山田 正紀 (やまだ まさき)

1950.1.16〜
名古屋生まれ。
昭和48年・明治大学経済学部卒。
1973年SFマガジン「神狩り」でデビュー。第6回星雲賞日本短編部門を受賞。
1978年「地球・精神分析記録」で第9回星雲賞日本長編を受賞。
1980年「宝石泥棒」で第11回星雲賞日本長編を受賞。
1982年「最後の敵」で第3回日本SF大賞を受賞。
1995年「機神兵団」で第26回星雲賞日本長編を受賞。
2002年「ミステリ・オペラ」にて第2回本格ミステリ大賞、
第55回日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門を受賞。
1973「神狩り」★★★☆☆

若き天才情報工学者、島津圭助は、 神戸市で調査中の遺跡、花崗岩石室内壁に、ある《文字》を見せられる。 十三重に入り組んだ関係代名詞と、二つの論理記号のみの文字。 論理では解くことのできないその世界の言葉を執拗に追うある組織は、 島津の卓越した頭脳に、この文字を通じて 《神》の実在を証明することを強要する。 ――語りえぬことについては、沈黙しなくてはならない―― ヴィトゲンシュタインの哲学に反く行いに幕を開ける、SF小説の金字塔。 "それは、薊でなければならなかった。" の有名(らしいよ)なプロローグからはじまるSF。 《神》に挑んだちっぽけな人間たちの物語。 蒼い。 書き手も若いので、読み手も若いのが好ましいですね。 といってもジュブナイルなわけじゃありません。 ただできるなら10代のうちに目を通しておきたいタイプ。 ちと古臭さもあるけど、褪せたりはしません。 「想像できないものを想像する」その具現。 メタ言語《古代文字》…… 十三重以上に入り組んだ関係代名詞と、 二つの論理記号のみの文字……が示す、 上位の論理レベルに属する存在の描き方が見事。 大森望氏の解説によると、 本書と「弥勒戦争」('75)「神々の埋葬」('77)は "神"三部作と通称されているみたい。 シリーズ的相互関係はないようですが。 ちなみに「神狩り2」('05)は正統続編。 「確かに、《神》は巨大な存在かもしれない……  だが、戦いを続ける限り、  人間が勝つことはないかもしれないが、決して負けることもない……」 ああ、こういうの好きすぎる――(;´Д`)
1997「妖鳥」★★★★
暗闇の中、私は目覚めた。頭が痛む。 ここはいったいどこなのか。わからない。 そもそも私は誰なのか? 人が死んでいる?死んだのは誰?殺したのは誰? ああ、何もかもがわからない。誰か助けて―! 郊外の病院で起きた異様な殺人事件。 愛憎と狂気が産みだした驚天動地の密室トリックとは? 発表時に大絶賛を浴びた傑作本格ミステリー。 幻想ミステリ。 ハルピュイア。ハルピュイア。 背景がとにかく奥深い、詰め込み過多で偏食注意。 端的にいうと便秘後の島荘っぽい。 閉所恐怖症の人は避けた方がいいかも、なんとなく(w 重苦しいというか窮屈なんだな、奇書風ともいえる。 雰囲気重視なら間違いなく買いですよぃ。
1997「阿弥陀 パズル」★★★☆☆

「ねえ、こんなことってありますか。  人間ひとり、どこかに消えてしまったんですよ」。 今村茂は呆然とした表情で警備員の檜山に言った。 今村の同僚で交際相手の中井芳子が勤める保険会社は 十五階建てのビルの最上階にある。 残業を終えたふたりがエレベーターで一階に降りた直後、 芳子は「わたし忘れ物してきちゃった」と オフィスに戻ったはずが行方不明に…。 人間消失をテーマにビル全体を覆う密室大トリックを繙く謎と 論理の大逆転ミステリ。 風水火那子シリーズ第1弾。 コミカルな人間消失トリック勝負のパズラー。 アミダクジよろしく片っ端から論理を積み上げて真相を摸索する寸法。 ハズレを引いても、なにげにアタリなのはご愛嬌(w できばえは、そうですね、フェアとは思えません(^^; 反感を買うほどではなかったですけどね、少々拍子抜け。 キーアイテムにたまごっちが活躍するのは時代を感じます(;´Д`) 探偵役は風水 火那子たん。 ハタチ前後のフリーターでさらっと快活な性格。萌え。 意味ありげに匂わせている兄は「螺旋 スパイラル」の 探偵役(風水 林太郎)で登場しているようです。 そうか、妹だったのか……。
1998「仮面 ペルソナ」★★★☆☆

「最初の殺人事件が起こったときに、すぐに警察に連絡していたら、  第二、第三の事件は防ぐことができたかもしれない、  そうおっしゃるのですか?(中略)私が犯人なのです、刑事さん」 ―その晩、経営難に陥ったクラブのお別れの仮装パーティに、 男四人、女三人が集まり、完全密室の店内で惨劇は起こった。 冒頭で早くも犯人が確定?本書全体に仕掛けられた大どんでん返し! 読者を欺く名(?)探偵・風水火那子シリーズ第二弾。 風水火那子シリーズ第2弾。 冒頭から密室トリック&犯人を解き明かしたり、 視点が現在、回想、手記とめまぐるしく変化します。 作中の文章に見られる▼▲の印の意味するものとは? (あれを利用してこれも書こうかと思ったけど、4秒で挫折w) かなたん(探偵)のアイデンティティーの葛藤など なかなかおもしろいですよ、例えお約束でも。 ただ物語としては積め込みすぎで、なにがしたいんだか、 って観は横たわっちゃうんですけどね、でも力作。努力賞。 普通の街中をクローズドに仕立てたのは感心しちゃった。 久方ぶりにポーが読みたくなったな。「赤死病の仮面」とか。
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