Ladies in Crime 1943,46 
The Great Women Detectives and Criminals

「犯罪の中のレディたち 上」厚木淳訳 (創元推理文庫)
女性は男性よりもおそろしいと、かのキップリングが言ったとか。
ミステリの世界でも女性は、ある時は探偵として、
またある時は犯罪者として、あまたの男性を震えあがらせてきました。
ところが、この半世紀のあいだに無数の探偵=犯罪小説の
アンソロジーが編まれてきたにもかかわらず、
女性をテーマにしたものはついに何一つなかったのです……
つまり、エラリー・クイーンが編集した本書が誕生するまでは。
では、偉大な女性の名探偵と大犯罪者たちの
絢爛たる業績を収めた全二巻の貴重なコレクションをどうぞ!

はしがきでクイーンの男女の元祖・探偵/犯罪者小論あり。
「定員」に通じるものがうかがえます。
なお、初版では「The Female of the Species(種の中の牝)」のタイトルで、
1946年、再版時に「The Great Women Detectives and Criminals」と改題、
翌年、「Ladies in Crime」でイギリス版が刊行されたという流れ。
日本版では「女性の名探偵と大犯罪者」が副題になっています。

違い万歳!


第一部 女性の名探偵──アメリカ編

 スパイダー (Spider)
  ミニヨン・エバーハート

スーザン・デアもの。
当主が歿し、残された家族たちが住む古めかしい屋敷での射殺事件。
フツーのありがちなハウダニット。

 緑の氷 (Green Ice)
  スチュアート・パーマー

ヒルデガード・ウィザーズもの。
宝石商で強盗事件が発生し、たまたま居合わせた警官を射殺し逃走。
しかしその宝石商でもっとも高価な
エメラルドの指輪"グリーン・アイス"は無事だった。
ところが数日後、今度はその宝石がまんまと盗まれてしまう。
非常線をかいくぐり消えた犯人と宝石をヒルデガードが追う!

 単独取材 (Solo Job)
  ポール・ギャリコ

サリー(シャーロック)・ホームズ・レインもの。
農場で"宝探し"をしていたふたりの子どもが、
農場主の夫婦に銃撃される事件が発生。
さいわい怪我はたいしたことはなく、夫婦も釈放された。
しかし事件の裏にわるい予感がした新聞記者サリーは
行き倒れを装い農場に単独、潜入するのだが……。

 棒口紅 (The Lipstick)
  メアリ・ロバーツ・ラインハート

ルイーズ・ベアリングもの。
陽気で活発な若妻エリナーが窓から転落死をした。
状況から司法は自殺と評決したが、
エリナーの従姉妹ルイーズは殺人とにらんでいた。
転落前、棒口紅を塗っていたエリナーのすがたが目撃され、
転落後、その棒口紅が紛失していたのだ。

 撮影所の殺人 (Murder in the Movies)
  カール・デッツァー

ローズ・グレアムもの。
ハリウッドの撮影所で映画を撮影中、主演男優が射殺された。
ハリウッドの狂気が充満するなか、監督助手ローズが事件を斬る。

 スクウィーキー最初の事件 (Squeakie's First Case)
  マーガレット・マナーズ

デズモーナ(スクウィーキー)・メドウもの。
メドウ夫妻の隣りのアパートで女の悲鳴が夜のしじまを引き裂いた。
警察が駆けつけると、そこには撲殺された女の死体が。
新聞記者の妻スクウィーキーの魔法で事件が解ける。

 ジゴロの王 (The King of the Gigolos)
  ハルバート・フットナー

マダム・ロージカ・ストーリーもの。
モナコのモンテ・カルロに巣食う悪質なジゴロの集団。
バカンスにやってきたマダム・ストーリーも標的にされ、
一網打尽にすべく全面対決になるのだが……。

 ダイヤを切るにはダイヤで (Diamond Cut Diamond)
  フレデリック・アーノルド・クンマー

エリナー・ヴァンスもの。
宝石商の秘書の女性がダイヤ盗難の嫌疑をかけられ解雇された。
彼女の無実を信じるエリナーは
犯人と目星をつけた男を断罪すべく、わなを仕掛けることに。

 オペラ座の殺人 (Murder at the Opera)
  ヴィンセント・スターレット

サリー・カーディフもの。
オペラの上演中、観客の老婦人が刺殺された。
すぐそばで観劇していたサリーは探偵熱にとらわれ、
事件の調査を好奇心のまま試みるが――
The Player on the Other Side 1943,46 
The Great Women Detectives and Criminals

「犯罪の中のレディたち 下」厚木淳訳 (創元推理文庫)
女性は男性よりもおそろしいと、かのキップリングが言ったとか。
ミステリの世界でも女性は、ある時は探偵として、
またある時は犯罪者として、あまたの男性を震えあがらせてきました。
ところが、この半世紀のあいだに無数の探偵=犯罪小説の
アンソロジーが編まれてきたにもかかわらず、
女性をテーマにしたものはついに何一つなかったのです……
つまり、エラリー・クイーンが編集した本書が誕生するまでは。
では、偉大な女性の名探偵と大犯罪者たちの
絢爛たる業績を収めた全二巻の貴重なコレクションをどうぞ!

