リチャード・ドーキンス (Clinton Richard Dawkins)

1941〜
イギリス植民地であったケニアのナイロビ生まれ。
エソロジーの研究でノーベル賞を受賞したニコ・ティンバーゲンの弟子。
現在、オックスフォード大学科学啓蒙のためのチャールズ・シソニー講座教授。
1976年に刊行された処女作『利己的な遺伝子』が世界的な大ベストセラーとなり、
ドーキンスの名声を世界に轟かせた。
同書は、それ以前の30年間に進行していた、
いわば「集団遺伝学とエソロジーの結婚」による学問成果を、
数式を使わずにその意味するところをドーキンス流に提示したもので、
それまでの生命観を180度転換した。
英国学士院会員。

1987年、英国学士院文学賞とロサンゼルスタイムズ文学賞受賞。
1990年、マイケル・ファラデー賞受賞。
1994年、中山賞受賞。
1997年、国際コスモス科学賞受賞。
2001年、キスラー賞受賞。
2005年、シェイクスピア賞受賞。

OHP
    The Selfish Gene
1976利己的な遺伝子 増補改題『生物=生存機械論』★★★★★

本書は、動物や人間社会でみられる親子の対立と保護、 兄弟の闘い、雄と雌の闘い、攻撃やなわばり行動などの社会行動が なぜ進化したかを説き明かしたものである。 著者は、この謎解きに当り、視点を個体から遺伝子に移し、 自らのコピーを増やそうとする遺伝子の利己性から、説明を試みる。 大胆かつ繊細な筆運びで、ここに利己的遺伝子の理論は完成した。 1989年に増補版出版。2章分と補注を追加。 まえがきで数式を使わずわかりやすく、 SFのように読んでもらいたい、 生物学はまさにミステリ、など敷居の低さで誘惑します。 生物の進化は利己的なのか利他的なのか。 さまざまな動物の習性からの分析考察がただ興味深い。 生命観の根底を揺るがす生物読み物の古典です。 ESSの得点計算、自己複製子ミームの文化の伝染、 囚人のジレンマの応用など発想や着眼がおもしろいなぁ。 本文400ページに対し、補注100ページという構成はNG。 行ったり来たりで集中できない。なんとか組みこめなかったのか。 補注のない追加分はスムーズに読めすぎてびびるほど(w
    The God Delusion
2006神は妄想である 宗教との決別★★★★★

人はなぜ神という、ありそうもないものを信じるのか? 物事は、宗教が絡むとフリーパスになることがままあるが、 なぜ宗教だけが特別扱いをされるのか? 「私は無神論者である」と公言することがはばかられる、 たとえば現在のアメリカ社会のあり方は、おかしくはないのか… 『利己的な遺伝子』の著者で、科学啓蒙にも精力的に携わっている著者は、 かねてから宗教への違和感を公言していたが、 9・11の「テロ」の悲劇をきっかけに、 このテーマについて1冊本を書かずにはいられなくなった。 「もう宗教はいいじゃないか」と。 著者は科学者の立場から、あくまで論理的に考察を重ねながら、 神を信仰することについてあらゆる方向から鋭い批判を加えていく。 宗教が社会へ及ぼす実害のあることを訴えるために。 神の存在という「仮説」を粉砕するために。 ―古くは創造論者、昨今ではインテリジェント・デザインを自称する、 進化論を学校で教えることに反対する聖書原理主義勢力の伸張など、 非合理をよしとする風潮は根強い。 あえて反迷信、反・非合理主義の立場を貫き通す著者の、 畳みかけるような舌鋒が冴える、 発売されるや全米ベストセラーとなった超話題作。 科学(生物・進化学)、哲学、聖書、社会、宇宙などの観点から 真っ向から理詰めで宗教を解体してしまう著作。 といっても宗教家を無神論者にさせるためとかではなく、 (本一冊でそんな効果は期待していないでしょうし) 無神論者への擁護、激励、応援、の意味合いが強い。 個人的には第5章の、 蛾が火に飛び込む誤作動からの展開にしびれました。 新しい思想を啓発されるのは快感です。 宗教による迫害や闘争といった害悪は数知れずですが、 そんなのはあくまでごく一部の狂信者の仕業であって 大多数の信者は宗教に人道・道徳を学び 穏健で平和を望む効能があるから現存すべき、 なんて考えは一蹴されてしまいます。 宗教がなくても(あるいはないほうが)そういった人間教育に 支障がないと論理的に断言してくれます。 人間が無知であるほど支配しやすい宗教は (科学)進歩に否定的になるってのもかなしい話。 神権政治が実現しそうなアメリカでもベストセラーになったそうでなにより。 世論が動くような効果はまずないでしょうけども。 本家アマゾンで本書「The God Delusion」を検索して 膨大なレビューを見るのもおもしろいですよ! http://www.amazon.com/
何も考えずに権威を敬うことは、真実に対する最大の敵である。 ――アルベルト・アインシュタイン 関連(?)書雑記
福岡 伸一  (ふくおか しんいち)

