リチャード・ハル (Richard Hull)

1896〜1973
ロンドン生まれ。
ラグビー・スクール卒業後、
同校から数学の奨学金を受け、
ケンブリッジ大学のトリニティー・カレッジにはいる予定だったが、
第一次大戦にあい、18歳の誕生日に召集され、陸軍に入隊。
終戦後、除隊となり、経理事務所に数年間勤めるも
あまり繁盛せず、作家の道を志す。
同時期、アイルズの「殺意」に刺激と影響を受け、
1934年、処女作「伯母殺人事件」を発表しデビュー。

本名:Richard Henry Sampson
ペンネームのハルは母方の姓
    The Murder of My Aunt
1934「伯母殺人事件」★★★★
アイルズの『殺意』クロフツの『クロイドン発12時30分』と並ぶ、 倒叙推理小説三大名作の一つである。 遺産を狙って、伯母を殺そうと たくらむ男がこころみるプロバビリティの犯罪! 一度二度三度、彼の計画の前に伯母の命は風前の灯となる…… しかし、がぜん後半に至って話は意外な展開を示す。 推理小説ファンが必ず到達する新しい境地。 倒叙ミステリ。 遺産を管理している口うるさい伯母と、田舎での生活から脱出するため、 伯母を殺すことにした主人公の青年。 とはいえ、潔癖な彼は血が好かないし、 暴力的な手段で伯母が最期を遂げたら、たちまち疑われてしまうのは必定。 そこで思いついたプロバビリティーの犯罪。 自動車事故死に見せかけるため、工作をはじめるが―― これは(ブラック)ユーモアミステリでもありますね。 やってることは残忍なんだけど、どうにも滑稽。 ふたりで暮らしている前衛的青年と保守的老婆の 激突するイデオロギーと悔悛の披瀝! のはずが、どうにも子供じみた応酬のくり返し。 これには時代やお国柄、田舎の要素もあるけれど、 なにより作者の意図がちゃんと隠されているんですな。 絶妙に伝わる主人公の浅薄皮相さがいい。 形式は主人公の日記(手記)の一人称で、 物語佳境にはいると一気にひっくり返る様、 主観と客観の凝った洞察が見事。 三人称にしたらまたちがった印象を受けるんだろうなあ。 ところで、「クザ――ウザ」ってなにさ(w; ※212ページ
    Keep It Quiet
1935「他言は無用」

英国紳士の社交場―クラブ。 憩いを求めて三々五々、会員たちは足を運ぶ。 名探偵気取りの弁護士、 すべての人の望みをかなえようとして、 すべての望みをかなえられない幹事殿、 苦情に生きがいを見いだす問題児、わが道をゆくシニカルな開業医… 彩豊かな配役が右往左往するなか、 動きだした物語はどこへ転がってゆくのか? 『伯母殺人事件』の技巧派が贈る、趣向三昧の第二長編。 ハルは15,6冊くらい執筆しているようですが、 邦訳されているのはこれぐらい。
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