ウイルキー・コリンズ (William Wilkie Collins)

1824.1.8〜1889.9.23
ロンドンのタヴィストック・スクエア生まれ。
父は高名な風景画家ウィリアム・コリンズ。
その影響で画家を志したり、商人をめざしたり、
法律家になるため弁護士資格を取得したりしたが、
しだいに芸術家としての仕事に身を割いた。
1848年、出版された処女作は父の回想録。
その後、ディケンズと知りあい、仲が深まる。合作もあり。
1860年「白衣の女」は伝説的な大ヒット。
1868年「月長石」はT・S・エリオットにより
「最初の最大にして最良の推理小説」と称賛された。
    The Moonstone
1868月長石★★★★

インド寺院の宝〈月長石〉は数奇な運命の果て、イギリスに渡ってきた。 しかし、その行くところ、常に無気味なインド人の影がつきまとう。 そしてある晩、秘宝は持ち主の家から忽然と消失してしまった。 警視庁のけんめいの捜査もむなしく、 〈月長石〉のゆくえは杳として知れない。 「最大にして最良の推理小説」といわれる古典的名作の完訳。 イエローダイヤモンド《月長石》にまつわる物語は 西暦11世紀にはじまる。 インドのある寺院に安置された"月神"の額に象嵌されたそれは、 3人のバラモン教徒にこの宝石の恒久的守護を夢の中で命じた。 もしこの石に触れる者あれば、必ず災いがくだるであろうと。 3人とその後継者たちは世代から世代へ、 聖なるそれをただ見守りつづけてきた―― そうして流れたついた時は1799年。 ここにイギリス軍による襲撃がはじまり、 混乱状態のさなか、ひとりの兵士が月長石の奪略をはたす。 蛮勇な兵士の名をジョン・ハーンカスル。 噂は彼を孤独にし、その生活はみじめに荒れるばかり。 また彼の近辺に見え隠れするインド人の無気味な影。 一族にも袖にされ怒れる彼だが、 遺書に妹ジュリアの娘レイチェルの誕生日に月長石を贈ると記した。 それは許しの証しなのか、それとも呪いの復讐なのか……。 1848年。 誕生日をむかえたレイチェルに贈られた月長石。 これがヴェリンダー家に暗い影を落とすことに。 邸の周辺を徘徊する3人のインド人。 一族、関係者にただようぎこちない不穏な空気。 そして、一夜にして起こった月長石のなぞの紛失……。 積み重なる不和に一家は離散を余儀なくされる。 家族の運命、月長石の行方やいかに? ダイヤの紛失の第一期、真相の発見の第二期で構成され、 いずれも関係者の手記により語られます。 第一期はヴェリンダー家の老執事ベタレッジが語り手。 「ロビンソン・クルーソー」とパイプを愛する小粋なじいさん。 とぼけた感じがおもしろく、笑える箇所が多いです。 第二期の最初の語り手、クラック嬢もちがった意味でおもしろい。 こっちは敬虔な宗教信者で、狂信っぷりがこわいやら笑えるやらで。 「ミス・ジェイン・アン・スタンパーなんぞ…………!」 のくだりでは大笑いですよ(w このあとはもうまじめな面々ばかりでちと残念、 場面も深刻になっていくのでしかたないか。 さすがに発表されたのがこの年代だけあって、 ミステリとして読むなら肩すかしの覚悟必須です。 なんせアヘンの反動だものな、犯行・動機が。 とはいえ、文庫で800ページ弱ありながら ダイヤ紛失事件だけで最後までひっぱる力が物語にあり、 登場人物たちの行く末も気になって飽きがこないのはすごい。 や、最後のほうに密室っぽい殺人もあるけど こんなのは天罰覿面の配剤なのでおまけです。 探偵や家族の死と生や、月長石の因果な結末もあざやかですね。 完成度が高く古典にふさわしい名作です。 しかし「ロビンソン・クルーソー」が猛烈に読みたくなるな(w
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