1978「名探偵評判記 密室に薔薇を飾るのはだれ?」★☆☆☆☆
探偵小説評論に新時代きたる!
卓抜な着想と名文。現代詩から哲学まであらゆる知識を駆使。
知的冒険とスリルに満ちた評論集ついに誕生。
(本書は昭和52年4月から月刊誌「OUT」に連載したものを
加筆修正し、何篇か書き下ろしを加えたもの)
文遊社
えー、一言でいうと著者は中二病にかかってます(^^;
過激な紹介文が質の希薄さを物語っている好例。
もうね、小姑はだしでね、重箱の隅は杓子で払えと。
対象は、マーロウ、ヴァンス、ブラウン、フェル、クイーン、
ハマー、ホンコンおばさん、アブナー、ラビ、ポアロ、デュパン。
とくにメイン、核になるものはなし。
基本的に著者の好き嫌いがはっきりしています。
じっさいすぐわかるよ。完全にアンチ・クイーンだし(w
その理由の幼稚なこと、あ然なんてもんじゃない。
評論に個人的感情を持ちこんでどうするよ。
しかも、その根拠が勉強不足で間違ってたりと救いがたい。
評論(!)の手法も作中の一文やよその文献の引用連発、
探偵Aを探偵BやCと比較するパターンばっか。
個特有の絶対価値ではなく相対が好きらしいぜ。
探偵のパーソナリティーやデータの
レファレンスにでもなればそれもありだけど、
ページ数が少ないからそれにすらならない始末。
いちいち退屈な雑感が挿入されるのも論外。
巻末には私立探偵法入門があり。
……なぜ、アメリカ中心?
これほど役に立たない講座もめずらしい。
著者はこの考察は必要欠くべからざるものとか
いっちゃってますよ、たぶん本気で。
この独りよがり、うぬぼれっぷりは1周してあこがれる。
とまあ、遠慮なくかぶりついてみましたが
アブナーやラビの項はじゅうぶんよく書けてたと思うよ。
上記のようなつまらない切り口ではなく、
当時の社会情勢や風土風習からのアプローチは興味深い。
すべてこのやり方ならよかったのに。
しかし、78年といえば社会派全盛期、
本格が食傷気味で駆逐・弾圧されてた時代なんだよね。
あとがきで名探偵へのあさましい嫉妬心が原動力といってますし。
本書はそんな本格暗黒時代が生んだひとつの産物なんですな。
だいたい、そんな理念で書かれた本がおもしろいわけがない。
ああそれと。
ホームズが対象外なのは
新たに一冊の書物をモノにするべきと判断したかららしい。
いまさらドイルを語れる自信がどこからわくんだろう。
結局、出版にはいたらなかったようですが!
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