Halfway House 1936 SS

「中途の家」井上勇訳 (創元推理文庫)
「途中の家」青田勝訳 (HM文庫)
あばら家から女の悲鳴が聞こえ、一台の車が飛び出していった。
義弟ジョゼフに会いにきた青年弁護士ビル・エンジェルが
その家で見たものは、胸を刺されて死にかけた義弟の無残な姿だった……
真相究明を依頼されたビルの友人エラリイ・クイーンは、
被害者がニューヨークとフィラデルフィアに
それぞれ妻を持つ重婚者だったことを明らかにする。
果たして彼はどちらの人間として殺されたのか?
自選ベスト3に選ばれた迫力篇。

最後の「読者への挑戦状」付き。

なにがすごいって"だれが殺したのか?"ではなく、
"どちらの人格で殺されたのか?"という点の着想です。
被害者が重婚者で、それぞれのサイドの葛藤も見事。
論より証拠をくつがえす、クイーン式証拠より論も絶好調。
成功してる国名や悲劇を切り捨てたのも素敵すぎ。

さて初の単発の作品なんですが、まさに作風の"途中"なんです。
「"推理"の国名のクイーン」と
「"小説"のライツヴィルのクイーン」の真ん中な感じ。
やはりこういった変化を通過すると
ライツヴィルがよりすばらしく見えますよ(^^)

ところでこの作品、
米題は「Halfway House」(中途の家)で
英題は「Half-way House」(途中の家)らしいです。微妙すぎ。

それと注意点。
本書を購入するなら創元の「中途の家」がだんぜんおすすめ。
理由はHMの「途中の家」だとJJマックの序文が
なぜかごっそり削除されてしまっているのですよ。
両方とも所持している私がいうので間違いないです(w
ただ訳のちがいも興味深いので(ぜんぜんちがうのですよ)、
やはりどちらも購入するのがベストかと(^^)
The Door Between 1937 

「ニッポン樫鳥の謎」井上勇訳 (創元推理文庫)
「日本庭園の秘密」大庭忠男訳 (HM文庫)
「日本庭園殺人事件」石川年訳 (角川文庫)
東京帝国大学教授の令嬢ふたりが、
時を同じくして不可解な“自殺”をとげた。
しかも妹は流行の花形作家。
ニューヨークの心臓部に近い日本庭園のなかをかけめぐる“かしどり”は、
どんな秘密をついばんでいたか?
ノーベル賞受賞の医学者とエラリーがしのぎをけずる知能くらべは、
犯罪の背景が東京にあるだけに、日本の読者向きである。

密室ものです。
いろんな意味で読みやすい作品。
日本人ならどうしたって興味が沸くでしょう。

中身よりもこの作品で語るべきことは
"これって国名シリーズなの?"ってことでしょう。
創元文庫のを読んだら思いっきりシリーズ扱いされてます。
が、結論からいえばこれは間違いみたいです。

「The Japanese Fan Mystery」なんてタイトルはなく、
最初から「The Door Between」だったようで。

で、なんだってこんなデマが出回ったのか(洒落じゃない)と
いっても明確な答えはないみたいだから困っちゃう。
内容的には国名的で個人的には合理的だと肯定的なんですけどね。

一説では、

「The Door Between」→「中間の扉」→「日本の扇」→「The Japanese Fan Mystery」

なんてのがありますが、いかがなものか?(^^;
妄信的ファン(信者)が、日本も国名に!と
事実を捻じ曲げたと考える方がロマンあるよね(ない

ちなみにこのデマを広めた犯人は確実に乱歩です(w
The Devil to Pay 1938 

「悪魔の報復」青田勝訳 (創元推理文庫)
「悪魔の報酬」尾坂力訳 (HM文庫)
ハリウッドのその別荘で殺された男はロサンゼルスの大富豪だった。
会社を倒産させ、投資家や共同経営者に損害を与えながらも私腹をこやし、
世間の非難を浴びていた。
ところが、大富豪が奇怪な死を遂げた現場には、
彼への弾劾に加わっていた息子のウォルターの姿があったのだ!
消えた古い決闘用の剣、謎の糖蜜、殺人の動機を持つ何千もの人間。
脚本の仕事でハリウッドを訪れたエラリイは
この魅力的な殺人事件に乗り出したが!

