砂野恭平 (すなの きょうへい)

1943〜
茨城県生まれ。
東京都立大学理学部卒。
同大学人文科学研究科(江戸文学専攻)修了。
江戸文学論、探偵論、紀行文等を発表。
1978名探偵評判記 密室に薔薇を飾るのはだれ?☆☆☆☆

探偵小説評論に新時代きたる! 卓抜な着想と名文。現代詩から哲学まであらゆる知識を駆使。 知的冒険とスリルに満ちた評論集ついに誕生。 (本書は昭和52年4月から月刊誌「OUT」に連載したものを 加筆修正し、何篇か書き下ろしを加えたもの) 文遊社 えー、一言でいうと著者は中二病にかかってます(^^; 過激な紹介文が質の希薄さを物語っている好例。 もうね、小姑はだしでね、重箱の隅は杓子で払えと。 対象は、マーロウ、ヴァンス、ブラウン、フェル、クイーン、 ハマー、ホンコンおばさん、アブナー、ラビ、ポアロ、デュパン。 とくにメイン、核になるものはなし。 基本的に著者の好き嫌いがはっきりしています。 じっさいすぐわかるよ。完全にアンチ・クイーンだし(w その理由の幼稚なこと、あ然なんてもんじゃない。 評論に個人的感情を持ちこんでどうするよ。 しかも、その根拠が勉強不足で間違ってたりと救いがたい。 評論(!)の手法も作中の一文やよその文献の引用連発、 探偵Aを探偵BやCと比較するパターンばっか。 個特有の絶対価値ではなく相対が好きらしいぜ。 探偵のパーソナリティーやデータの レファレンスにでもなればそれもありだけど、 ページ数が少ないからそれにすらならない始末。 いちいち退屈な雑感が挿入されるのも論外。 巻末には私立探偵法入門があり。 ……なぜ、アメリカ中心? これほど役に立たない講座もめずらしい。 著者はこの考察は必要欠くべからざるものとか いっちゃってますよ、たぶん本気で。 この独りよがり、うぬぼれっぷりは1周してあこがれる。 とまあ、遠慮なくかぶりついてみましたが アブナーやラビの項はじゅうぶんよく書けてたと思うよ。 上記のようなつまらない切り口ではなく、 当時の社会情勢や風土風習からのアプローチは興味深い。 すべてこのやり方ならよかったのに。 しかし、78年といえば社会派全盛期、 本格が食傷気味で駆逐・弾圧されてた時代なんだよね。 あとがきで名探偵へのあさましい嫉妬心が原動力といってますし。 本書はそんな本格暗黒時代が生んだひとつの産物なんですな。 だいたい、そんな理念で書かれた本がおもしろいわけがない。 ああそれと。 ホームズが対象外なのは 新たに一冊の書物をモノにするべきと判断したかららしい。 いまさらドイルを語れる自信がどこからわくんだろう。 結局、出版にはいたらなかったようですが!
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