The Roman Hat Mystery 1929 

「ローマ帽子の謎」井上勇訳 (創元推理文庫)
「ローマ帽子の秘密」宇野利泰訳 (HM文庫)
「ローマ劇場毒殺事件」石川年訳 (角川文庫)
衆人環視の劇場の中で、
突然、死体となって発見された、正装の弁護士。
シルクハットが紛失していることを唯一の手掛りに、
苦心惨憺たるエラリーの活躍がはじまる。
その名前を一躍、推理小説界のスターダムに押しあげて、
ヴァン・ダインと名声をきそわせるにいたった処女作。
さすがエラリーの推理は、後日あるを思わせる本格推理の名編。

国名シリーズ第1弾。「読者への挑戦状」付き。

"アメリカのミステリそのもの"と称されるクイーンの処女作。
"ローマ帽子"の手がかりを足がかりに
エラリイが推理を重ねる生粋の本格パズラーです。
遊び心はまだ薄めですが、
不純物を唾棄したとも取れるので出だしとしては万全です。
もっともエラリイはいかんなく引用癖を披露していますが(w

「ローマは国名じゃないぞっ」ってお約束の突っ込みも忘れずに☆
The French Powder Mystery 1930 SS

「フランス白粉の謎」井上勇訳 (創元推理文庫)
「フランス白粉の秘密」宇野利泰訳 (HM文庫)
「フランス・デパート殺人事件」石川年訳 (角川文庫)
「フランス白粉の秘密」白石佑光訳(新潮文庫)
エラリー・クイーンの地位を確固不動のものにした、その第二作。
ニューヨーク五番街の大百貨店“フレンチス”の飾り窓から
忽然と転がり出た婦人の死体をめぐり、
背後に暗躍する麻薬ギャングと知能比べを演じるエラリーの会心の名推理。
わずか数粒の〈白粉〉と、棒紅のなかからころがり出た
ヘロインの〈白い粒〉の謎の真相は、一体何か?

国名シリーズ第2弾。「読者への挑戦状」付き。

「ローマ帽子」の踏襲ともいえなくもない本格パズラー。
もちろん多少は手慣れて消去法にも磨きがかかっています。
捜査の過程だけでも、まったく無聊を感じさせないのは凄いですよ。
最後の最後まで、それこそ最後の1行まで犯人を明かさないのが素敵。

なお、本作では「探偵道具箱」をエラリイが持ち出します(w
中身は、指紋採集粉、測定器、拡大鏡、試験管、
リトマス試験紙、糸、ピン、封筒など。
のちの作品にもまれに登場します。
The Dutch Shoe Mystery 1931 SS

「オランダ靴の謎」井上勇訳 (創元推理文庫)
「オランダ靴の秘密」宇野利泰訳 (HM文庫)
「オランダ靴の秘密」蕗沢忠枝訳 (新潮文庫)
オランダ記念病院の手術台にのせられた百万長者の老婦人は、
白布をめくると、すでに針金で絞殺されていた。
犯人は病院の中にいる?
エラリーを前にして、第二の殺人がおこった。
作者が典型的なフェアプレイで、
あらゆる手がかりを与え、読者に挑戦した本格作品。
数学のように整然とした論理的構成は、クイーンならではの醍醐味である。

国名シリーズ第3弾。「読者への挑戦状」付き。

病院での連続殺人、という舞台装置と雰囲気が秀逸。
枝葉末節まで理路整然さが光り、これぞフェアプレイの鑑。
すでに洗練されはじめ、洒脱な味わいもあります。

ちなみに病院が舞台のミステリはこれが史上初だそうですよ。
命を助ける場での殺人事件はエキサイティング。
現代的にいえば、ふるえ上がるナースの属性も付加して萌え(w
The Greek Coffin Mystery 1932 SSS

「ギリシア棺の謎」井上勇訳 (創元推理文庫)
「ギリシャ棺の秘密」宇野利泰訳 (HM文庫)
「ギリシア棺謀殺事件」石川年訳 (角川文庫)
ニューヨークのどまん中に残された、
古い墓地の地下室から発見された二つの死体。
その謎を追うエラリーは、一度、二度、三度までも
犯人に裏をかかれて苦汁をなめるが、ついに四度目、彼の目が光った。
大学を出てまもないエラリーは読者に先んじて勝利を得るだろうか?

