コナン・ドイル (Sir Arthur Conan Doyle)

1859.5.22〜1930.7.7
エディンバラ生まれ。
祖父ジョンは著名な政治的諷刺漫画家。
伯父リチャードも風刺画家で"パンチ"誌の名編集者でもあった。
父チャールズは建築家、母は紋章学に造詣が深かった。
美術評論家で編集者の大伯父マイクル・コナンが名前の由来。
幼いころからポーの物語を読んで感銘を受けていた。
1876年、エディンバラ大学、医科に入学。
この頃、学費を稼ぐため小説の執筆を開始。
1879年、怪奇冒険もの「ササッサ谷の秘密」が
"チェンバーズ・ジャーナル"誌が採用されデビュー。
1881年、医学士の称号を得て、翌年に開業医となり、
さらに翌年、医学博士の学位を得て結婚。
執筆は続けていたが伸び悩んでいた。
1887年「緋色の研究」を発表。一躍脚光を浴びる、
なんてことはなく、数年後の短編群から本格的な人気の火がつく。
やがてミステリを確約させた。ビバ黎明期。フィファ揺籃期。
1887〜1927年にかけて発表したホームズもの60編(長編4、短編56)は聖典の域。
SF「失われた世界」(チャレンジャー教授シリーズ)など
ミステリ以外のジャンルの著作も多数。
クリケット、フットボール、ボクシング、
スキー、自動車レース、射撃などスポーツも万能。
晩年は心霊学の研究に傾倒していた。

超参考
※聖典 canon,sacred writings
    A Study in Scarlet
1887緋色の研究★★★★★

「はじめまして。アフガニスタンにおられたのでしょう?」 「どうしてそれがおわかりですか?」 ホームズとワトスンが初めて出会ったときの第一声がこれ。 世界中の読者を熱中させることになる名コンビが誕生した瞬間である。 これから2人はロンドンのベーカー街221Bに部屋を借り、 共同生活をしながら、数多くの怪事件に挑むことになる。 まずはワトソンがホームズの人物像をさぐり出していく面白さ! ホームズ・ファンなら必読の記念すべき第一作。 アフガニスタンで肩を撃たれ、腸チフスにかかり、 すっかり衰弱して帰国した陸軍軍医ジョン・H・ワトスン。 旧友に再会したワトスン博士は共同下宿の話を持ちかけられた。 その相手はなにやら不可解な人物らしい。 ほかでもないシャーロック・ホームズその人である。 かくしてルームメートとなったふたりにさっそく事件が。 近所の空家で富豪のアメリカ人が毒殺されたのだ。 壁にはドイツ語で復讐を意味する"RACHE"の血文字が……。 さらに被害者の秘書も刺殺されて発見される。 難解に思える事件だが、ホームズは電撃的に解決してしまう。 ここまでが第1部。 第2部はいきなり砂漠とモルモン教にジャンプしてとまどい、 やがてその意味が明らかになって感服します。 ホームズとワトスンの出会い、人物像の観察がたのしいです。 飛ばし気味の名推理もはじめから健在。 いうにおよばず基本中の基本です、必読です。 というか未読の人のほうが貴重かと。
    The Sign of Four
1890四人の署名★★★☆☆

ある日ホームズのもとに、若い女性の依頼人が現われた。 17歳のときに、インドから帰国した父親が失踪して以来、 彼女のもとには毎年のように贈り主不明の真珠が送られてくるという。 無限の富を持つとみられる軍人の怪死から、 初めて明るみに出た“四人の署名”の秘密。 インド王族の秘宝をめぐる争奪戦に介入したホームズの大活躍がはじまる。 事件のない退屈と空虚さをコカインでしのぐホームズ。 そこにひとりの女性メアリ・モースタンがやってきた。 インドで軍務をしていた彼女の父が帰国したものの、 待ちあわせ場所に現われず、消息を絶ってしまったという。 その数年後、彼女に謎の人物から真珠が毎年ひとつずつ届けられ、 ついにこの日、相手から面会をもとめる手紙が舞いこんだのだ。 ホームズとワトスンは彼女と指定の場所に同行することに。 待ちうけていた男が語る財宝にまつわる奇妙な物語。 さらに財宝の鍵を握る家で密室毒殺事件が発生し―― こちらも探偵だけじゃなく、犯人の物語もしっかりしているのがグッド。 宝探しが大事な要素なのにけっこうおざなりな気も(w 当時は違法じゃないとはいえ薬物注射の針痕だらけのホームズは微妙。 本書では先の戦で肩ではなく、 脚を撃たれたことになっているワトスン博士(^^; そのロマンス、なれそめも見所です。
