スタニスワフ・レム (Stanislaw Lem)

1921.9.12〜2006.3.27
ポーランド・ルヴフ(現ウクライナ・リヴィウ)生まれ。
1946年にクラクフに移り、
医学部で生物学を学ぶ傍ら、数学や思想、哲学といった方面の研究も。
1951年「金星応答なし」で本格的にSF作家としてデビュー。
諷刺や哲学、評論集など硬派な作品の深みに定評がある。
や、もう、御託抜きでだれもが天才と認める作家でしょう。

1955年、金十字功労賞受賞。
1957年、クラクフ市文学賞受賞。
1959年、ポーランド復興十字勲章受章。
1965年、ポーランド文化芸術大臣賞第二席。
1969年、外務省から外国でのポーランド文学普及に対して表彰状。
1979年、ポーランド復興上級十字勲章受章。
1976年、文化芸術大臣賞第一席。

OHP
著作リスト
No. 年度 邦題/原題 備考
1951 金星応答なし
Astronauci
1956 マゼラン星雲
Oblok Magellana
1959 捜査
Sledztwo
1959 エデン
Eden
1961 ソラリスの陽のもとに
Solaris
1961 星からの帰還
Powrot Z Gwiazd
1961 浴槽で発見された日記
Pamietnik znaleziony w wannie
1964 砂漠の惑星
Niezwyciezony
1964 ロボット物語
Bajki Robotow
ロボット・ツィベリアダ・シリーズ
10 1965 宇宙創世期ロボットの旅
Cyberiada
ロボット・ツィベリアダ・シリーズ
11 1968 天の声
Glos Pana
12 1969 すばらしきレムの世界1,2
Opowiadania
短編集
13 1971 宇宙飛行士ピルクス物語
Opowiesci O Pilocie Pirxie
短編集
14 1971 完全な真空
Doskonaxa proznia
短編集
15 1971 完世音菩薩
Kobyszcze
ロボット・ツィベリアダ・シリーズ
16 1971 泰平ヨンの航星日記,回想記
Dzienniki Gwiazdowe
泰平ヨン・シリーズ
17 1973 虚数
Wielkosc urojona
短編集
18 1976 枯草熱
Katar
19 1981 GOLEM XIV 日本では「虚数」に収録
20 1981 レムの宇宙カタログ
The Best of Stanislaw Lem
短編集
21 1982 泰平ヨンの現場検証
Wizja Lolalna
泰平ヨン・シリーズ
22 1983 泰平ヨンの未来学会議
Kongres Futurologiczny
泰平ヨン・シリーズ
23 1987 地球の平和
24 1987 大失敗
Fiasko
トルルの機械 ロボット・ツィベリアダ・シリーズ
みごとな青あざ ロボット・ツィベリアダ・シリーズ
赤鉄王子と水晶王女の物語
O Krolewiczu Ferrycym i krolewnie Krystali
ロボット・ツィベリアダ・シリーズ
※その他、短編小説、ノンフィクション、評論集、随想集等多数
    Sledztwo
1959捜査★★★★
雪におおわれたロンドン。 この美しい街の治安を守るスコットランド・ヤードの一室で、 いま緊急会議が招集されていた。 ここ一年のあいだにロンドンでは、完全に密閉された霊安室から 死体が消失してしまうという奇怪な事件が頻発していたのだ。 犯人は変質者、シンジケート、それとも――? 事件解明を急ぐスコットランド・ヤードの捜査官は 事件の糸をたどるうち、驚くべき謎の渦中へと引きこまれていく…… 巨匠の異色作! まさに異色作。ジャンルすら特定できない。 一見、ミステリっぽいふれがきですが、 SFの色もまざっており、雰囲気は幻想的ホラー。 ひどく風変わりな純文学というか、うたかたな作品です。 訳者あとがきでは哲学的推理SFと分類されています。 そもそもハヤカワSF文庫だしね。 おおざっぱに筋書きをいうと、 イギリスで死体が動いたり消失する事件が各地で発生。 この事件を追う、あるヤードの捜査官の「捜査」の話。それだけ。 解決ではなく、解釈に軸を据えているもよう。 難解です、私にとっては(^^; 読み手を選びそうだけど、なんともいえない魅力はあります。 何年後かに再読したくなるような、そんな一作。
    Eden
1959エデン