国名シリーズ第4弾。「読者への挑戦状」付き。

御託を並べ立ててもドミノにもなりゃしない。

一言、パーフェクトですよ、最長老さま。

「読者への挑戦状」なんていうけど
こればかりはエラリイにしか解けませんって。
しかもエラリイがまだ大学出の設定で、
これが"最初の事件"な訳ですからね。ただ壮絶。

青臭いエラリイがかわいいです(w#
The Egiptian Cross Mystery 1932 SSS

「エジプト十字架の謎」井上勇訳 (創元推理文庫)
「エジプト十字架の秘密」青田勝訳 (HM文庫)
「エジプト十字架事件」石川年訳 (角川文庫)
「エジプト十字架の秘密」田中西二郎訳 (新潮文庫)
Tの字形のエジプト十字架に、次々とはりつけにされてゆく
小学校校長、百万長者、スポーツマン、未知の男!
その秘密を知るものは死者だけである。
ついにさじを投げたと思われたエラリーの目が、突然輝いた。
近代のあらゆる快速交通機関を利用して、
スリル満点の犯人の追跡がくり広げられる。
読者と作者との激しい謎解き戦はどうなるか?

国名シリーズ第5弾。「読者への挑戦状」付き。

これまた冗談のような超大作です。
弊竇がまったくない完成度。
精緻ではあるものの、前作のように難解ではなく、
スペクタクルでダイナミックなアクションシーンも加わってもはや敵なし。
この完成度はひとつの奇跡。
The Tragedy of X 1932 SSS

「Xの悲劇」鮎川信夫訳 (創元推理文庫)
「Xの悲劇」宇野利泰訳 (HM文庫)
「Xの悲劇」田村隆一訳 (角川文庫)
「Xの悲劇」大久保康雄訳 (新潮文庫)
「Xの悲劇」宇野利泰訳 (講談文庫)
ニューヨークの市街電車で起こった事件は、
サム警視の頭を悩ませるに充分なほど不可解なものだった。
突然の豪雨を避けるため、婚約者や友人たちと
市電に乗った株式仲買人が、なかでくずれるように倒れた。
上着のポケットに入っていた奇妙な凶器で殺されたらしいのだが、
密室状況の車内には被害者に悪意を抱く者が大勢いた。
サム警視は事件の解決を元俳優の探偵ドルリイ・レーンに依頼するが、
第2、第3の殺人が発生するにおよび、事件は意外な様相を呈しはじめる。

悲劇シリーズ第1弾。
シリーズというより四部作ですけどね。
4冊読めば全体に通された意図が浮かび上がってきます。

交通機関を利用した連続殺人。
計算され尽くした、まったく隙がない出来に脱帽です。
理想的本格ミステリの手本。
凶器はエグすぎ。

このシリーズ、当初はクイーンでなく
バーナビイ・ロス(Barnaby Ross)って名義でした。
探偵役もエラリイではなく、
シェークスピアに傾倒してる老人ドルリイ・レーン。

ところで本作はQ産ダイイングメッセージものの第一号です。
ダイイングメッセージはQが発案とか何度か耳にしたけど、
これが元祖とは思えないんですよね〜(^^;
The Tragedy of Y 1932 SSS

「Yの悲劇」鮎川信夫訳 (創元推理文庫)
「Yの悲劇」宇野利泰訳 (HM文庫)
「Yの悲劇」田村隆一訳 (角川文庫)
「Yの悲劇」大久保康雄訳 (新潮文庫)
「Yの悲劇」平井呈一訳 (講談文庫)
「Yの悲劇」鎌田三平訳 (集英文庫)
行方不明の富豪ヨーク・ハッターの死体がニューヨークの港に揚がった。
警察は毒物による自殺と断定したが、
その後、ハッター一族の邸では奇怪な事件が起こり始める。
子供のジャッキーが毒物の入った飲み物で危うく命を落としそうになり、
未亡人のエミリーがマンドリンという奇妙な凶器で殺害されたのだ。
狂気じみた一族を巻き込んで展開される驚愕すべき完全犯罪―
名探偵ドルリイ・レーンが解明にいどむ連続殺人の全貌とは?
スリリングな謎、用意周到な伏線、明晰な論理性と、
本格ミステリに求められるすべてを備えた不朽の名作。