ハリウッドシリーズ第1弾。

いかにも"アメリカ"って感じがするシリーズ。
とにかく新天地ハリウッドの人々が面白おかしいです(^^)
ヒラリイ・S・キング(w

ニューヨークとのギャップが探偵法にも影響を与えています。
今までは父子べったりだったけど、
この頃からエラリイは単独で事件に当たることが多くなってきます。
The Four of Hearts 1938 

「ハートの4」青田勝訳 (創元推理文庫)
「ハートの4」大庭忠男訳 (HM文庫)
「トランプ殺人事件」石川信夫訳(六興出版部)
エラリー・クイーンは映画脚本執筆のためハリウッドへとやって来たが、
陽気な結婚騒ぎが冷酷きわまる二重殺人に転じるや、
頭脳をフル回転させなくてはならない羽目となる。
銀幕の名優、スクリーンの美女、
気ちがいじみた宣伝部長や天才的プロデューサーなど、
多彩な映画王国の面々がひしめくなか、
エラリーが指摘した意外な真犯人とは?

ハリウッドシリーズ第2弾。

ポーラたん(;´Д`)

エラリイが一目ぼれしますからね!
あのエラリイがメロメロに萌えてるのは見物ですよー(w
それでもかっこいいもんな、読後感もよすぎ。
とってもお洒落。ああ、ハリウッド。

しかしハリウッドってあんな奇人だらけなんですかねぇ(^^;
The Four of Hearts Mystery 1949 

「ハートの4 戯曲版」小浜弘子訳 (ウィリアム・ランド)
登場人物(登場順)

マッジ……秘書
スーザン……もう一人の秘書
アリス・クラーク……ハリウッドのエージェント
エラリイ・クイーン……エラリイ・クイーン本人
ポーラ・パリス……芸能コラムニスト
ジェイク・ブッチャー……映画プロデューサー
リュウ・バスコム……脚本家
サム・ヴィクス……撮影所の宣伝部長
ボニイ・スチュアート……若手映画スター
タイ・ロイル……若手映画スター
ジョン(ジャック)・ロイル……タイの父親、映画スター
ブライス・スチュアート……ボニイの母親、映画スター
ヒンドゥー教の賢者(スワーミー)……ブライスの連れ
グルック警部……ロサンジェルス警察の警部
ジュディス・クランダル医師……看護人兼家政婦
トランド・スチュアート……ブライスの父親

人物像や衣装、小道具や舞台での動きの指定までしっかり。
ポーラへのエラリイののぼせぶりはちと割合されてる(w
ミステリ・マガジン(2002年5月号)に一挙掲載されています。
The Dragon's Teeth 1939 

「ドラゴンの歯」宇野利泰訳 (創元推理文庫)
「ドラゴンの歯」青田勝訳 (HM文庫)
「許されざる結婚」井上勇訳 (角川文庫)
エラリー・クイーンはボー・ランメルという青年探偵と
私立探偵社を経営することになった。
そこへ現われた億万長者は、事件を依頼するとともに
多額の契約金を払っていったが、ヨット上で謎の死をとげた。
残された問題は二人の娘とその相続権であったが、
巨万の富をめぐってまきおこる怪事件とは……。
エラリーの推理が冴える謎ときの佳編。

上級のエンターテインメント。
ラストで泣き。若干、俗物的ですけども。
エラリイは紳士だよ、漢だよ。

クイーン好きならもちろんおさえるべきですが、
要所要所だけでいい、ってんなら飛ばしてもOK(w

この頃から執筆以外の活動も本格化していくわけです。
おまけ。 クイーン家の人々といえば、 エラリイ・クイーンと リチャード・クイーンのふたりだけですが、 第3のクイーンがいるのを知ってます? その名もガリヴァー・クイーン。 エラリイの甥にあたるこのキャラは Ellery Queen, Jr.名義のジュブナイル、 「The Mystery of the Merry Magician」と 「The Mystery of the Vanished Victim」に登場するとのこと。 邦訳さえされてないみたいなんで未確認ですが、 ぜひとも邂逅してみたいもんです。
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