グレッグ・イーガン (Greg Egan)

1961.8.20〜
オーストラリア西海岸のパース出まれ。
西オーストラリア大学で数学理学博士号を取得。
自主映画製作や病院のプログラマーなどを経て、専業SF作家に。
アイデンティティの問答が一貫したテーマ。

OHP
    Quarantine
1992「宇宙消失」★★★★★

2034年、地球の夜空から星々が消えた。 正体不明の暗黒の球体が太陽系を包みこんだのだ。世界を恐慌が襲った。 この球体について様々な仮説が乱れ飛ぶが、 決着のつかないまま、33年が過ぎた…。 ある日、元警察官ニックは、病院から消えた若い女性の捜索依頼を受ける。 だがそれが、人類を震撼させる量子論的真実につながろうとは! ナノテクと量子論が織りなす、戦慄のハードSF。 ハードSF。 未来の私立探偵小説(ハードボイルド)のようでもあります、序盤は。 この辺の展開は正直、退屈でもあったな。 ギミックには興味あるけれど、それだけ発達した技術があるなかで 行方不明人の捜索を地道にやられてもね、なんかちがうぞと。 (もちろん、ちゃんと世界観の説明や伏線になってるけれど) ところが、SFエンジンがかかった中盤からは圧巻。 突如、地球の夜空から星々が消えたという魅力的な設定が 主題になっていくんですね。震えた。 概要をひと言でいうと、訳者あとがきにある、 「シュレディンガーの猫の身にもなってみろ!」 が的を射た見解でしょう、これはうまいわ。 量子論をあつかう以上、相当にややこしいけど いつもごきげんな前野昌弘氏の解説もわかりやすくてグッド。 たのしいSFもいいけど、 やはりうならされるハードSFがいいね。
    Distress
1995「万物理論」★★★★
すべての自然法則を包み込む単一の理論、 “万物理論”が完成されようとしていた。 ただし学説は3種類。 3人の物理学者がそれぞれの“万物理論”を学会で発表するのだ。 正しい理論はそのうちひとつだけ。 映像ジャーナリストの主人公は 3人のうち最も若い20代の女性学者を中心に番組を製作するが…… 学会周辺にはカルト集団が出没し、 さらに世界には謎の疫病が。究極のハードSF。 ハードSF。 ……読み応えありすぎ(^^; とにかく骨太で肉厚。多面的。 単純な統一論の物語と期待してたから意外だったな。 科学(物理)より哲学、宗教、思想小説かと思うくらい。 本筋と無関係でもとことん言及しやがるので 雑多になりがち…なんだけど、 ちゃんと伏線になってたりするんで憎いねぇ。 ラストで辿り着く"万物理論"もすてきじゃないですか、 ああいうのは(あるいは)わかっていても嬉しくなっちゃうよ(^^) 文章がヘタ、なんてのを何度か見かけたけどそうでもなかったです。 あやふやな一人称はやめてもらいたかったですけど(^^; 汎性やヤスオヤスコなどの訳語が出てくるので、 訳者さんのあとがき解説を先に読んだほうがいいですよぅ。 ネタバレもないんでご安心を〜。 作中の数字遊び。 ・10と1000のあいだの数を1つ選んでください。(例:575) ・各ケタの数字を足してください。(17) ・その各ケタの数字をさらに足してください。(8) ・それに3を足します。(11) ・それを最初に選んだ数から引きます。(564) ・その各ケタの数字を足します。(15) ・それを9で割ったときの余りはいくつですか?(6) ・それを二乗します。(36) ・そこに6を足します。(42) ・いまあなたの心の中にある数は…42ですね?(当たった!) ・ではもう1度やってみましょう…
    Reasons to be Cheerful and Other Stories 
2003「しあわせの理由」★★★★
12歳の誕生日をすぎてまもなく、 ぼくはいつもしあわせな気分でいるようになった… 脳内の化学物質によって感情を 左右されてしまうことの意味を探る表題作をはじめ、 仮想ボールを使って量子サッカーに興ずる人々と未来社会を描く、 ローカス賞受賞作「ボーダー・ガード」、 事故に遭遇して脳だけが助かった夫を 復活させようと妻が必死で努力する「適切な愛」など、 本邦初訳3篇を含む9篇を収録する日本版オリジナル短篇集。 ハードSF。あるいはPF(哲学小説w 現代SFの先駆イーガンの短篇集です。 (寓意は無視するけど)解説の人が「頭に入れる」でなく、 「インストールすれば」といってるけど、これが言い得て妙。 作品にもよるけど苦労して機械作業で読む感じはありましたもん。 内容を吟味するのは読み終えてからでOK。 そういう意味では小説というよりソフトウェアと取れますね。 「適切な愛」夫の脳を宿す妻。ホラーだね(w 「闇の中へ」ワームホールの固ゆでレスキュー隊。 「愛撫」キメラは形状ではなく実質なのね。 「道徳的ウイルス学者」リングっぽい。宗教諷刺。 「移相夢」夢の移相器。オチはそのものなのかな… 「チェルノブイリの聖母」例の原発事故。未来の探偵小説(ぉ 「ボーダー・ガード」量子サッカーと不死の未来社会。 「血をわけた姉妹」これがベストだったな。 「しあわせの理由」作中の外で考えさせられるのがイーガンですね。
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