カート・ヴォネガット・ジュニア (Kurt Vonnegut Jr.)
1922.11.11〜2007.4.11
インディアナ州インディアナポリス生まれ。
ドイツ系移民4世。父は建築技師、兄は物理学者。
コーネル大学で生化学、カーネギー・テックで機械工学を学ぶ。
その後、テネシー大学に通うが、第2次世界大戦に召集され兵役についた。
戦後、シカゴ大学大学院で人類学を学ぶ。
1950年、短編「バーンハウス効果に関する報告書」
(Report on the Barnhouse Effect)でデビュー。
1973年「タイタンの妖女」で星雲賞海外長編部門を受賞。
シニカルでいてユーモラスな独特の作風で
人類愛に満ちたユニークな作品を描きつづけた。
プーティーウィッ?
OHP
Player Piano 1952「プレイヤー・ピアノ」
あらかじめプログラムされた音をくりかえし送りだす 自動機械のプレイヤー・ピアノさながらに、 すべての生産手段が自動化され、 すべての人間の運命がパンチ・カードによって決定される世界…… アメリカ文学の巨匠が、優しさに満ち、 かつ醒めた視線で現代文明の行方を ブラックな笑いのうちにつづった傑作処女長篇
The Sirens of Titan 1959「タイタンの妖女」★★★★★
すべての時空にあまねく存在し、 全能者となった彼は人類救済に乗り出す。 だがそのために操られた大富豪コンスタントの運命は悲惨だった。 富を失い、記憶を奪われ、太陽系を星から星へと流浪する破目になるのだ! 機知に富んだウィットを駆使して、 心優しきニヒリストが人類の究極の運命に果敢に挑戦した傑作! 自家用宇宙船での旅行中、"時間等曲率漏斗"に飛びこんでしまった ウインストン・ナイルス・ラムファードとその愛犬カザック。 あらゆる時空間に存在することとなった彼は人類救済計画を持ちあげた。 その計画で白羽の矢が立った大富豪マラカイ・コンスタントだが、 そのあやつられた運命は災難そのものだった。 はたしてラムファードの意思、思惑とは―― 前半部は目的(題材)がようわからず、 それが見えてくるオリジナル宗教(済世)面もまあまあ。 けど、ストーンヘンジあたりからの詰めの展開がやばすぎる。 「星を継ぐもの」に匹敵する衝撃といっても過言ではな……くもないか(w でもすごい腹にずんときましたよ。 笑えるわ泣けるわ吐きそうになるわでプチ発狂しかけれる。 ミステリでも"あやつり"は魅力的だけど、SFだとこうなるのね。 火星→水星→地球→タイタン の運命を 火星→水星→地球→タイタン→地球 と打開する手際や ラムファード/サロのアイデンティティ、 達観したビーの思惟と閉めの読み応えがありすぎる。
Mother Night 1962「母なる夜」
第二次大戦中、ヒトラーの宣伝部員として 対米ラジオ放送のキャンペーンを行なった新進劇作家、 ハワード・W・キャンベル・ジュニア― はたして彼は、本当に母国アメリカの裏切り者だったのか? 戦後15年を経て、ニューヨークはグリニッチヴィレジで 隠遁生活を送るキャンベルの脳裡に去来するものは、 真面目一方の会社人間の父、アルコール依存症の母、 そして何よりも、美しい女優だった妻ヘルガへの想いであった… 鬼才ヴォネガットが、たくまざるユーモアと シニカルなアイロニーに満ちたまなざしで、自伝の名を借りて描く、 時代の趨勢に弄ばれた一人の知識人の内なる肖像。
Cat's Cradle 1963「猫のゆりかご」★★★☆☆
