H・F・セイント (H. F. Saint)

ドイツのミュンヘン大学で哲学を学んだという異色のニューヨーカー。
長い間実業界で活躍し、アスレティック・クラブや
コンピューター会社などを経営したのち、
若い頃からの夢だった小説に挑戦。
ほぼ四年かけて書きあげた処女長編の『透明人間の告白』は、
刊行前から出版界の注目を集め、デビューと同時に一躍ベストセラー作家となる。

なお、著作は下記の作品のみ(2005年現在)
    MEMOIRS OF AN INVISIBLE MAN
1987「透明人間の告白」★★★★★

ウォール街の証券マン、ニックは、 偶然巻き込まれた事故で突如"透明"になってしまった。 透明になったら無限の自由が手に入ると思っているあなた、 ちょっと待って下さい。透明な人生は決して楽ではありません。 食事は?買物は?生活費は? でも見えても見えなくても、人は生きていかねばなりません。 透明人間の苦難と哀しみの底から、 不透明な現代が浮び上がってくる秀逸な作品。 透明人間もの。SFだよね。ハードではないです。 ありきたりな題材とはいえ、本格的なのは初めてかも。 ちなみに「《本の雑誌》が選ぶ30年間のベスト30 第1位」だそうで。 平均値の高い作品ゆえハズすことは少ないはず。 さて、きっとだれでも透明になったらどうするか 夢想にふけったことがあるでしょう。 えちぃことや泥棒などがメインでしょうが(w)、 なんのなんの、これを読んだらどれだけ甘いかわかります。 衣食住すらままならない。 公道を闊歩するのも命がけ。 雨が降ったら水をはじくので動けない。 なにより耐えがたい絶対的な孤独… おおすじは透明になった主人公の捕獲を目論む政府機関からの逃亡劇。 これがドタバタファースではなく、 スパイスリラーばりにドキドキハラハラものなんですよ、意外にも。 文体も総じて克明(悪くいえば冗長)でクリアな情景が浮かんできます。 浮かんできますといっても透明なんですけどね(w いや、でも、透明の描写をリアルにするってすごいっすよ。 透明人間として目覚めたシーンとかじつに視覚的で感動的。 ラストの政府機関への会心の一撃には素でスカっとしましたよ。 (会心の一撃といっても録音しただけですがw) 透明人間の酸いも甘いも知ることができるこの作品、 いつ透明になっても困らないためにもぜひ読んでおきましょう(w
▼BACK▼          ▽TOP▽