1959.9.29〜
東京生まれ。
京都大学卒。
ハーバード大学医学部研究員、
京都大学助教授などを経て、青山学院大学教授、専攻は分子生物学。
2006年、第一回科学ジャーナリスト賞受賞。
2006年「プリオン説はほんとうか?」で講談社出版文化賞科学出版賞。
2007年「生物と無生物のあいだ」で第29回サントリー学芸賞<社会・風俗部門>

OHP

〜著作リスト〜
2004「もう牛を食べても安心か」(文藝春秋)
2005「プリオン説はほんとうか?」(講談社)
2006「ロハスの思考」(木楽舎)
2007「生物と無生物のあいだ」(講談社現代新書)
2008「できそこないの男たち」(光文社新書)
2007生物と無生物のあいだ★★★☆☆

生きているとはどういうことか― 謎を解くカギはジグソーパズルにある!? 分子生物学がたどりついた地平を平易に明かし、 目に映る景色をガラリと変える。 生物と無生物の境界……生命とはなにか? その定義を探すというテーマのノンフィクション。 なのですがとにかく脇道に進みがち。 関係の薄い科学エピソードやアメリカの風景なんかは必要なのか。 どうも文学、詩的チックにしたいようで、 ここの好き嫌いで評価がわれそうな一冊。 とりあえず野口英世に幻滅する人は多いかと(w 切ないロザリンド・フランクリンの生涯は胸を打ちますが、 本書で語られるべきことかしらという印象。 研究過程や焦燥感は興味深く、 有機に有って無機に無いものを掘り下げるテーマはやはり魅力的。
2005「世界の神々」がよくわかる本★★★★★

東 ゆみこ (監修) 神話学者。お茶の水女子大学大学院博士課程(比較文化学専攻)をへて現在、 東京外国語大学、学習院女子大学ほかで非常勤講師を務める。 吉田敦彦氏のもとで比較神話学を学び、 近年は山口昌男氏との交遊をとおして、 美術・演劇・映画・漫画といった文化の諸領域を横断する ノマド的生き方に親しむ。 あらゆる時代に遍在する神話的思考の解明を試みている。監修紹介以上。 日本に古事記から生まれた八百万の神様がいるように、 世界にも神話の世界から生まれた神々が多数存在する。 ギリシァ神話には華麗なるオリュンポスの12神とその血族たちが、 ケルト神話にはヴァイキングたちに信仰された勇猛な神々たちが、 クトゥルー神話には怪奇小説家ラヴクラフトの生み出した暗黒の邪神が、 それぞれ独自の世界観を持ちながら世界中の人々に親しまれている。 本書はギリシァ・北欧・クトゥルーに加え、 ケルト・インド・メソポタミア・エジプト神話に登場する 109の神々の横顔を紹介したものである。 好色家であるにもかかわらず恐妻家だった最高神ゼウスや、 神々の仲間ながら最終的に神々と対立したロキ、 創造神の地位をブラフマーから奪い取った多重人格神シヴァなど、 どのような神々がいて、 どのような活躍をしたかが手軽にわかるようになっている。 現代的で斬新なイラストも満載の、世界神話の手引書になる一冊。 文庫書き下ろし。 簡略化された神話の入門書。 ギリシァ神話、北欧神話、ケルト神話、インド神話、 メソポタミア神話、エジプト神話、クトゥルー神話の7つが中心。 それぞれの神話の概略や、主要な代表的神々をさらっと紹介する内容。 挿絵もすばらしいね、もっともっと欲しかった。 浅いけど広いので、大ざっぱな大局を把握するにはじゅうぶん。 気になる神さまやエピソードが見つかれば それを専門にあつかった作品を探すとかすれば世界が広がります。 ゲームや小説でもよく登場する名前も多いので、感慨が増しますよー。
    BIBLIOTHEKE
????ギリシア神話★★★★★