わたしの名はジョーナ。 いまプエルト・リコ沖のサン・ロレンゾ島にいる。 "パパ" モンザーノの専制政治に支配されるこの島で、 『世界が終末をむかえた日』の著者となるべきわたしは、 禁断のボコノン教徒となったのだ。 "目がまわる、目がまわる" 世の中は複雑すぎる。 愛するサン・ロレンゾ一の美女モナが、 世界中のありとあらゆる水を氷に変えてしまう〈アイス・ナイン〉が、 柔和な黒人教祖ボコノンが、 カリプソを口ずさむわたしのまわりをめぐりはじめる―― 独自のシニカルなユーモアにみちた文章で定評のある著者が、 奇妙な登場人物たちを操り、不思議な世界の終末を描いた長篇。 宗教SF。 「馬鹿なことはやめろ! すぐこの本を閉じるのだ! 〈フォーマ〉しか書いてないんだぞ!」 ボコノン教の聖典はこうはじまる。 (フォーマは無害な非真実の意) ジョーナは広島に最初の原爆が投下された日、 アメリカの重要人物たちがどのような行動をしていたかを記録した 「世界が終末をむかえた日」と題した本を書こうとしていた。 そのさなか、原爆の父の関係者を取材するうちに カリブ海に浮かぶ孤島サン・ロレンゾ共和国へ飛ぶことに。 そこではボコノン教という宗教がひそかに信仰されており ジョーナもまた引き寄せられるのだが……。 ああ、なんかすげぇぞ、と感想を持つ人がほとんどかと。 127章からなる本書は皮肉でおおわれた宗教と アイス・ナインという水を媒体に延々と氷に変える物質の発明が絶。 (アイス・ナインの発明者は本書の原爆の父だったりする) ずいしょにに出てくるユニークなボコノン教典の啓示がたのしくて。 内容はひどく虚無的なはずなんだけど、 奇人変人だらけの登場人物がカバーしてくれて妙に明るい。 気づいたらボコノン教徒になってますよ(w なお、タイトル「猫のゆりかご」はあやとりの一種。 Xが縦にふたつある形状。表紙に載ってるやつです。これ。
God Bless You,Mr.Rosewater 1965「ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを」★★★★☆
聞きたまえ! 億万長者にして浮浪者、 財団総裁にしてユートピア夢想家、慈善事業家にしてアル中である、 エリオット・ローズウォーター氏の愚かしくも美しい魂の声を。 隣人愛に憑かれた一人の大富豪があなたに贈る、 暖かくもほろ苦い愛のメッセージ…… 現代最高の寓話作家が描く、黒い笑いに満ちた感動の名作! 相手がどんな人間だろうとリスクがあろうと救出に向かう消防士。 あるできごとを機にスラムで慈善活動と有志消防団に没頭する、 大富豪のエリオット・ローズウォーター。 そんな彼を、肯定しながらも疲弊して離れる妻、 失望する議員の父、キ印だとささやく周囲の人々……。 ユートピアを夢想した男の運命とは? 解説によるとサブタイトルは"豚に真珠"。 豚が資産家にも貧乏人にも当てはまる現実を ユーモアたっぷりに描いた作品でもあります。何度も大笑い。 被災者は別ですが、単純な貧窮にどこまで応えるべきかは難題です。 やりすぎて労働意欲がそがれた共産主義ではしかたがない。 とはいえ隣人愛・人類愛がとぼしい社会構造もいただけない。 そんな宿題を投げかけてくるカート先生。 作中のSF作家キルゴア・トラウトのプロットが最高。
Slaughterhouse−Five 1969「スローターハウス5」★★★★☆