    The Hound of The Baskervilles
1902バスカヴィル家の犬★★★★
昔の呪われた伝説が、いまなお生きているのか、西部イングランドの名門、 バスカヴィル家の当主が、突然、謎の変死をとげる。 死体には外傷はないが、その顔は恐怖にゆがみ、 かたわらには巨大な犬の足跡がついていた。 闇にきらめく灯火。火を吐く魔の犬の跳梁! 荒涼たる一寒村を舞台に、恐怖と怪異にみちた妖犬に挑戦するホームズは? 西部の寒村の荒地にたたずむバスカヴィル館、 その主人サー・チャールズが日課の散歩中に怪死した。 死因は心臓発作らしく、恐怖の衝撃を死に顔に宿していた……。 そのチャールズの友人モーティマー医師がホームズを訪ね、 この死にまつわる呪われた魔犬の伝説を語り、 遺産を相続することになるチャールズの甥ヘンリのため、 事件解明の助力を請うた。蘇える伝説の真相とは? 怪奇色が強く、スリルとホラーの冒険もの。 ホームズ不在で独力でがんばるワトスン君が好き。 この頼りなさも恐怖感を増させる効果に(w しかしなんか事情があって黒豹の類いでもうろついているのかと思ったら、 ほんとに犬だったのね(^^;
    The Vally of Fear
1915恐怖の谷★★★★
シャーロック・ホームズ最後の長編は、 彼の最大の敵、悪の天才モリアーティ教授との死闘である。 ある日ホームズのもとにとどいた暗号文は、 殺人の警告であったが、時すでに遅く、被害者は惨殺されてしまった。 平和なイングランドの小村に起こる殺人は、 アメリカ開拓時代の昔に遡って、悪の集団の恐るべき正体を暴露する! ドイル十八番の伝奇的要素を豊富にもりこんだ本書は、 すさまじい迫力で読者をひきずりこむのだ。 ディクスン・カーがドイル長編中のベストとして推す傑作であり、 第2部はそれだけ独立させても充分な、謎と意外性を秘めている。 ホームズ宛てに届いた、暗号が記された手紙。 解読するとダグラスという男に危険が迫っているという。 その矢先、警部が訪問し、射殺事件の協力を要請。 猟銃で頭部を吹き飛ばされるという無残な犯行。 被害者の名前はダグラスだった―― 解決に乗りだすホームズ一行だが、この犯罪の裏には大きな闇が……。 最後の長編。最初の長編のような構成ですが、 ミステリの完成度はあがっていますね。 もっとも"顔のない死体"は現代では見えすいていてあれですが>< 第2部のバーディ・エドワーズの罠なんかはみごとで かっこいい(;´Д`)と興奮したけれど、 その後のおびえた逃亡生活や結局やられちゃったりと、 ちょっと人物像にあわないなぁという印象。 モリアーティとの決着を誓うホームズは惚れれる。
以下、ホームズもの全5冊の短編集。
    The Adventure of Sherlock Holmes
1882シャーロック・ホームズの冒険★★★★★

文豪ポオによって誕生した推理小説は、それから半世紀、 シャーロック・ホームズの登場によっていよいよ新時代を迎えるにいたった。 ホームズは世界中の国語に訳され、無数の模倣者を生んだ。 しかしホームズの前にホームズはなく、ホームズのあとにホームズはない。 シャーロック・ホームズこそは名探偵の代名詞であり、 推理小説そのものである。 本書は処女短編「ボヘミアの醜聞」を筆頭に 全12編の傑作を収めた不滅の第一短編集。 集中の「赤髪連盟」「唇のねじれた男」「まだらの紐」などは 推理小説史上に燦然と輝く名作中の名作である。 シャーロック・ホームズとワトスン博士の名コンビは 読者を魅了してやまない。  ボヘミアの醜聞 A Scandal in Bohemia 1891.7 ホームズの部屋を訪れたのはなんとボヘミア国王。 依頼はある女性と軽はずみで撮ってしまった写真の回収。 巧妙に隠された写真はどこにあるのか? 処女短編。時期的に「四人の署名」後の物語みたい。 アイリーネ・アドラー登場作。 恋愛(女性)に対してはすに構えるホームズが "あのひと"と敬称を使うほどの存在です。  赤髪連盟 The Red-Headed League 1891.8 「クイーンの定員」を優先(!)  