アポロドーロス Apollodoros (著) 高津 春繁 (訳) 従来紹介されてきたギリシア神話は、 のちのヘレニズム時代の感傷主義の影響を受けた甘美な物語が多い。 これに対しアポロドーロスの伝える神話伝説は 純粋に古いギリシアの著述を典拠とした、 いわばギリシア神話の原典ともいうべきものである。 西欧文化のすみずみにまでしみわたっているギリシア神話の 系統的・包括的理解に絶好の書。 これもタイトルのまま。 おそらくこれ以上の正統派はないってくらいの逸品。 初見が数年前で、当時は固有名詞の膨大さに目をむいたもんです(w 巻末の索引だけで70ページ弱ありますからね! 構成もきびしく、たびたび出現する訳註にしてもその数200弱。 こんなにあるならそのページの左隅に置いておけっての。 戦後の訳なのもなじみにくく、そろそろ表記は改訂すべき。 (伸ばし棒の多さ、まぬけさは萎えます) ただ、それでも、魂が籠められた聖書の域に近く、 ギリシア神話の全様が描かれているので所持しておきたいですね。 (印象はやはり説明書なので、上や下のような解説書も求めるとより良好)
    The Age of Fable
1855ギリシア・ローマ神話★★★★★

トム・ブルフィンチ Thomas Bulfinch (作) 野上 弥生子 (訳) 西欧の文化芸術に親しもうとするものにとって ギリシア・ローマ神話の知識は欠かすことができない。 神々と人間の豊かで興味つきぬ世界を描いた ブルフィンチ(1796〜1876)のこの書物は、 世代を問わず、ギリシア・ローマ神話への手引きとして絶好の一冊である。 こちらの特徴は敷居の低さ。 記述がかみくだいた語り口調、 章もこまかく分類されているので、するする読みやすい。 訳も78年の改版なので現代人もすんなりなじめます。 短編集(というかショートショート)の感覚で気軽にいけますよー。 終盤には外典の補充や、 インド・北欧神話のエピソードもあり、おまけもばっちり。 巻末には索引はもちろん、ギリシア神話系譜も付録されています。 ユーザーライクな一冊。やるなブルフィンチ……!
    The Children of Odin
1920北欧神話★★★★★

神の都アースガルド。威厳にみちたオージン、 力自慢のトール、いたずら好きのローク、 美しい首飾りとひきかえに夫を失った女神フレイヤなど、 個性的な神々の活躍を描きます。 『エッダ』に基づいて書かれた少年少女のための北欧神話。 (旧題名「オージンの子ら」) 著者パードリック・コラム(Padraic Colum 1881-1972) アイルランドの詩人・劇作家。 イェーツなどとともにアイルランド新劇運動に参加し、 1914年にアメリカに移住した。 数多くの詩・戯曲を残しているが、 神話や伝説を子どものために再話する仕事にも情熱を注いだ。 岩波少年文庫です。 というわけで、かなりわかりやすくかみくだいた内容なので注意。 黎明から神々の黄昏(ラグナロク)まで、 大筋は見通せるので入門書としては最適かと。 要所はしっかり押さえてあるだろうし、 最初に読むならこういう明快な物語になっているもののほうがいいよね、 とっつきやすくて。物事は段をふむべきだし。 第1部 アースガルドに住む神々 (神々のさまざまなエピソード) 第2部 さすらいの旅人オージン (破局への対向、旅人ヴェグタムがヨーツンヘイム、ミッドガルドへ) 第3部 魔女の心臓と神々のたそがれ (不吉な前兆、裏切りのロキ、ラグナロクへ) 主神オーディンとその子らの、 ダイナミックでいて人間味のある喜悲劇を観劇しましょう。
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