主人公ビリーが経験する、けいれん的時間旅行! ドレスデン一九四五年、トラルファマドール星動物園、 ニューヨーク一九五五年、ニュー・シカゴ一九七六年…… 断片的人生を発作的に繰り返しつつ明らかにされる歴史のアイロニー。 鬼才がSFの持つ特色をあますところなく使って、 活写する不条理な世界の鳥瞰図! 時間旅行者となったビリー・ピルグリムは 自分の人生の一場面に次々とタイムスリップ。 幸せな結婚生活、トラルファマドール星人による誘拐、 ドイツ軍の捕虜となり、英米軍のドレスデン爆撃の体験……。 4次元的世界で彼が見出したものとは? タイトルの意味は旧題「屠殺場5号」のとおり。 作中作のような構造を取っていて、前作までの名キャラも多数出演。 作者の体験(ドレスデン爆撃の)も織りまぜ、ちょっとした集大成。 4次元を感覚できるトラルファマドール的エレメントがたのしい。 過去・現在・未来があれど、すべての瞬間は存在する(した)わけで、 そこを行き来するアイディアがいいですね。 あちこち場面がジャンプするけどさして混乱させず、 それでいて核心へと向かう感じを与えさせる技術がすごい。 やはり作中ですこし触れられるトラウトのプロットはいいねぇ。
Happy Birthday,Wanda June 1971「さよならハッピー・バースディ」
「ペネロピー、わが妻よ―男にこれ以上の男らしさを、 女にこれ以上の女らしさを要求した愛がほかにあるか? ひとりの女をとりもどすために、これほどの努力をなしとげた男がほかにいるか?」 冒険王ハロルド・ライアンは、8年ぶりに自分の家に帰ってきた。 そこで彼を待ちうけていたものは、 見知らぬ男と、見知らぬ少女のためのバースデイ・ケーキだった…。 鬼才カート・ヴォネガットが、たった一度だけ書いた傑作戯曲、待望の本邦初訳!
Breakfast of Champions 1973「チャンピオンたちの朝食」
次々と傑作を発表しながら、 ポルノ小説と誤解される不遇のSF作家キルゴア・トラウト。 三度の結婚にも失敗し、話し相手はオウムだけ―― そんな彼のもとに、ある日、アート・フェスティバルの招待状がまいこんだ。 開催地は中西部にあるミッドランド・シティ。 その地でトラウトは、人生の一大転機をむかえることに…… エンドウマメ、恐竜、トラック、国旗、商標など、 著者自筆のイラストを多数収録する涙と笑いの傑作長篇!
Slapstick 1975「スラップスティック」
ある日突然どういうわけか地球の重力が強くなり、 そこへまた緑死病なる奇病まで現われ出でて世界は無秩序、大混乱! アメリカ合衆国もいまや群雄割拠の観を呈し、 ミシガン国王やオクラホマ公爵が勝手放題にいばり返っている始末。 そしてジャングルと化したマンハッタンの エンパイア・ステート・ビルの廃墟では、 史上最後にして最も長身の合衆国大統領が手記を書きつづっている―― 愚かしくもけなげな人間たちが演ずるドタバタ喜劇、 スラップスティックの顛末を……。 現代アメリカで最も人気の高い作家カート・ヴォネガットが、 鮮やかに描き出す涙と笑いに満ちた傑作長篇。
Jailbird 1979「ジェイルバード」
ウォーターゲート事件の巻きぞえをくって 囚人となったスターバックが回想する、 前世紀末の労働争議、サッコ=ヴァンゼッティ事件、世界大戦、赤狩り…… そして、三年ぶりに刑務所から出た彼が、 ニューヨークの想い出のホテルで見出したものは、 いったい何だったのか……? 過去と現在が微妙に交錯し、80年にわたる人間関係がときにシリアスに、 ときにユーモラスに描かれる。 アメリカの魅力と悪弊を通して、この物語は 一つの強靭なメッセージとなって、読者の心に訴えてくる。 現代アメリカ文学の巨匠が、人々への愛と怒りをこめて綴る 〈新〉アメリカン・グラフィティ!
