The Player on the Other Side 1963 B 「盤面の敵」青田勝訳 (HM文庫)四つの奇怪な城と庭園とから成るヨーク館で発生した残虐な殺人。 富豪の莫大な遺産の相続権をもつ甥のロバートが 花崗岩のブロックという奇妙な凶器で殺されたのだ。 しかもこの事件には、 初めから犯人らしき者からの挑戦状がたたきつけられていた! 事件に気負いたつクイーン父子の獅子奮迅の活躍を描く本格巨篇 出だしのいじけたエラリイが笑える。 内容は…犯人の伏線あったっけ? いやでもこの時代のサイコミステリは貴重かも(信者的発言 こういう、人間を"駒"にする展開って大好きだし。 もちろん最強の駒であるクイーンには及ばないんですけどね(^^) 最後の転換期。 この頃から梗概はクイーン以外の作家が執筆してたりするんです。 プロットや監修はしてるので作家というよりブランドになってるんですよぅ。 この作品はシオドア・スタージョンが小説化。
And on the Eighth Day 1964 A 「第八の日」青田勝訳 (HM文庫)ネバダ砂漠のまん中の文明社会から隔絶した村落で、 聖書さながらの共同体生活を営む一団の人々―― 犯罪という概念すらも存在しないこの小世界で、 怖るべき殺人事件が起こった! ふとしたきっかけでこの村落に迷いこんだエラリイ・クイーンは、 孤立無援のなか事件に挑んで行く。後期の異色力作! エラリイはぞうきんになってしまった。 ハリウッドでの"公務"を終え、ニューヨークへの帰路のさなか、 くたくたになったエラリイはネバダ砂漠の村落へ蓋然的に迷い込む。 そこは独自の社会システムで成り立つコミュニティーだった… という概略です(語弊あり 終盤までは冗談のようにアレだけど、 第七の日、 そして第八の日の諷刺めいた後味は秀絶。 クイーン最大の異色作でしょう。 …なんだか鬱になった。 この作品はエイヴラム・デイヴィッドスンが小説化。
The Fourth Side of the Triangle 1965 B 「三角形の第四辺」青田勝訳 (HM文庫)新進気鋭の作家デイン・マッケルは母の打明け話に耳を疑った。 厳格な父に女ができたというのだ。 デインは父の浮気をやめさせるべく問題の女シーラに近づいた。 だが、今度はデインが彼女の魅力の虜に…… そんな時シーラが自宅で何者かに射殺された! 苦慮熟考の後、エラリイがついに探りあてた手がかりとは? このタイトル好き♪ 今回は安楽椅子探偵なんですよ。 エラリイ、足を折って入院してるんです。 いきさつはライツヴィルで楽しくスキーを満喫していたら ボブスレーが突っ込んできたそうで。 本当、彼にとってライツヴィルは災厄の町なんだな(大笑い この作品はエイヴラム・デイヴィッドスンが小説化。
A Study in Terror 1966 B 「恐怖の研究」大庭忠男訳 (HM文庫)1888年、稀代の殺人鬼、 切り裂きジャックはロンドンの街を恐怖の底に陥れた。 この殺人鬼と名探偵シャーロック・ホームズの戦いを綴った ワトスン博士の未公開の記録が、 実に80年ぶりにエラリイの許に届けられた…… 19、20世紀を代表する二人の名探偵が解き明す、 恐るべき〈ジャック・ザ・リパー〉の正体! メタミス。 未公開のワトスンの手記と、 それを読み解くエラリイパートが交互する構成。 (エラリイパートはほとんどコメディw) 手記の文章はまさにドイルを彷彿とさせます、たいしたもんだ。 (あのホームズパートはポール・W・フェアマンが執筆してるともいわれてるけど><) 2大探偵の競演はファンにはたまらないはず(良くも悪くも) 本書はコロンビア映画「A Study in Terror(恐怖の研究)」の ノベライゼーションです。 脚本ドナルド・フォード、監督ジェイムズ・ヒル、 出演ジョン・ネヴィル(ホームズ役), ドナルド・ヒューストン(ワトソン役)他。 最初はカーが依頼されるも体調がすぐれなかったので クイーンが引きうけたといういきさつ。 その結果、脚本の後半はほとんどクイーン流に 焼きなおされてしまったとさ(w (そりゃね、多忙な巨匠がふつうにやる仕事じゃないものね)
Face to Face 1967 B 「顔」尾坂力訳 (HM文庫)エラリイを訪れた若い女優は彼に重大な告白をした。 グローリー・ギルドの殺害計画を打ち明けられたというのだ…… 歌手グローリーの生涯は数奇に満ち、波瀾に富んでいた。 全盛時代の彼女の歌声には激情と哀愁のこもり、 聴く者の心をかきむしったものだ。 巨万の富を築いた彼女は栄光の思い出をかみしめながら、 自叙伝の執筆にとりかかっていた。 そんなある日、不幸が彼女を見舞った。 何者かに心臓を撃ち抜かれたのだ。 その死に際に残された文字はたった一語――「顔」 驚くべき告白とダイイング・メッセージの謎! エラリイが見せた推理とは? Q愛用のダイイングメッセージもの。 と思いきやそれがメインにあらず伏線に徹した傑作。 人間模様がとりわけ際立つのは後期の要ですね。 クイーン父子のあうんの呼吸などファンには堪えられないはず。 ラスト、ダンディすぎ(w この作品はエイヴラム・デイヴィッドスンが小説化。 もしくは、病気だったりスランプだったりのリーの復活作。
