The Best of Cordwainer Smith
1975「鼠と竜のゲーム」★★★☆☆
〔人類補完機構〕
星から星へと、平面航法を用いて
二次元空間を飛行する宇宙船に襲いかかる超生命――
竜に敢然とたちむかう男たちの活躍を描く「鼠と竜のゲーム」ほか、
「星の海に魂の帆をかけた女」など、
SF界きっての詩人が人類補完機構の壮大な宇宙史を
背景に綴りあげた名品八篇を収録する傑作短篇集!
〔人類補完機構〕シリーズ。J・J・ピアス編纂。
スキャナーに生きがいはない
Scanners Live in Vain (ファンタジイ・ブック誌 1950 No.6)
スキャナーのマーテルはクランチ中に緊急召集された。
(スキャナーとはすべての感覚を捨て機械化された人間で
<空のむこう>で特別な任務をまかされている。志願制。
クランチは一時的に人間的感覚を味わえる特典だが、
身体への負担がおおきく、月に数回しかゆるされない)
会議の内容はスキャナーにしかできなかった仕事を
技術的に解決しようとしている人物の殺害だった。
もしそうなればスキャナーたちの存在意義が喪失してしまうからだ。
しかしマーテルはこの計画に異を唱え、抗戦するが……。
星の海に魂の帆をかけた少女
The Lady Who Sailed The Soul (ギャラクシイ誌 1960.4)
のちに歴史にその名を刻むふたりの星海の船乗り、
ヘレン・アメリカとミスター・グレイ=ノー=モアの
醜く美しい恋愛物語。
鼠と竜のゲーム
The Game of Rat and Dragon (ギャラクシイ誌 1955.10)
平面航法を学んだ人類は飛躍的に移動範囲を広げた。
ところが、その航海中の船内で
乗員たちすべてが発狂するという怪事件が多発。
テレパスに調査させると、その正体は竜であった。
人類はある種族とパートナーを組み立ち向かう!
燃える脳
The Burning of the Brain (ワールズ・オブ・イフ誌 1958.10)
これまたロマンス。
偉大な船長と若返り処置を拒否した妻の物語。
スズダル中佐の犯罪と栄光
The Crime and the Glory of Commander Suzdal (アメージング・ストーリーズ誌 1964.5)
クルーザー(巡洋艦)の艦長スズダル中佐。
彼は航海中、極限的環境下で生き抜いてきた
アラコシア人の襲撃を受けた。
そこでスズダル中佐はある禁断の手段を使い切り抜けるが、
その行為は重罪で、裁判にかけられた彼は真の極刑に……。
黄金の船が――おお! おお! おお!
Golden the Ship Was――Oh! Oh! Oh! (アメージング・ストーリーズ誌 1959.4)
独裁者ラウムソッグ大公は地球征服をもくろんでいた。
憂慮した〔補完機構〕は黄金の船を一隻とばすことを決定。
全長じつに1億5千万kmの黄金の船を――
(未来でもブラフって利くんだねぇ^^;)
ママ・ヒットンのかわゆいキットンたち
Mother Hitton's Littul Kittons (ギャラクシイ誌 1961.6)
ノーストリリアの兵器管理官ママ・ヒットンと
盗賊ベンジャコミン・ボザートの対決一話。
(ほのぼのしたタイトルなのにサイコホラーやんけ(;´Д`)
アルファ・ラルファ大通り
Alpha Ralpha Boulevard (ファンタジイ&サイエンス・フィクション誌 1961.6)
〔補完機構〕にプログラムされた安寧をこばみ、
自らで幸福を獲得しようともがく人間物語。
総合雑感。
「とっつきがわるい」「なれるまでに時間がかかる」
これは否定できませんって。
独創的舞台設定なだけにこの説明不足っぷりは痛手だもん。
造語だらけなのに。
各話・小説のテーマ自体はちゃんと伝わってきますが、
細部となると、どうしたってもの足りない。
時代も場所もいったりきたりのようで、そのくせ具体的な
暦の表記を避けるもんだから混乱しないほうがおかしい。
年表でもあればかんたんにすっきりするんだけど。
訳者あとがきによると第2集には入れる予定らしいけど遅いよ……。
しかも、"矛盾する説明も少なくない"ときたもんだ。
設定勝負のシリーズじゃ致命的ではあるまいか('A`)
んでもまあ、たくさん読ん慣れれば問題ないのかなぁと。
じっさい評価は高いみたいだし。
長いお付きあいの覚悟はしておくべきか。
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