S・S・ヴァン・ダイン (S. S. VanDine)

1888〜1939
ヴァージニア州チャーロッツヴィル生まれ。
芸術評論・批評家として活躍するも、
1923年、神経衰弱で2年を病床で過ごす。
この時期に約2000冊ものミステリを読破したとの逸話あり。
その後、自らも執筆に手を染め、
1926年「ベンスン殺人事件」でデビュー。
探偵ファイロ・ヴァンスを登場させた。
著書は下記のファイロ・ヴァンス・シリーズ全12作品。
いずれも堅牢な本格ミステリ、少なくとも前期は(w
後年はオグデン・ナッシュの「ケツに一蹴り」に代表される作品批判が集中した。

本名:ウィラード・H・ライト
著作リスト
No. 年度 原題 邦題
1926 The Benson Murder Case ベンスン殺人事件
1927 The 'canary' Murder Case カナリヤ殺人事件
1928 The Greene Murder Case グリーン家殺人事件
1929 The Bishop Murder Case 僧正殺人事件
1930 The Scarab Murder Case カブト虫殺人事件
1933 The Kennel Murder Case ケンネル殺人事件
1933 The Dragon Murder Case ドラゴン殺人事件
1934 The Casino Murder Case カシノ殺人事件
1935 The Garden Murder Case ガーデン殺人事件
10 1936 The Kidnap Murder Case 誘拐殺人事件
11 1938 The Gracie Allen Murder Case グレイシー・アレン殺人事件
12 1939 The Winter Murder Case ウインター殺人事件
    The Benson Murder Case
1926「ベンスン殺人事件」★★★★
ウォール街のインチキ株式仲買人の怪死をめぐり、 容疑者がありあまる中から、 名探偵ファイロ・ヴァンスがアリバイにこだわる検察当局の主張を かたっぱしからたたきこわして、独特の心理分析で真犯人を指摘する。 アメリカ本格派の黄金時代開幕の契機となった記念作で、 多くの模倣作を産み出した歴史的名編。 ファイロ・ヴァンスシリーズ第1弾。 荘厳で該博で巨匠というのに相応しい作家さんですねー。 なんかこう、正座して読みたくなる。 二十則を設けて自ら無視する大物です(w あとアーヤのなんかの作中で 「一人の作家に半ダース以上の優れた探偵小説が書けるはずがない」 とかいってた気がする。それも実践してるらしい(w 序盤の執拗なヴァンスの紹介に冗談抜きでげんなり辟易しますが、 それを切り抜ければ(地味に)満足できると思います。 このシリーズは繋がりが薄めながらあるので読むなら順番がいいですよー。
    The 'canary' Murder Case
1927「カナリヤ殺人事件」★★★★
ブロードウェイの名花“カナリヤ”が密室で殺される。 容疑者は四人しかいない。 その四人のアリバイは、いずれも欠陥があるが、 犯人と確認し得るきめ手の証拠はひとつもない。 ファイロ・ヴァンスシリーズ第2弾。 密室もの。 ポーカーでの犯人当て(分析)はあまりにも有名。 大して役に立ってないような気はしますが(w
    The Greene Murder Case
1928「グリーン家殺人事件」★★★★★

ニューヨークのどまんなかにとり残された前世紀の古邸グリーン家で、 二人の娘が射たれるという惨劇がもちあがった。 この事件をかわきりに、一家のみな殺しを企てる姿なき殺人者が跳梁する。 神のごときファイロ・ヴァンス探偵にも、さすがに焦慮の色が加わった。 一ダースにのぼる著者の作品中でも、一、二を争うといわれる超A級の名作。 ファイロ・ヴァンスシリーズ第3弾。 問答無用の超大作。ど真ん中の豪速球。 ミステリファンの冥利に尽きます♪ 限界まで容疑者を減却させる神業。 館ものの頂点じゃないかな。
    The Bishop Murder Case
1929「僧正殺人事件」★★★★★

コック・ロビンを殺したのはたあれ。 「わたしだわ」と、雀がいった! マザーグースの童謡につれて、 その歌詞のとおりに怪奇残虐をきわめた連続殺人劇が発生する。 無邪気な童謡と無気味な殺人という鬼気せまるとり合せ! ファイロ・ヴァンスシリーズ第4弾。 有頂天外の超大作。童謡殺人。 僧正(ビショップ)はチェスの駒、その要素も。 この2枚は読まなきゃ嘘。
    The Scarab Murder Case
1930「カブト虫殺人事件」★★★★
完全であることを唯一の弱点とする完全犯罪を描いて 第一人者が贈る第五作。 エジプト博物館内で復讐の神を前にして殺されていた死体は、 あまりにも明確に犯人を指摘しすぎていた。 法律的には正義の鉄槌を下しえない犯人に対し、 エジプトの復讐の神は、いかなる神罰を用意していたか? 神を信じないファイロ・ヴァンスの知性は苦悶する。 ファイロ・ヴァンスシリーズ第5弾。 Scarab(スケラブ)=カブト虫です。 昆虫じゃなくてエジプトの記章(装飾品)の一種。 カバーイラストや挿し絵があるのでイメージはしやすいです。 エジプトがからむと怪奇度が上昇してカーっぽくなるね。 ヴァンスの衒学癖は健在ですが(w 今回はそれに意味がある(!)ので巧妙だなぁ、と。 でもこれ逆トリックよね。この時代にして。 ところで、数年ぶりにこのシリーズ読んだのだけど、 記述者ってヴァン・ダインだったよね? なんか影が薄すぎるんですが…(^^; 最初、マーカムと混合・錯覚して混乱しちゃったよ。 完膚なきまでに無視されてるんだもの(w いや、記述上不必要だからカットしてる設定なのでしょうけど、 このシリーズを読むのが初めてでこの作品読んだら "私"がだれなのかわからずこわくなりますよ、きっと。 せめてカバー折り返しでくらいは紹介してあげれ(w
    The Kennel Murder Case
1933「ケンネル殺人事件」