花婿の正体 A Case of Identity 1891.9 結婚式当日、花婿が不可解な失踪をした。 花嫁に捜索を依頼されたホームズの出した答えは? 後味の悪い事件です。放置でいいのかね……。  ボスコム渓谷の惨劇 The Boscombe Valley Mystery 1891.10 片田舎の名士が撲殺された。 状況証拠から被害者の息子に強い容疑がかかる。 はるばる出馬したホームズの推理が冴える! ダイイング・メッセージの片鱗もあり。 犯人は自業自得としか思えないな。甘いかと。  五個のオレンジの種 The Five Orange Pips 1891.11 嵐の夕刻、祖父と父が不審死をとげたと訴える青年。 その死の前に、K・K・Kと赤字で書き殴られ、 五個のオレンジの種の入った奇妙な手紙が届いており、 青年にも同様の手紙が舞いこんだのだ。背景になにが? ホームズもけっこう失敗するんですよね。 タイトルにするべきミステリではない。  唇のねじれた男 The Man with Twisted Lip 1891.12 阿片窟で煙のようにすがたを消した男。 現場には衣類や血痕が残されていた。 男の妻がホームズに調査を依頼するが……。 なんとまあ、乞食のほうが儲かるというのはすごいですね。 ホームズや犯人の変装技術も相当すごいですが(w 躄(いざり)という単語を知る。  青い紅玉 The Blue Carbuncle 1892.1 クリスマスの早朝、街中で喧嘩が起こり、 騒ぎが収まると、そこには帽子と鵞鳥が落ちていた。 拾った男がホームズに持ち主を探すよう頼んだのだが、 鵞鳥の餌袋(胃袋)から貴重な宝石が転がり出た! 平和(?)なクリスマス・ストーリー。  まだらの紐 The Speckled Band 1892.2 朝早くホームズ宅に来訪した女性。 2年前、彼女の結婚をひかえた双子の姉が 施錠していた自室からよろよろ現われ、 「まだらの紐が!」と恐怖の叫びを上げ息絶えた。 彼女の身になにが起きたのか? これもかなり有名な事件・トリックですね。 作中の「毒殺の疑いは?」 「数人のお医者さんがしらべましたけど、わかりませんでした」 のくだりはズルいといえばズルい。  技師の親指 The Engineer's Thumb 1892.3 ある朝、ワトスン宅に親指を切断した男が手当てにやってきた。 昨夜、水力技師である彼はたっぷりの報酬を条件に 秘密の仕事を請け負っていたというのだが―― 光るのはアジトをめぐる推理だけで まんまと殺人犯を捕り逃すのはいいのかな?  独身の貴族 The Noble Bachelor 1892.4 ある貴族の教会での結婚式のさなか、 花嫁が失踪する事件が発生した。 自発的に去ったように見える花嫁の思惑とは? まったくタイミングの悪い……いや、いいのか?(^^:  緑柱石宝冠事件 The Beryl Coronet 1892.5 取り乱した銀行の頭取がホームズの部屋を訪問した。 借金の担保に預かった国宝級の緑柱石の宝冠に飾られていた 宝石の内3つが盗まれたのだ。しかも容疑者は彼の放蕩息子。 しかし犯行前後の様子がおかしい。事件の真相は? これはなかなか鬱エンド。  ぶなの木立ち The Copper Beeches 1892.6 ぶな屋敷とよばれる田舎の家の家庭教師に雇われた女性。 高すぎる給料に加え、ささいだか奇妙な要求をする主。 無気味になってきた彼女はホームズに助けを求め―― おおいにホラミスしています。平坦と狂気のバランスがデラ。
    The Memoirs of Sherlock Holmes
1894回想のシャーロック・ホームズ★★★★
