ダシール・ハメット (Samuel Dashiell Hammett)

1894.5.27〜1961.1.10
メリーランド州生まれ。
貧しい境遇に育ち、13歳から、新聞売り子、列車貨物係、鉄道工夫、
メッセンジャー・ボーイ、荷揚げ人足、宝石商広告係など様々な職業を転々。
第一次世界大戦後、アメリカ随一の民間探偵会社「ピンカートン社」に入社。
その実体験を活かし、
1920年代中頃からブラック・マスク誌に短編推理小説の執筆を開始。
1927年、処女長編「血の収穫」を発表し、ブレイク。
ミステリにハードボイルドスタイルを確立したドン。
サム・スペードやコンチネンタル・オプなどの私立探偵を創造。
コンチネンタル・オプとはコンチネンタル探偵社社員の意味で、
彼自身の名前は作中に一度も出てこない。
「隅の老人」にも通ずる、名無しの探偵の代名詞にもなっている。
    The Maltese Falcon
1932「マルタの鷹」★★★★
私立探偵サム・スペイドがその事件を手がけるや、 たちまち二件の殺しが発生した。 発端となった謎の女、そのあとを追って地中海から来た男、 ギャング一味の暗躍…… その昔マルタ島騎士団がスペイン皇帝に献上した 純金の鷹の像をめぐる血みどろの争奪戦。 「推理小説の歴史を通じて最高の地位を要求できる傑作」と ヘイクラフトが絶賛するハードボイルド不朽の名編! 私立探偵サミュエル・スペードシリーズ。 本格ハードボイルドの原点といえましょう。 従来の頭脳明晰な名探偵を地上にひきずりおろして、 大地に足をつかせた、とは我らが中島河太郎氏の弁。 乱歩には「正直にいうと退屈で(中略)どうにも興味が持てなかった」 と、ばっさりやられているのもちょっとわかる。 偽名らしい名前を名乗る女が、サム・スペードの事務所を訪ねてくる。 依頼内容もすっきりしないが、依頼人の謎めいた美しさと法外の報酬につられ その仕事をかってでたスペードの相棒は何者かに撃たれ、 その直後、依頼人の要注意人物も射殺されてしまう。 警察にこの殺人の嫌疑をかけられたスペードに、 依頼人は訳もいわず、ただ助けてはしいと哀願するのだが……。 どうも出だしのあいまいさがもったいないんですよ。 中盤から黄金の鷹像をめぐる金と欲の争いが見えてくるのですが もうちょっと筋道を照らしてほしかった。 読み終えてからなら奥歯にものがはさまったような 口吻もわかるんだけど、初回はきびしめ。 タフ・ガイの大男スペードの非情な行動なんかは とても映え、新流派の息吹きが感じられるのはグレート。 狼を彷彿とさせる描写もいいぞ。
    The Glass Key
1931「ガラスの鍵」★★★★★

市政をあやつる黒幕、その力を利用しようとする上院議員、対立するボス。 利権と愛欲のからみあう中に起こった殺人の謎を解こうとする賭博者ネド。 男も女も老いも若きも、血を躍らせ愛好するハメットは、 ネドの非情な言動を浮き彫りにして、行動派随一の秀作たらしめた。 作者が自作中最も愛好するというハードボイルド・ファン必読の作品! 自称・賭博師のネド・ボーモンは、 市政をあやつる暗黒街のボス、ポールの助言者で親友だった。 選挙を間近にひかえたある日、 ポールが後押しをする上院議員ヘンリーの息子が何者かに殺された。 やがて関係者たちのもとへ舞いこむ3つの質問がしるされた投書、 身内の裏切り、対立する組織の動きなどが活発化。 ボーモンはポールの選挙戦のゆくえを危惧するのだが……。 パズラーではないので、 こざかしいデータの収集や推理はもちろん拒否。 ただひたすらクールなネド・ボーモンに酔ってくださいませと。 ポールとの関係とかかっこよすぎだろ、常識的に考えて……。 ハードボイルドのマイベストです。泣けるほどしびれるわ。
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