巨匠会心の第六作! 世界推理文壇の寵児となった作者が 〈コスモポリタン〉誌のたび重なる要請に応えて連載した本書は、 果然、ヴァン・ダイン・ファンの期待にたがわぬ傑作となった。 古代中国陶器と犬についてのペダントリーに彩られた殺人事件は、 それらの要素がクロス・ワード・パズルのように関連しあい、 正しい解決へと導いていく。 ファイロ・ヴァンスシリーズ第6弾。
    The Dragon Murder Case
1933「ドラゴン殺人事件」

衆人環視の中を庭園プールにとびこんだ青年は、 そのまま忽然と姿を消し、水底からは死体すら発見されなかった。 ただ巨竜の足跡が……。 この現代アメリカに、果たして原始古代の巨竜などが存在するのであろうか? 幻想世界をふまえて、真相をつきとめようとするファイロ・ヴァンス。 彼は七度目の試練を、果たしてのりきれるかどうか? ファイロ・ヴァンスシリーズ第7弾。
    The Casino Murder Case
1934「カシノ殺人事件」

毒殺されたと推定されるのに胃から毒物が検出されぬ謎。 単なる水をのんでは、つぎつぎに倒れる被害者。 ただの水に、果たして毒物が含まれているのだろうか? H20のモチーフをたどるファイロ・ヴァンスは、ついにD20にたどりついた。 カシノのルーレットの輪のように旋回をつづける事件は、 一発の銃声とともにその回転をとめる……。 ファイロ・ヴァンスシリーズ第8弾。
    The Garden Murder Case
1935「ガーデン殺人事件」

一発しか聞えなかった銃声は、たしか二発射たれたはずだった。 しかも聞えた一発は空弾だった。 ニューヨークの住宅街の中心、二十階建の高層アパートの屋上ガーデンで、 競馬に全財産を賭けた青年が怪死した。 事件は、その最初から終りまで現場に立会ったファイロ・ヴァンスをして、 完全犯罪と驚嘆せしめるほど巧妙をきわめたものだった! 放射性ナトリウムと、ラテンの古典、そして当代屈指の名馬という 解読不可能な組合わせをついに可能にするファイロ・ヴァンス会心の推理。 ファイロ・ヴァンスシリーズ第9弾。
    The Kidnap Murder Case
1936「誘拐殺人事件」

ガーデン殺人事件を解決して一息ついたファイロ・ヴァンスのもとへ、 奇怪な誘事件の知らせがとどく。旧家の道楽息子が誘され、 現金五万ドルの身代金を要求した紙が残されていたというのだ。 現場を検証したヴァンスは「彼はもう死んでいる」とつぶやく。 巨匠ヴァン・ダインの後期を飾る力作長編。 付録として著者唯一の自伝を収録する。 ファイロ・ヴァンスシリーズ第10弾。
    The Gracie Allen Murder Case
1938「グレイシー・アレン殺人事件」

伝説の悪鬼の住む家〈ダムダニエル〉を名のる カフェーの密室で行なわれた奇怪な犯罪。 歌姫と脱獄囚の死を賭けた恋。 死期の近づいたギャングの首魁とヴァンスの禅問答。 作者自身にも迫りつつあった死期を予告するかのような、暗い影のなかに、 大活躍する少女グレイシー・アレン。巨匠の第十一作。 付録として「ヴァンス伝」を付した。 ファイロ・ヴァンスシリーズ第11弾。
    The Winter Murder Case
1939「ウインター殺人事件」

レクスン荘の当主カリントンは、 秘蔵のエメラルドの安全に不安を抱き、ヴァンスの助力を要請した。 ところが、長男の帰国歓迎パーティの席上、宝石室の番人が殺され、 彼の危惧は事実となって現われてしまった。 無気味な死の影がおおい始める。 巨匠、最後の長編。 巻末に有名な「推理小説の二十則」と「推理小説論」を収めたファン必読の書。 ファイロ・ヴァンスシリーズ第12弾(身罷り未完で完結)
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