第1短編集『冒険』につづくこの第2短編集では11編の作品を収録する。 名馬の失踪にからむ殺人を鮮やかに解決する「銀星号事件」を筆頭に、 ホームズが初めて手がけた「グロリア・スコット号」、 怪奇味の横溢する「マズグレーヴ家の儀式書」、 そして天才的犯罪者モリアーティ教授とともに ホームズが滝壺に落ちて生死不明となる「最後の事件」等、 謎の創意と物語の展開、そして意外な解決において、 いくど読んでもあかせない魅力をそなえた黄金の短編集である。  銀星号(シルヴァ・ブレイズ)事件 Silver Blaze 1892.12 競馬の調教師が殴殺され、名馬の銀星号も失踪した。 レースを前にいかなる思惑が働いたのか? うふん、犯人が正当防衛の犯馬ってのは妙味。  黄色い顔 The Yellow Face 1893.2 妻のようすがどこかおかしいと相談に来た夫。 金を無心したり夜中に外出したり、 そして近所の家の窓からの覗く無気味な黄色い顔―― ホームズが失敗した事件、と冒頭で紹介されるので、 いかにしてそうなったかも興味のひとつに。 哀しい事件ながら救いも見える良作。  株式仲買店員 The Stockbroker's Clerk 1893.3 勤務先の商会が倒産し失業してしまった株式仲買店員の青年。 そんな彼に多額の給与と地位を与えるという会社から勧誘が。 しかしあやしい点も多く、彼はホームズに事態を訴えることに。 すでに似たような事件があるので大ざっぱな予想はできちゃう。  グロリア・スコット号 The "Gloria Scott" 1893.4 ホームズとワトスンがくつろいでいたある日、 ホームズがひとつの奇妙な手紙を取りだした。 彼が学生時代に初めて手がけた事件に関するものらしい。 ホームズ最初の事件という魅力的なテーマ。 ドイルはこの事件パターンが好きだねぇ。  マズグレーヴ家の儀式書 The Musgrave Ritual 1893.5 名家マズグレーヴ家の執事と女中がすがたを消した。 一家に代々伝わる儀式書に秘密があるらしいが……。 上のが素人探偵としての最初の事件であるなら、 これは職業探偵としての最初の事件に当たる感じ。 ここから仕事が増えていって「緋色の研究」につながると。  ライゲットの謎 The Reigate Squires 1893.6 難事件が続き、すっかり衰弱したホームズ。 心配したワトスンは田舎へ療養に連れていくが、 そこでも強盗射殺事件に遭遇してしまう。 ふらふらのホームズの失敗の数々が罠になっているのが巧い。  まがった男 The Crooked Man 1893.7 騒音を聞き主人夫婦の施錠された部屋の前に集まった召使たち。 ただならぬようすに窓から進入すると主人が死亡していた。 飾られていた棍棒が凶器らしい。当然、妻に容疑がかかるが、 付近では身体のまがった不具者が目撃されており、関係が? これもお得意の事件パターン。 被害者が過去に犯した犯罪に怯え復讐されるやつ。  入院患者 The Resident Patient 1893.8 神経科医がホームズを訪れた。 彼が開業の際に気前よく投資をしてくれた男の部屋に 何者かが侵入した痕跡を見つけて以来、男が恐慌を来たしたという。 これも同じパターン(^^;  ギリシャ語通訳 The Greek Interpreter 1893.9 ギリシャ語通訳の男が拉致され、ある家に連れこまれ、 その家に監禁されていた男を脅迫するための翻訳をさせられた。 やがて解放された通訳はある人物に監禁された男の救出を求め―― ホームズの7つ上の兄マイクロフト登場作。 分析・推理力はホームズを凌駕するが 行動力がとぼしいというおもしろいキャラクター。  海軍条約事件 The Naval Treaty 1893.10-11 ワトスンのかつての学友から手紙が届いた。 外務省の官職に就いている彼が機密文書を盗まれたのだ。 ワトスンはホームズを出馬させることに。 あの"盗まれた手紙"チックです。 見取図まであるのにいたって普通の犯行なのね(^^;  最後の事件 The Final Problem 1893.12 巨大な犯罪組織をあやつるモリアーティ教授。 ホームズとの熾烈な頭脳対決により、 いよいよ追い詰められたかに見えたが―― 宿敵モリアーティ教授登場作。 そしてホームズ最後の事件!日付けは1891.5.4
    The Return of Sherlock Holmes
1905シャーロック・ホームズの生還★★★★
