The Postman Always Rings Twice
1934「郵便配達は二度ベルを鳴らす」★★★★☆
フランクがふらりと飛びこんだ街道わきのサンドウィッチ食堂は、
ギリシャ人のおやじニックと若すぎる女房コーラがやっていた。
この店で働くことになった彼は、やがてコーラと"いい仲"になり、
ニック殺害のために完全犯罪を計画するが……。
本編は、ケインの処女作長編で、本格的ハード・ボイルド作品として、
現代アメリカ文学の一傾向を代表する名作のひとつに数えられている。
ハードボイルド。
解説(新潮版)でやれ文学だ倒叙ミステリだと
息まかれるように、どっちにも取れる作品です。
無理に分類する必要なんざ皆無ですけどね、
同居してるといやあ、たいていは値すんだから。
あらすじは明快。
御託のあるハードボイルドほど偽称はあるまい。
風来坊の粗野な青年フランクが、
ある店で知り合った夫妻の妻コーラと恋仲に。
ふたりは夫ニックと現実の呪縛を断ちきるため、
その殺害を計画する。
風呂場で事故に見せかけ溺死させるという方法。
だが、この計画は運の悪い偶然によりあっさり頓挫。
次に自動車事故をよそおったプランで殺害に成功。
ところがすぐに、敏腕な検事によって罪を暴かれるのだが……。
この辺までが前半。法廷シーンも見物です。
後半からの愛憎劇、そして衝撃的な終盤も見事。
長編といっても文庫で200ページ程度――
しかも会話が主体――なので、
テンポよくいっしゅんで消化できるのもいいね。
ダラダラしてたらこの作品はいかんよ。
さて、タイトルの話。
郵便配達は二度ベルを鳴らす、といっても
ピンとこないのがほとんどでしょう。
そんなシーンはおろか、局員すら登場しないし。
んで、又聞きしたところによると、
米国の郵便配達人は二度ベルを鳴らすのが定番で、
二度なるベル=ゲストではない、というサイン、
つまり、より強い通告であると。
それに照らして、本書は同様に"二度"がキーになっている。
殺害計画、裁判、事故、行動、そして機微。
いずれも二度目が局面をがらりと変えるポイントになる、
それがタイトルに通じるそうな。
――ほんとか?(w
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