Deadeye Dick 1982「デッドアイ・ディック」
祖国の中性子爆弾によって、 やがては滅びる運命にあるオハイオ州ミッドランド・シティ。 そこに住む「デッドアイ・ディック」と名づけられた男、 そして、変人・普通人たちがコミカルに織りなす時の流れのタペストリーを、 著者ならではのユーモアと哀感をこめて描く。 軽妙なウィットの陰に鋭い批評眼が光る話題作
Galapagos 1985「ガラパゴスの箱舟」
一九八六年、経済恐慌と戦争と疫病で人類は滅亡の危機に瀕していた。 折りしもエクアドル崩壊の直前、 ガラパゴス諸島遊覧の客船バイア・デ・ダーウィン号が 何人かの男女を乗せて海へ漂い出た。 進化論で知られる諸島に漂着したわずかな生存者が、 百万年を経て遂げた新たな進化とは? 鬼才が描く旧人類への挽歌。
Bluebeard 1987「青ひげ」
わたしはラボー・カラベキアン。 亡き妻の大邸宅に孤独に暮らす老人だ。 かつては抽象表現派の画壇で活躍したこともあったが、 才能に限界を感じて今では抽象画のコレクターに甘んじている。 そんなある日、若くエネルギッシュな女性が現われ、 わたしの人生も大きく変わることになった。 彼女は、わたしが誰一人入らせない納屋に いったいどんな秘密があるのか、興味を示しだしたのだ…… 人類に奇跡を願い、奇才が贈る感動長篇
Hocus Pocus 1990「ホーカス・ポーカス」
二〇〇一年、アメリカはまたも破産に瀕し、企業の大半が外国に買収された。 ベトナム戦争中にばかげたスピーチ、ホーカス・ポーカスで 新兵を鼓舞していたハートキは、帰国後、勤めていた大学を首になり、 日本人が経営する刑務所の教師になる。 だが、そこで大脱獄事件が発生した……ハートキがたどる波瀾の人生。ここまで全長編……たぶん。
Timequake 1997「タイムクエイク」
2001年2月13日、時空連続体に発生した異常―― タイムクエイクのために、あらゆる人間や事物が、 1991年2月17日へ逆もどりしてしまった。 ひとびとはみな、タイムクエイクの起きた瞬間にたどりつくまで、 あらためて過去の行為をくりかえさざるをえなくなる。 しかも、この異常事態が終わったとき、世界じゅうは大混乱に……! SF作家のキルゴア・トラウトやヴォネガット自身も登場する、 シニカルでユーモラスな感動作。ヴォネガット最後の長篇小説。
Fates Worse Than Death 1991「死よりも悪い運命」
故人となった父母や姉など身近だった人びとの思い出をとおして、 悩み多かった家庭生活の秘密を打ち明け、また同時代の作家たちのこと、 さらには銃砲所持や民族社会、モザンビークの内戦、 地球汚染などの社会的、世界的な問題にいたるさまざまなテーマを、 アメリカ文学界の奇才ヴォネガットが、 ユーモラスかつ真摯に語るエッセイ集第3弾。 スピーチとエッセイと追憶の数々を見事に組み合わせた 1980年代の自伝的コラージュ。
Bagombo Snuff Box 1999「バゴンボの嗅ぎタバコ入れ」
世界中を旅する男が、久しぶりに元妻のつつましやかな家庭を訪れた。 生活に疲れた元妻に、男は胸躍る冒険の数々や、 途上国での豪奢な暮らしなど夢のような土産話を披露する…… ユーモアに辛辣さを織り交ぜた表題作ほか、 著者自身の戦争体験を反映した「記念品」、 音楽を愛するあまり暴走する高校教師の苦悩を描く「女嫌いの少年」など、 ヴォネガットならではの、 優しくも皮肉な視点で描き出される珠玉の初期短篇を23篇収録。▼BACK▼ ▽TOP▽
Armageddon in Retrospect 2007「追憶のハルマゲドン」
2007年4月に逝去したカート・ヴォネガットの最後の作品集。 息子マークの心をうつ序文、 第二次大戦に参戦した若き日のヴォネガットが ヨーロッパから家族にあてて出した手紙、 死の直前に書き上げていたスピーチ原稿、 第二次大戦中に体験したドレスデン大空襲についてのエッセイのほか、 未発表短篇十篇をヴォネガット自筆のカラーイラスト多数とともに収録。