第2短編集の最終編「最後の事件」で 極悪人モリアーティ教授と組みあったまま 滝壺に落ち生死不明となったホームズは、読者の熱烈な要望に応えて、 本書冒頭の1編「空家事件」で奇跡の復活をみせるにいたった。 ドイルの作品中もっともトリッキイな小説として 高く評価される「ノーウッドの建築業者」、 ポオの「黄金虫」とならぶ暗号解読の傑作「踊る人形」、 奇抜な事件が明快な推理に裏づけられる「六つのナポレオン胸像」など ホームズ再起の気魄にみちみちて、作者円熟の境を示す全13篇を収録する。  空家事件 The Empty House 1903.10 青年貴族が密室状態の自室で銃により死亡した。 彼はトラブルとは無縁の人物で、事件は行き詰まり……。 本編は1894春 事件よりホームズの生還にしか目がいかない(w バリツ! しかし真相はひどい。窓からの狙撃は銃声と命中率から不可能といいつつ、 じっさいに空気銃と凄腕ときたもんだ。  ノーウッドの建築業者 The Norwood Builder 1903.11 建築業者の殺人と証拠隠滅の放火をした廉で手配された青年が 無罪を訴えにホームズの部屋へ飛びこんできた。 しかし調査を進めるほど容疑は濃くなっていくばかり。 決定的な証拠を逆転させる手際がいい。 この話でまたホームズと共同生活をはじめたと記すワトスン。 ゆえに前話でいう不幸がもう登場しない妻との死別を指していると。  踊る人形 The Dancing Men 1903.12 踊る人形のような絵文字のメッセージが届くようになってから 妻のようすがすっかりおかしくなったという夫。 やがて悲惨な殺人事件へと発展し―― 手遅れ>< 暗号解読の過程はみごとでおもしろい。  あやしい自転車乗り The Solitary Cyclist 1904.1 相場の倍の給与で音楽の家庭教師をはじめた若い女性。 自転車通勤中、ひげの男からストーキングされはじめ、 ホームズに相談を持ちかけるが。 多忙なホームズに代わってワトスンが探偵するも手厳しいダメだし(w  プライオリ・スクール The Priory School 1904.2 私立予備校の校長で高名な博士が訪れた。 大貴族の10歳の生徒と教師が失踪したという。 児童誘拐事件にホームズが挑む。 謝礼に食いついた流れがいまいち解せない。  ブラック・ピーター Black Peter 1904.3 乱暴者のピーター・ケアリ船長が銛で殺害された。 警察に助力を請われ出馬するホームズ。 従順な警部の教育がたのしい。  恐喝王ミルヴァートン Charles Augustus Milverton 1904.4 数百もの恐喝で荒稼ぎを続ける悪人ミルヴァートン。 被害者のひとりに頼まれ対決するホームズだが……。 ホームズとワトスンの悪役ぶりがおかしい。  六つのナポレオン胸像 The Six Napoleons 1904.5 ナポレオンの胸像が次々に破壊されるという怪事件が。 やがて殺人事件まで発生。犯人の狙いとは? 大抵盗んだ宝石でも埋めたんじゃね? と思いますよね。見つけて大喜びのホームズ(^^; 善良で正直な持ち主から"安値"で入手したのは疑問。  三人の学生 The Three Students 1904.6 出張中のホームズのもとに大学講師がやってきた。 彼の自室に保管していた試験用紙が覗かれたらしい。 容疑が濃いのは学寮の3人の学生なのだが……。 なんか美談になってる(w  金ぶちの鼻眼鏡 The Golden Pince-Nez 1904.7 田舎屋敷の主人の秘書が金ぶちの鼻眼鏡を握りしめて刺殺されていた。 およそ動機の考えられない事件の真相は? これはヒドいとばっちり。  スリー・クォーター失踪事件 The Missing Three-Qrarter 1904.8 大学ラグビーチームの主将が駆けこんで来た。 試合を明日に控えるのに、チームのエースが失踪したのだ。 財産家の叔父を持つ彼は誘拐されたのか? 博士のキャラクターがいいなぁ。  僧房(アベイ)荘園 The Abbey Grange 1904.9 強盗殺人事件が発生。犯人一味に束縛された妻の眼前で 駆けつけた夫が火掻き棒で撲殺されたのだ。 なんら不審な点がないこの事件だが、ホームズは―― こういう直観的にチクチクする名探偵の図って好き。  第二の血痕 The Second Stain 1904.12 大物政治家が来訪。最高国家機密を記した書類が紛失したという。 もし公表されれば欧州全土が戦渦に巻きこまれかねない。 重責を担いホームズが動く! これも"最後の事件"っぽい作り。構成が雄渾。