悲劇シリーズ第2弾。

どうしよう、完ぺきすぎていうことないもんな…
およそ瑕瑾ってやつが見当たりません。
クイーン初の館ものが、ミステリそのものの代表作に。
すべてを備えた不朽の名作に偽りなし。
The Tragedy of Z 1933 

「Zの悲劇」鮎川信夫訳 (創元推理文庫)
「Zの悲劇」宇野利泰訳 (HM文庫)
「Zの悲劇」田村隆一訳 (角川文庫)
「Zの悲劇」横尾定理訳 (新潮文庫)
悪名高い上院議員が、選挙を控え、自宅で刺殺されていた。
家の者をわざわざ外出させているのも奇妙なら、
犯行現場にいわくありげな小箱が置かれていたのも奇妙だった。
出てきた手紙から、いかがわしい婦人との交際が明らかになるが、
事件の様相を一変させたのは、脅迫状だった。
アーロン・ドウなる囚人からのもので、復讐をにおわせる文面だった。
しかもこの男は最近出所したばかりだったのだ…!
現代的な女探偵の先駆ペイシェンス・サムを登場させ、
老探偵ドルリイ・レーンとの見事なコンビぶりを描く型破りの本格探偵小説。

悲劇シリーズ第3弾。

タイムリミットがあるミステリ。
それも死刑執行が期限なので
名作「幻の女」はこれのリスペクトなのかもしれません。

さらにこの時代において斬新な"若い女流探偵"を起用しています。
視点が女性なのも珍しいです。
前作たちがあまりに常軌を逸しているので
本作はインパクトが薄くなりがちですが、
巧妙にしっかりと作られた一品なのは確か。
Drury Lane's Last Case 1933 

「レーン最後の事件」鮎川信夫訳 (創元推理文庫)
「ドルリイ・レーン最後の事件」宇野利泰訳 (HM文庫)
「最後の悲劇」田村隆一訳 (角川文庫)
サム元警視のもとを訪ねてきたのは、
色眼鏡をかけ髭をまだらに染めた異様な風体の男だった。
一通の封筒を預け男は消えたが、
同じ頃博物館でシェイクスピアの稀覯本すり替え事件が起きる。
サムの要請に応じ、名探偵ドルリイ・レーンが真相究明に乗りだすが…
シェイクスピア劇の元名優ドルリイ・レーンが、
世界文学史を根底から覆す大事件の謎に挑む。
X、Y、Zに続く四部作の掉尾を飾る巨匠の代表的傑作。

悲劇シリーズ第4弾。完結。

シリーズをここまで読んだ人なら最後のトラジェディを堪能しましょう。
XYZが未読なら間違っても手を出さない方がよろしいですよぅ。

ネタバレ危険度の高い作品(w;
The American Gun Mystery 1933 

「アメリカ銃の謎」井上勇訳 (創元推理文庫)
「アメリカ銃の秘密」大庭忠男訳 (HM文庫)
「アメリカ・ロデオ射殺事件」石川年訳 (角川文庫)
四十人の騎手を従え、二万人の観衆の歓呼の声浴びて、
さっそうとおどり出たロデオのスター、
たちまちおこる銃声と硝煙の乱舞の中で、煙とともに消えた生命。
ありあまる凶器の中から、真の凶器が発見されない謎を、
エラリーはいかにして解くだろうか。
ニューヨークのどまん中に西部劇を
持ちこんだ非凡な着想に読者は魅了されることだろう。

国名シリーズ第6弾。「読者への挑戦状」付き。

容疑者、目撃者が膨大で、じつに2万人(w
そこから1人の犯人へしぼるロジックに感服。
ハウダニットの王道で、
ジューナの出番が多いのもファンには魅力。
The Siamese Twin Mystery 1934 

