Nocturne Pour Assassin (Carambolages)
1972「殺人交叉点」★★★★☆
十年前に起きた二重殺人は、
単純な事件だったと誰もが信じていました。
殺人犯となったボブを熱愛していたルユール夫人でさえ、
何も疑わなかったのです。
しかし、真犯人は、私なのです。
時効寸前に明らかになる驚愕の真相。
1972年の本改稿版でフランス・ミステリ批評家賞を受賞した表題作に、
ブラックで奇妙な味わいの「連鎖反応」を併録。
殺人交叉点
離婚した40になるルユール夫人は
20歳の大学生ボブを熱愛していた。
しかし、ボブの仲間うちでの色恋沙汰のもつれで悲劇が。
ボブと新しい恋人ヴィオレットが、
その関係に嫉妬したセリニャンに発作的に殺害されてしまう。
セリニャンはボブがヴィオレットを無理やり犯そうとして
相互殺人にいたったというように偽装し、
警察もそれを真に受け、事件は幕を下ろした。
――そして10年後。
時効まで数日というときに、
ひとりの男が夫人と犯人のまえにすがたを現す。
あの事件の真相を示す決定的な証拠を入手したというのだが……。
倒叙ものと思わせて叙述トリックもの。
日本語以上にフランス語ではむずかしそうですよね、性別のは。
形容詞の性数変化(一致)、男性形、女性形、どうのこうの。
しかしジャックとクローディ以外は記述からすぐに除外され、
ろこつにジャックがあやしいといいつつ、
クローディにはまったく触れないのはきな臭いですって。
ミステリでは有力な容疑者は無罪でなきゃすっぱいもの。
警察の対応もね、時効前日くらいは張りこみしろよと。
なので、これは倒叙系だ、いかにして犯行が露顕するのか、
という見方をしなけりゃけっこうあやうい一品。
連鎖反応
ジルベール課長補佐は、
愛らしい婚約者と妊娠した愛人のあいだで苦悩していた。
とにかくもう少し金銭があれば生活の破綻は防げると、
彼は昇給のため、ある計画を練りあげる。
彼の会社ではポストがエスカレーター式で、
上司が"退職"さえすれば、彼が出世できることは確実なのだ。
そこでジルベールは上司の抹殺を決意するが、
この計画が思わぬ連鎖反応を引きおこし――
倒叙ものと思わせて倒叙もの(w
伏せる意味がまったくないんだけど、
ブラック・ユーモアの作品としてみごとですね。
ちゃっかり婚約者ダニエルまで手に入れるH…にあわあわ。
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