    His Last Bow
1917シャーロック・ホームズの最後のあいさつ★★★★
ここに名探偵シャーロック・ホームズは、 全世界の読者にむかって最後のあいさつをおくることになった。 ドイル晩年の第4短編集で、 1908年から1917年にかけて発表された全編を収録する。 怪奇小説的な展開を示す「藤(ウィスタリア)荘」、 希代の悪党を向こうにまわしてホームズが秘策をねる 「フランシス・カーファクス姫の失踪」、 下宿人の不審な挙動から真相に到達する「赤輪党」、 恐怖の一夜の怪をさぐる「悪魔の足」など8編を収める。 ホームズにはじまりホームズにつきるとまで絶賛される本格的短編の粋!  (ウィスタリア)荘 Wisteria Lodge 1908.9-10 藤荘と呼ばれる屋敷に招待された男。 ところが翌朝、目を覚ますと屋敷の主人も召使も消えうせていた。 一夜にして無人となった屋敷でいったいなにが? このあと主人が死体で発見され、招待客に容疑がかかる流れ。 短編なのに雑誌掲載の都合か2部構成になっている力作。  ボール箱 The Cardboard Box 1983.1 ある老女にボール箱に入った2つの人間の耳が届けられた。 警察は悪質ないたずらと見るが、ホームズは重大犯罪を予見し―― 「回想」に収録されるべき一本ながら、 不徳義と作者自らカットしたものの、今回追加。  赤輪党 The Red Circle 1911.3-4 ある下宿屋のおかみがやってきた。 最近、干渉しないという条件に高額の家賃で入居した男が ずっと引きこもり、室内で歩き続けていて無気味だという。 その程度の事件に関心を示さないホームズだが。 まあ、赤と党でおおよそ流れがわかりますね。  ブルース=パーティントン設計書 The Bruce-Partington Plans 1908.12 国家機密の最新の潜水艇の設計書が盗難された。 国の一大事にマイクロフト直々にホームズに捜査を要請。 死者の救済もうかがえる展開がグッド。  瀕死の探偵 The Dying Detective 1913.12 結婚生活2年目のワトスンのもとにハドスン夫人が訪れた。 下宿人であるホームズが奇病で瀕死だと訴えた。 結婚している設定のワトスン。微笑ましい一話。  フランシス・カーファクス姫の失踪   The Disappearance of Lady Frances Carfax 1911.12 さる姫様が行方不明となり、 足跡を辿るためスイスに派遣されることになった探偵ワトスン。 棺桶の無気味さが印象的です。  悪魔の足 The Devel's Foot 1910.12 ある一家の兄妹が恐怖によって狂死する怪事件が発生。 転地保養中のホームズが乗りだすが―― ラディクス・ペディス・ディアボリ(悪魔の足の根)とかいわれても(^^;  最後のあいさつ His Last Bow 1917.9 1914.8.2、第一次世界大戦勃発の時。 ホームズとドイツスパイの対決を描く。 "シャーロック・ホームズの閉幕詞(エピローグ)"。 これまた"最後の事件"っぽい構成。余生がうかがえます。
    The Case-Book of Sherlock Holmes
1927シャーロック・ホームズの事件簿★★★★
「高名な依頼人」をはじめ、 「サセックスの吸血鬼」「這う男」など、 お馴染みベーカー街221Bを訪れる様々な依頼人が持ち込む難事件。 あるいは、サセックスのささやかな家に 隠遁したホームズを待ち受ける怪事件……。 1887年、『緋色の研究』で颯爽と登場し、たちまち名探偵の代名詞として 奉られるほどの人気を博したシャーロック・ホームズは、 4長編56短編で全世界のファンを魅了し、いま鮮やかに退場する。 本書はその最終短編集を、〈ストランド・マガジン〉掲載時の 挿絵を付してお届けする待望の全訳版である。 「読者諸君、いよいよこれでシャーロック・ホームズともお別れだ!」  高名な依頼人 The Adventure of the Illustrious Client 1925.2 殺人を犯しながら法の網目をかいくぐり、英国に渡ってきた大犯罪者。 その男がある令嬢との婚約を発表。