ジャック・ケッチャム (Jack Ketchum)
1946〜
ニュージャージー州生まれ。
本名:ダラス・ウィリアム・メイヤー
ネイティヴ・インディアンの血を引き、 俳優、教師、出版エージェントなどの職業を経て、
1980年「オフシーズン」で作家デビュー。
実際の事件を題材にし、警鐘したものが多い。
S・キングらの賞賛を浴びるサイコ・スリラー界の注目作家。
The Girl Next Door 1989「隣の家の少女」★★★★★
1958年の夏。当時、12歳のわたし(デイヴィッド)は、 隣の家に引っ越して来た美しい少女メグと出会い、 一瞬にして、心を奪われる。 メグと妹のスーザンは両親を交通事故で亡くし、 隣のルース・チャンドラーに引き取られて来たのだった。 隣家の少女に心躍らせるわたしはある日、 ルースが姉妹を折檻している場面に出会いショックを受けるが、 ただ傍観しているだけだった。 ルースの虐待は日に日にひどくなり、 やがてメグは地下室に監禁されさらに残酷な暴行を―。 キングが絶賛する伝説の名作。 ジャンルはなんだろう……ミステリ、ノワール、ホラー……どうでもいいや。 もう疲れたよ。胃腸が重い、ズンと重い。うんざりだ。 冒頭、のどかな片田舎の川辺でザリガニ取りをしているとき、 たまたま通りがかった利発で快活な少女に魅せられる主人公・デイヴィッド。 その少女は両親を失い、隣のルース家に引き取られてきた姉妹の姉だった。 ゆるやかに、ほのぼのとした12歳の少年の夏は徐々に狂いはじめる。 最初はささいな口論からメグが反抗し、姉妹は折檻される。 動き出した狂気は着実にエスカレートしメグは地下室に監禁され 残虐で陰惨な、けれど詩美な虐待が繰り広げられる。 徹底した傍観者だったデイヴィッドは救助を決心するが―― プロットは姉妹(主に姉)が虐待されるだけです。 この姉妹がねぇ、けなげなの、強いの、愛らしいの、萌えなの。 だっていうのにむごたらしいこの仕打ちですよ。 けど「見てるだけ」のデイヴィッドの心理もリアルで 共感できちゃうからむせかえるような息苦しさを覚えるわけですよ。 この一人称は兵器ですよ。ああ、生々しい。 本書を読んで「女子高生コンクリート殺人」を想起するのは通例のようですね。 私は昔、これの裁判記録みたいの読んで卒倒しかけたことがありましたよ。 テレビじゃ報道されないようなものもネットにはあるのだなあと……。 (未読で興味ある人は勝手に検索して後悔してね☆) 解説は大好きなキングがやってくれてます。 キングは解説でもおもしろいですな(ネタバレあり) ケッチャムはトンプソンやエルロイの流れをくむ作家なんですね。 他の作品もこんなのばっかりのようだし。 それでも読みたくなるんですよ、不快になるとわかっていても……。 あなたもこの救いようのない物語の目撃者になってみませんか? 最悪の後味が待っていますよ(´Д⊂ しかしスーズの靴下の破壊力はすごかった……(;_;)
Road Kill 1994「ロード・キル」★★★☆☆
ウェインは密かな殺人願望を持っていた。 一見するとごく普通の男性ウェインには 昆虫や小動物などを殺し続けた過去があった。 加えて隣人たちの「犬のふんを掃除しない」といった些細な出来事を 手帳に記し、「有罪」として復讐の機会を狙っていた。 ある日、彼は恋人のスーザンと散歩中、不意に彼女の首を絞めた。 驚いたスーザンは咄嗟に逃亡。 だが、その時ウェインは偶然にも殺人現場を目撃。 この日を堺にして彼の心は次第に解き放たれていく。 病めるアメリカをオフビート感覚で描き切った超異常心理ホラー。 女がいる。 名はキャロル。夫ハワードは妻の痛みにしか 興奮しなくなっていき、性的暴力に耐えかねて離婚。 双方、不動産業者で地位があり、 キャロルには離婚歴のあるリーという同業者の恋人がいる。 だが裁判所に停められているにもかかわらず、 ハワードはキャロルに接触を図り、生活をおびやかしていた。 男がいる。 名はウェイン。あまり目立たないバーテンダー。 密かな殺人願望を持ち続け、ある日、恋人スーザンの首を 無意識に絞めてしまう。未遂に終わったが、そのとき、 キャロルとリーがハワードを殺害する現場を目撃。 彼の箍は一気に崩壊し―― 警官がいる。 名はルール。ハワード夫妻の離婚事件に関わっており、 自身もバタードワイフ(暴力夫に悩む妻)症候群に関わっていた。 やがて、大量発生したロード・キルを捜査することに。 Road Killといっても轢死にこだわりはないみたい(^^; いやしかし、後半の殺人劇はすごい。殺す殺す。 原理も単純だからこわれてる部分が浮き出るんですね。 グロさは多少ひかえめでさっぱり(!)している作品。 なお、本書の米題は「JOY RIDE」▼BACK▼ ▽TOP▽
RED 1995「老人と犬」★★★☆☆
老人が愛犬と共に川釣りを楽しんでいる。そこへ少年が三人近づいて来た。 中の一人は真新しいショットガンをかついでいる。 その少年が老人に二言三言話しかけたかとおもうと、 いきなり銃口を老人に向け金を出せと脅した。 老人がはした金しか持っていないと判るや、 その少年は突然、銃を犬に向けて発砲し、頭を吹き飛ばした。 愛犬の亡骸を前に呆然と立ち尽くす老人。 笑いながらその場を立ち去って行く少年たち。 あまりにも理不尽な暴力! 老人は"然るべき裁き"を求めて行動を開始する――。 老人ラドロウと老犬レッド。 唯一の娯楽ともいえる釣りをしているところへ、 三人の少年が話しかけてき、突然 銃を突きつけた。 金を出せというが、裕福そうな少年。 老人の持ち金が少ないと判明すると、レッドを撃ち殺してしまった。 妻に先立たれ、息子は"いない"、娘は嫁いでおり、 孤独になってしまった老人は復讐を誓うが……。 このあと、さっそく新品の銃から身元を割りだし直談判。 少年の父親にはねつけられると、 殺人をはじめるんだろうなぁ、と期待(?)してたら、 裁判へ持ちこもうとするラドロウ。 ケッチャムらしからぬ展開ながら、やはりらしくもあり。 老犬一匹の社会的価値はむずかしいですよねぇ。 動物愛護暴力小説。 ラストでは泣いてしまいましたよ(´;ω;`) よもやケッチャムに泣かされるとは……。