鮎川 哲也 (あゆかわ てつや)

1919.2.14〜2002.9.24
東京生まれ。
中国・大連育ち。
拓殖大学商学部卒業。
1948年、「ロック」に短編「月魄」を発表。
1950年、長編「ペトロフ事件」で「宝石」百万円懸賞に入選。
1956年の「黒いトランク」以降、
鮎川名義でアリバイ物を中心に本格推理を多数発表。
「憎悪の化石」「黒い白鳥」で60年に日本探偵作家クラブ賞を受賞。
ほかに、長編22本や短編多数。
鉄道物や密室物などアンソロジーの編集にも熱心。
2001年、第1回本格ミステリー大賞特別賞受賞。
東京創元社によって鮎川哲也賞が設立されている巨匠。 受賞作一覧
本名:中川 透

※長編リスト 無印は鬼貫シリーズです

ペトロフ事件 黒いトランク りら荘事件(星影) 黒い白鳥 憎悪の化石
白の恐怖(星影) 人それを情死と呼ぶ 翳ある墓標 砂の城 偽りの墳墓
死者を笞打て(ノンシリーズ) 死のある風景 宛先不明 準急ながら 積木の塔
鍵孔のない扉 風の証言 朱の絶筆(星影) 戌神はなにを見たか 沈黙の函
王を探せ 死びとの座
1956黒いトランク★★★★
汐留駅でトランク詰めの男の腐乱死体が発見され、 荷物の送り主が溺死体となって見つかり、 事件は呆気なく解決したかに思われた。 だが、かつて思いを寄せた人からの依頼で 九州へ駆けつけた鬼貫の前に青ずくめの男が出没し、 アリバイの鉄の壁が立ち塞がる……。 作者の事実上のデビューであり、 戦後本格の出発点ともなった里程標的名作! ミステリ。鬼貫警部シリーズ。 国内・トラミス&時刻表トリック&アリバイ崩しの原点。 本書は棺桶の移動がクロフツの「樽」を思い出させるが、 しかし決して「樽」の焼き直しではない。 むしろクロフツ派のプロットをもって クロフツその人に挑戦する意気ごみで書かれた力作である。 細部の計算がよく行き届いていて、論理に破綻がない。 こういう綿密な論理の小説にこの上ない愛着を覚える読者も多い。 クロフツ好きの人々は必ずこの作を歓迎するであろう。 と、乱歩も語っております。 細か〜い、ひたむきな捜査がクロフツを想起。 けどやっぱ私は向いてないな、うん(^^; 鉄道属性があって地理に明るければいいのでしょうが、 うといとついて行くだけで必死。 まあ、小説として退屈ではないので忍従せよ。 国内のミス作家の重鎮の事実上のデビュー作なので覚悟してぜひ。 ラストの鬼貫だけでよし、渋ぅ!
1957りら荘事件(講談社文庫版) ★★★★★

秩父の山荘に7人の芸術大学生が滞在した日から、 次々発生する恐怖の殺人劇。 最初の被害者は地元民で、死体の傍に トランプの“スペードのA”が意味ありげに置かれる。 第2の犠牲者は学生の1人だった。当然の如くスペードの2が…。 奇怪な連続殺人を、名探偵星影竜三はどう解く? 巨匠の本格傑作。 本格ミステリ。 地方の山荘を舞台にした連続殺人(7〜8人も)だったり、 被害者のもとにスペードのトランプが置いてあったり、 雰囲気は極上のものでしょう。 ちと伏線があとだし気味なものや大胆すぎるものもあり、 時代を感じる部分もあるけれど、国内史上では確実に不朽です。 ひさびさに本格をたんのうしましたよ(´ー`) あと、あまり気にすることないけど本書は星影竜三シリーズです。 すました感じの、とくに個のある探偵ではありません。 本業は貿易商らしい。 長編では、本編と「白の恐怖」と「朱の絶筆」の三作に登場。 短編でもいくつか出演されています。初登場作はなんだろう? 「名探偵・星影竜三全集」(全2巻)が出ていて、 その最初の作品「呪縛再現」が濃厚か――ってこれ「りら荘」の原形じゃん。 じゃあその次の「赤い密室」が固いか。 順番を気にするかたはこちらから☆
1987クイーンの色紙★★★☆☆

推理作家クイーンの半身ダネイ来日、 レセプションに列席した鮎川哲也と歓談―― 両雄相見えた実話に基づく表題作で、 作家鮎川哲也がサイン色紙紛失事件の渦中に。 真相を求めて三番館を訪れると……。 安楽椅子探偵譚、三番館シリーズ第五集。 バーテンダーが探偵役のバー『三番館』シリーズ。 収録作品5話とも、事件の関係者が バーに相談しにいく安楽椅子探偵のパターンです。  秋色軽井沢 急行列車内で男が毒で死亡するという事件が発生。 数人の容疑者たちにはいずれもアリバイがあり、 警察は自殺と判断するが、 元妻が異議を唱えて私立探偵に調査を依頼する。 先生お得意のアリバイ崩しです。 私立探偵がワトスン役ってのがおもしろい。 この探偵もシリーズキャラなのかね。  X・X 大会社の社員寮の一室で毒死している男が発見された。 手元には"XX"というダイイング・メッセージが。 現場からは萩原朔太郎の詩集(初版本)だけが消えていた。 この文字が指ししめすものとは? 使いかたが巧い。たしかに錯覚するわ〜。 「マネキン人形殺害事件」も読みたくなる罠。  クイーンの色紙 クイーンの色紙紛失事件。 昭和52年秋、来日したダネイ夫妻の(光文社主催の)歓迎会。 その当時の雰囲気や模様が 巨匠のかざらない主観でつづられているエッセイ風。 どこまでがフィクションなのか、その点も興味あるな。 登場人物にダネイがいるミステリの豪華なこと!  タウン・ドレスは赤い色 花屋と、副業でヤミ金を運営する女性が殺害された。 やがて容疑者のひとりが自殺をし、事件は解決。 だが、この話を聞いたバーテンはある疑問を抱き――  鎌倉ミステリーガイド 「ホラーの会」メンバーでの鎌倉ミステリーガイドツアー。 道中のハイキングコースでひとりのメンバーが刺殺される。 被害者は"N"の文字を書き残していたが……。 このツアーも実話系なのかな。 耆宿の叙述トリック、おみごとです。自画自賛でもいい。 鮎川哲也は日本のクイーンである、とはじまる解説は クイーン研究家のわれらが飯城勇三氏によるもの。 ほとんどミステリを手にしてない私は、 (鮎川哲也のイメージはもっぱら時刻表&アリバイ崩しなのである!) おや、と思いながらも目を通して得心。 手がかりのこだわり、設置技術が秀でていると。 しかし鮎川選マイベストの変貌のなんとすさまじいこと(w 巨匠でもこれだけ変化するものなんですねー。
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