The House of Brass 1968 B 「真鍮の家」青田勝訳 (HM文庫)新婚旅行から帰ったクイーン警視夫妻を待っていたのは 奇妙な招待状だった。 それはブラスという老人の遺産相続に関するものだったが、 興味を惹かれた夫妻が訪れた老人の邸は、 その住人も建物も想像以上に異様なものだった。 果して奇妙な提案の裏にはいかなる謎が隠されているのか! クイーン警視夫妻の活躍。 クイーン警視シリーズ第2弾(完結w) せっかくの主演のディックですが ラストでいいとこ全部エラリイに持ってかれます(;_;) やはり館ものはそれだけで魅力的ですねぇ。 この作品はエイヴラム・デイヴィッドスンが小説化。
Cop Out 1969 B 「孤独の島」青田勝訳 (HM文庫)孤独な道を歩んできた警官マローンがやっと築きあげた幸福な生活が、 ある夜三人の闖入者たちによって破られた。 製紙会社から大金を奪った強盗団に押し入られたのだ。 危機に瀕したマローンがとった必死の行動とは? 巨匠クイーンが執筆活動40周年を記念し、 従来の探偵小説の型を破ってものした画期的な作品! クイーンの姓を冠した人間は登場しません。 スピーディなサスペンス。ハードボイルド。 ピカレスク、ノワール、クライム…ではいいすぎかな。 ストレートにアクション映画のようなストーリー。 随所でミステリっぽい要素もありますが、 ここまで削ったのは40周年記念にして初めてでしょう。 「ガラスの村」のジョニーのような主人公マローンの かいほう(どの漢字に変換しても成立する^^)物語ともいえます。 孤独の島だから、あの終局につながるんだよね。 ――署長かっこよすぎ(^^;
The Last Woman in His Life 1970 B 「最後の女」青田勝訳 (HM文庫)クイーンが手にとった受話器から聞えてきたのは 「殺される」というジョニー・Bの断末魔の叫び声…… 華々しい社交界の中でしか充足できなかった彼が、 三人の元妻たちをライツヴィルの別荘に呼び寄せ、 遺言状の書き換えを発表する前夜の出来事だった。 遺言状をめぐる醜い争いに巻込まれたクイーンの見たものは? ライツヴィルシリーズ第6弾。 ライツヴィルものにしては珍しく… というか初めてクイーン父子で訪れます。 (「顔」のラストシーンから始まるんだね、これ) 学生時代の旧友に勧められライツヴィルの別荘で休暇を過ごすことに。 舞台がライツヴィルなだけで、それほどアレではないですね。 "最後の女"もいかにも社会派的な後期らしい作品だし。 第2部のああいうノリは大好き(^^) 核になる手がかりは「スペイン岬」の逆パターンですな。
A Fine and Private Place 1971 A 「心地よく秘密めいた場所」青田勝訳 (HM文庫)巨大なコングロマリットを一代で築き上げた経営者のニーノ。 その命令は神の託宣のごとき威圧感で他を従わせた。 監査役のウォレスは公金横領の証拠を握られ、刑務所送りとなる代りに、 21になる娘を妻にという要求を飲まされたのだ。 それも結婚後5年を経なければ財産請求権は与えないという条件つき…… だが、娘が生贄となったとき、 一方では凶悪な犯罪計画がひそかに芽生えていた! 巨匠クイーンの最後となった本格長篇推理 クイーン最後の長編。 おお、最後ですよ。 ここまですべて読んできた人間にとって、感傷はひとしおですよ。 心地よく秘密めいた場所。 またタイトルが情緒を助長するもんなあ。 (青田さん、いい仕事するなぁ) あるいは塋域(墓場)。あるいは胎内。 意図されずリーの急逝で"最後"になっただけなのに、 内容の軸が"出生"なのも、ちぇ、気のきいた因果じゃありませんか。 "9"に徹した含意も 全体の構成もクイーンらしさが随所に感じとれます。 「どうです。そうでしょう?」 まあそんなものだ。 や、でも、"九尾の猫むち"はどうかと思うぞ(w; アレはもう個人的に聖書と化してるので、こいつはまいったな。 いやいやこれはきっとアレで敗毀して拝跪して ズタズタのボロボロにされた私へクイーンが贈ったクッションにちがいない、 うん、きっとそうだ、なんてマイルドな作家なんだろう(電波) 荒野でだれかが、あたしにきいた 「海にはいちごがいくつある?」 あたしは負けずに答えてやった 「森の赤いにしんと同じ数」 心地よく秘密めいた場所? クイーンの作中が私にとってのそれだったから、 もう新作と同義の未読の作品はないから、 すべて読み終えた23の五月晴れの日(新暦)、 クイーン生誕100周年の年に。 以上、QED。 ああ、こういうの、あとで見るとさっぶいぞぉ(w 証明終わりなんていっちゃってるけど、 まだQ関連で読んでみたいのあるし、 ちょくちょく再読もしていくつもりだから永遠ですよ。 終わってたまるかっての。 クイーンがくれた心地よく秘密めいた場所は確かに現在するから(^^)おまけ。 クイーン作品ランキング 再度ならべてみても、 きっともうおなじにはできない けれん味あふれる水準。
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