「シャム双子の謎」井上勇訳 (創元推理文庫)
「シャム双生児の秘密」青田勝訳 (HM文庫)
「シャム双子殺人事件」石川年訳 (角川文庫)
「シャム双生児の秘密」宮西豊逸訳 (新潮文庫)
古いインディアン部落を背景に、
異様な境遇をもったふたりの人物を登場させて、
怪奇な殺人物語が展開される。
エラリーの長い犯罪捜査の経験の中で、官憲の手をかりず、
独力快刀乱麻を断った最初の事件。
刑事も、指紋係も、検屍官も登場しない。
エラリーの“国名連作”の中で珍重すべき一編である。
意外なあと味の良さも定評のある作品。

国名シリーズ第7弾。

シリーズの中では最も異質。
舞台は閉ざされた山荘(洋館)。
単純に隔絶されているのではなく、
山火事が迫ってくる緊迫感が伴ないます。
(唯一「読者への挑戦状」がないのも水を差したくなかったからかな)
そんな状況下で犯人の断罪は意味をなすのか?
そしてエラリイたちの運命やいかに!?

というかだれですか、
「ハムソーセージの謎」とかいいだしたのはヽ(`Д´)ノ
The Chinese Orange Mystery 1934 

「チャイナ橙の謎」井上勇訳 (創元推理文庫)
「チャイナ・オレンジの秘密」乾信一郎訳 (HM文庫)
「中国切手殺人事件」石川年訳 (角川文庫)
宝石と切手収集家として
著名な出版業者の待合室で殺された、身元不明の男。
被害者の着衣をはじめ、あらゆるものが、“さかさま”の謎。
〈ニューヨーク・タイムズ〉が
クイーンの最大傑作と激賞したが、読者の判定はどうか?
クイーンが作りあげた密室殺人事件の卓抜な着想は数多ある作品中でも、
特異の地位を占めるものとして人気がある。

国名シリーズ第8弾。「読者への挑戦状」付き。

すべてがあべこべの変格事件。
Q産の密室は珍しいです、けどそれも逆さの密室。
ダネイがいたく気に入ってる作品。
中国論とさかさまの整合性が楽しいです。

絵的にもおもしろいね。
自分の部屋とか身近なところでイメージするとよくわかります(^^)
The Spanish Cave Mystery 1935 

「スペイン岬の謎」井上勇訳 (創元推理文庫)
「スペイン岬の秘密」大庭忠男訳 (HM文庫)
「スペイン岬の裸死事件」石川年訳 (角川文庫)
スペイン岬と呼ばれる花崗岩塊の突端にある別荘の海辺で
発見されたジゴロの裸の死体。
この家にはいずれも一癖ある客が招待され、
三人の未知の人物が加わっていたらしい。
被害者はなぜ裸になっていたか?
魅惑的で、常軌を逸していて、不可解な謎だらけの事件――
と作者が自讃するこの難事件に対決するエラリーの精緻きわまる名推理!

国名シリーズ第9弾。「読者への挑戦状」付き。

トロピカルホワイダニット。リゾート気分で割りとまったり。
"被害者はなぜ裸になっていたか?"
なんだか間抜けな命題ですが、推理のしがいはあるので
"本気"で挑戦してみるのもいいかもしれません。

ただし「シャム双子」で大破した愛車デューセンバーグが
復活しているのはあまり気にしないように(w
おまけ。 ここでは13冊(国名9+悲劇4)の長編が出ていますが、 元来、悲劇シリーズは三部作の予定で、 「Z」のプロットは「ドイツ監獄の謎」というタイトルで 国名シリーズの1つにあがっていたそうです。 「レーン最後の事件」は「Z」になっていたと。 そう考えると国名10作、悲劇3作で 10進派にはバランス上々だったのに惜しいね。 あと色付きの英字は個人的評価を表しています。 あくまで私見なので1つの目安程度と認識していただければ幸いです。 かなり甘いもんね、我ながら思う。   ……無限 SSS……さらに上 SS ……ヴァンダインそれ以上   ……★★★★★   ……それ以下   ……それ未満   ……orz
▼BACK▼          ▽TOP▽