イズレイル・ザングウィル (Israel Zangwill)

1864〜1926
ロンドン生まれ。
父はロシア系ユダヤ人、母はポーランド人。
幼時をブリストルで過ごした後、
ロンドンに戻りユダヤ人無月謝学校に学び、
ロンドン大学の最優等試験にパスするも、
生計を立てるため、ジャーナリストに。
数年間、多くの新聞雑誌にルポルタージュ、エッセイやユーモア小説などを投稿。
季刊誌《ジューイッシュ・クウォータリー・レヴュー》に
エッセイ「ユダヤ主義」を発表し、作家の地位を確立。
その後も同様のテーマでさらに人気を博し、戯曲にも筆をとる。
もっとも有名なのは1908年「坩堝」で、海を越えたアメリカでも絶賛。
一方、シオニストとしての活動も激徒のそれだった。

ミステリ界では「ビッグ・ボウの殺人」の発表により、
"密室ミステリの父"としてその名を刻まれた。
    The Big Bow Mystery
1891「ビッグ・ボウの殺人」★★★★★

霧深い冬の朝、ボウ地区で下宿屋を営むドラブダンプ夫人は 下宿人を起こしに二階へ上った。 ドアには鍵がかかり返事はなかった。 そして数時間後、新聞売り子が威勢よく叫んでいた―― 身の毛もよだつ自殺事件、博愛主義者喉を掻っ切る! 『モルグ街の殺人』の衣鉢をつぐ密室ミステリの古典的傑作。 12月4日火曜日の早朝。 濃霧のロンドン、ボウ地区グラヴァー通り十一番地で 下宿を営むドラブダンプ夫人はめずらしく寝坊をし、 あわてて下宿人のコンスタントを起こしにいった。 彼ともうひとりの下宿人モートレイクは 人望のある若き労働運動指導者で、 その日もその運動のため出かけることになっていた。 (モートレイクはすでに出発していた) しかし、夫人がいくら呼びかけても返事はまったくなく、 部屋はしっかりと施錠されている。 不吉でいやな予感がつのってきた夫人は、 近所に住んでいるもと刑事グロドマンに助けを請い、 ドアをこわして部屋に入り見たものは、 咽喉を切られたコンスタントの死体だった……。 だれが、なぜ、そしてどうやって犯行におよんだのか? 文庫で200ページ程度の短い長編です。 本格密室もの記念碑的作品。 古典ゆえ重厚なタイプかと思ってたら、 ユーモア色が強くて気楽に読めるのもおいしいところ。 もっとも、トリックや犯人がフェアかどうかは微妙です。 や、厳密に――事件解決に必要な手がかりが提示され、 論理的にあれ以外の解答はありえぬかと――いえばフェアではないでしょう。 けど、時代背景もあるし、そもそんな必要性をもとめるべきなのか、 そんなことを思わせられる一作です。 小説としての衝撃度を高めようとしているのはあきらかだし。 まあ、まえがきで自画自賛してハードルをあげちゃってるのも ヒンシュクを買う要因になってるんだろうけど(w 期待はずれだとしてもいい経験になる一冊なのでわりとおすすめ。
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