未来の犯罪を防ぐため、ホームズは―― ワトスン、中国陶器の一夜漬けがむだすぎる(w  白面の兵士 The Adventure of the Blanched Soldier 1926.2 ある男が消息を絶った戦友を訪ねに家に行ったが、 家族のようすがおかしく、どうやら幽閉されているらしい。 一家でなにが起きているのか、ホームズが出張る。 挿絵がこわすぎ! 本編はワトスンに「自分で書いてみろ!」と 怒られたホームズが記述したという設定です(w  マザリンの宝石 The Adventure of the Mazarin Stone 1921.10 10万ポンドの宝冠盗難事件。 ホームズは犯人を突きとめるも宝石は見つからず。 そこで犯人を呼びだし、取引を持ちかけることに。 全体的にホームズの罠がたのしい一話。 本編は3人称でだれが記述しているのかが最大のミステリー(w  三破風館 The Adventure of the Three Gables 1926.10 ある夫人の館と家財を丸ごとと高額で 買い取りたいという話が持ちあがった。その目的は? これはダグラス君が子どもだわなぁ。  サセックスの吸血鬼 The Adventure of theSussex Vampire 1924.1 ワトスンの旧友から相談の手紙が。 彼の妻が継子を折檻したり、実子の赤ちゃんの首に 噛みついて血を吸っていたというのだが―― このミステリの提示と真相はお見事。ホームズマイベストかも。  ガリデブが三人 The Adventure of the Three Garridebs 1925.1 一代で巨万の富を生みだしたガリデブ氏の遺言。 それはめずらしい自分と同じ性の3人の男に遺産を配るというもの。 2人までは見つかったが3人目がいない。そこでホームズに調査を依頼。 これはもう「赤毛」臭がしますよね。  ソア橋の怪事件 The Problem of Thor Bridge 1922.2 金山王の妻が橋上で射殺され、家庭教師の女性に容疑がかかる。 しかし夫が彼女の無罪を証明して欲しいと訴えた。 現場に残された痕跡が示す事件の真相とは? 冒頭の"語られざる物語"のジェイムズ・フィリモアを クイーンが題材にして作品を描いています。 (「シャーロック・ホームズの災難」に収録)  這う男 The Adventure of the Creeping Man 1923.3 飼い犬に襲われたり、夜中に這うように歩いていたりと、 著名な教授のようすがおかしいと助手がホームズに面訴。 普段はなんの問題もなく講義や研究をこなす教授になにが? こ、これはバカミスといわざるをえない(´・д・`)  ライオンのたてがみ The Adventure of the Lion's Mane 1926.12 泳いでいた受験指導校の教授が息絶え絶えに海から上がり、 「ライオンのたてがみ」と言い残し事切れた。 隠退後のホームズが自ら記した事件。 犯人はクラゲ(キュアネア・カピラータ)かあ……。 解説だとサイアネア・カピラータ  覆面の下宿人 The Adventure of the Veiled Lodger 1927.2 サーカスの曲芸師の夫妻が見世物のライオンに襲われ、 夫が命を落とし、妻は顔を損傷し、ヴェールを着けた日々を送る。 この出来事の裏には思いもよらぬ事情があり―― ホームズの説諭が場当たり的なものだったら 変な反応をしてしまいあの結果にはいたらなかったのかも。  ショスコム・オールド・プレース   The Adventure of Schoscombe Old Place 1927.4 競走馬の調教師がホームズの部屋に訪れ、 このところ馬主兄妹のようすがどうもおかしいという。 借金に首が回らない兄と財産を握る病弱な妹になにが? おせっかいでしかなかったと(^^;  隠退した絵の具屋 The Adventure of the Retired Colourman 1927.1 隠退した画材製造業の副社長が来訪した。 彼の20歳年下の妻が全財産を手に浮気相手と高飛びしたのだ。 なんとか妻を捜しだし財産を取り戻したいと訴えるが……。 ほんとの最後の一話。けど最後っぽさはさすがにもうない(w
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