちぐな部分もありますが、 エルロイという作家は妙な魅力、中毒性があるので その文章に独特の感慨を発掘できることでしょう。 そして、自殺の丘では死が快感だった。