Jonathan Livingston Seagull
1970「かもめのジョナサン」★★★★★
「ほとんどのカモメが、飛ぶことに関して学ぶのは、
いちばん単純な事実だけだ。
海岸から食べ物のあるところまで到達し、また戻ってくること」
ジョナサン・リビングストン・シーガルという名の
風変わりな鳥を描いたこの寓話の中で、
著者リチャード・バックは語る。
「たいていのカモメにとって、大切なのは飛ぶことではなく、食べることだ。
しかし、このカモメにとっては、食べることではなく、
飛ぶこと自体が重要だった」
飛行は、まさにこの物語の意義を高める、象徴的行為である。
この寓話に込められた究極の意味は、
たとえ、群れや仲間あるいは隣人から自分の野心は危険だと思われても、
より高尚な人生の目的を探求することは大切だ、ということだ
(われらが愛するジョナサンもある時点で、自分の群れから追放される)。
妥協せず自分の気高い理想を守ることで、
ジョナサンは、超越という究極の報酬を得た。
そして最後に愛と思いやりの真の意味を知るのである。
ラッセル・マンソンによる幻想的なカモメの写真が、
この物語にふさわしいイラストとなっている。
ただし全体的なデザインは、多少時代遅れの感があるのは否めない
(この作品の初版年度は1970年だった)。
しかしながらこの作品に流れる精神は不朽であり、
とりわけ、若者の心を惹きつけてやまない。
食べるための最低限の飛行で生活するかもめの群れ。
しかしジョナサンだけはちがった。
食事もろくにせず飛行の練習に明け暮れていた。
やがて群れの調和をみだす彼は追放されてしまうのだが――
透明感のあるおとぎ話。
ジョナサンを主観的に見ても客観的に見ても箴言を見出せます。
啓蒙的で、読書中も読後の余韻でも自己啓発させられます。
くたびれた時にこれはいいですよー、広大無辺だもの。
短い長編なので年に1度さっと読みたくなる名作。
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