惑星エデン―宇宙空間に巨大なオパールのしずくのように煌めくその星に、 6人の地球人科学者を乗せた宇宙探査船が不時着した。 だが、地表で彼らが見たものは、巨大な生体オートメーション工場と、 その大量の廃棄物、そしてエデン人の累々たる死骸の堆積だった。 一つの個体が労働部分と思考部分に分かれた複体生物であるエデン人に、 いったい何が起こっているのか? 地球人科学者はエデンの人との知的接触をはかろうと試みるのだが…。 未知なるものとの出会いを豊かな想像力と哲学的視点から描き、 『ソラリスの陽のもとに』『砂漠の惑星』とともに三部作を築きあげる問題作。
    Solaris
1961ソラリスの陽のもとに★★★★

観察ステーション駐在員として 惑星ソラリスに到着した心理学者ケルビンは、 先任駐在員たちが一人残らず発狂状態に陥っているのを発見した。 一見何の変哲もなくものうげにたゆたう海が、 様々な驚くべき能力を持つ生きている〈海〉だったのだ! 大宇宙における超知性の問題に肉薄する傑作! SF。まんま未知との遭遇もの。 でも、前半はむちゃくちゃホラーでしたよ(;´Д`) 作中の主人公のように、常に背中に視線を感じるこわさがある。 水がめ座周辺に位置する惑星ソラリス。 赤と青のふたつの太陽を持ち、不安定な力場にたえきれず 赤い太陽のほうへ突入してしまうはずだったが、 軌道に変化は見られず安定を保っていた。 こうして注目を集めだしたソラリスへの本格的な調査がはじまり、 無数の学説・仮説・珍説が生まれ、ひとつの結論に達する。 ――ソラリスの海は思考力をもつ怪物である。 この惑星のほぼ全域をおおう原形質状の海は それ全体がひとつの脳であり、 非常に大規模な理論的研究をおこなっていると―― 心理学者のケルビンはこの惑星へ降りたった。 すぐに研究所内の異変を目の当たりにする。 わずか3人の先任駐在員たちのひとりは自殺し、 ひとりは閉じこもり、ひとりは錯乱状態にいたのだ。 困惑しつつも状況を見極めようとするケルビンの前に、 昔、ささいなすれ違いから自殺してしまった恋人が現われた……。 こっからはもうレムお得意の禅問答ですよ。知性とは。認識とは。 この作家、具体的な解決をおいそれと読者にあたえてくれないのね。 今回はめずらしく作者の序文が 訳者のあとがきに収録されてはいるけど、 はたして意図をどれだけ汲みとれたかはあやしいところ。 これも、何年後かに再読したくなるような、そんな一作。
    Niezwyciezony
1964砂漠の惑星★★★★★

6年前に消息をたった宇宙巡洋艦コンドル号探索のため 〈砂漠の惑星〉に降り立った無敵号が発見したのは、 無残に傾きそそりたつ変わり果てた船体だった。 生存者なし。 攻撃を受けた形跡はなく、防御機構もそのまま残され、 ただ船内だけが驚くべき混乱状態にあった。 果てなく続く風紋、死と荒廃の風の吹き抜ける奇怪な〈都市〉、 偵察機を襲う〈黒雲〉、そして金属の〈植物〉…… 探検隊はこの謎に満ちた異星の探査を続けるが!? 琴座系のはずれにうかぶレギス第三惑星。 6年前、この惑星探査に向かったコンドル号が なんらかの事故に遭ったらしく、連絡が途絶えてしまう。 あらたに派遣された無敵号はその原因究明のため、 砂漠の惑星へと降りたった。 捜索を開始してすぐに、海に生物は生息するものの、 陸地には不気味なほど生物の影がないことが判明。 そして発見されたコンドル号、 周囲には乗組員たちの遺体も見つかった。死因は不明。 どちらも攻撃を受けたような痕跡はなく、 船内は集団パニックが起こったような不可解な状態だった。 やがて無敵号の乗組員にも犠牲者が出てしまい……。 この惑星にひそむなぞにみちた"敵"の正体とは―― 「ここにはあらゆる無駄がないくせに、  無駄なことしか語っていない、まさにSFそのものだ」 みたいなことをレムが言ったとか、解説によると。 「ソラリス」のように人間的発想なんぞ歯牙にもかけない異能種との接触、 そのときの人間模様を切りとった作品。 今回は取り残された自動機械の体系がお相手。 それとの対決ものとして読んでもよし、 それと対峙した人間心理・原理の精神論として読んでもよし、 それを通じての生命のなんたるかをひねくるもよし、 それ以外にもレムですからいくらでも深読みに値する内容です。
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