第一部 女性の名探偵──アメリカ編(続)

 マッケンジー事件 (The Mackenzie Case)
  ヴァイオラ・ブラザーズ・ショア

グウィン・リースもの。
マッケンジーの秘書が船上から転落死した。
自殺との見方が濃厚だったが、
グウィンはマッケンジーによる殺人だと調査をはじめる。

 フットボール試合 (Coffin Corner)
  H・H・ホームズ

シスター・アーシュラもの。
賭博クラブで射殺事件が発生。
容疑者はフットボールの名プレイヤーだった。
彼の容疑を晴らすべく、相談を受けた修道女の見解は?


第二部 女性の名探偵──イギリス編

 サントロペの悲劇 (Tragedy at St. Tropez)
  ギルバート・フランカウ

キラ・ソクラテスコもの。
大型ヨットのうえで名士が毒殺されていた。
少女探偵キラは調査を進め、大失敗をやらかすのだが……。

 ロトの妻 (Lot's Wife)
  F・テニスン・ジェス

ソランジュ・フォンテーヌもの。
鬼才の画家アンガスの妻ガートルードが失踪した。
アンガスの新しい恋人フローラの友人となったソランジュは
ふたりの婚姻のさまたげとなっている妻の捜索を依頼される。

 百匹の猫の事件 (The Case of the Hundred Cats)
  グラディス・ミッチェル

ミセス・ブラッドレーもの。
精神病医ミセス・ブラッドレーの診察を受けにきた
ダッドレーと記憶喪失症に悩むその姪。
奇妙な病に潜む百匹の猫と殺人の物語。

 銀行をゆすった男 (The Man Who Scared the Bank)
  ヴァレンタイン

ダフネ・レインもの。
銀行頭首がダフネ率いる探偵クラブに相談を持ちかける。
ある男が巧妙に別人になりすまし、
預金額を超える引き落としをしようと企てたのだ。
男のしっぽをつかむため、ダフネはある罠を思いつく。

 フィレンツェ版の珍本 (The Florentine Dante)
  ファーガス・ヒューム

ミス・ヘイガー・スタンレーもの。
質屋のヘイガーのもとに青年が
フィレンツェの希覯本をたずさえ現われた。
なりゆきからその本のどこかにに宝のありかが
記されていることをしり、ヘイガーは宝探しに協力することに。

 恐怖の一夜 (Miss Bracegirdle does Her Duty)
  ステーシー・オーモニア

ミリセント・ブレースガードルもの。
異国のホテルで不運な事故から
見知らぬ男が眠る部屋へ侵入してしまったミリセント。
騒ぎになり、あらぬ誤解を受けるのを避けるため、
男が眠るベッドの下に隠れ一夜を過ごそうとするが……。

 インヴァネス・ケープの男 (The Man in the Inverness Cape)
  バロネス・オルツィ

レディ・モリーもの。
インヴァネス・ケープを羽織ったレナード・マーヴェルが突如失踪。
姉のオリーブに捜索の相談を受けたヤードの婦人捜査班の
班長レディ・モリーだが、この事件に気乗りになれず……。

 村の殺人 (Village Murder)
  アガサ・クリスティー

ミス・マープルもの。
スペンロー夫人が絞殺され、
容疑者に夫と宗教運動家の青年のふたりが浮上。
単純ながら決め手に欠く事件の真相にマープルがいどむ。


第三部 女性の大犯罪者──アメリカ編

 鋼鉄証券のからくり (The Adventure of the Steel Bonds)
  ジョン・ケンドリク・バングズ

ミセス・A・J・ヴァン・ラッフルズもの。
怪盗アンリエットが語る10万ドルの証券を担保に150万ドル借りる方。

 贋札 (The Jorgensen Plates)
  フレデリック・アーヴィング・アンダスン

ソフィ・ラングもの。
ガス欠で立ち往生したシッシンガム夫妻のまえにそびえる屋敷。
そこにはかつての恩人マレットが住んでおり、やっかいになることに。
しかし屋敷に居合わせた人々にはどこか影があり――


第四部 女性の大犯罪者──イギリス編

 盗まれた名画 (The Stolen Romney)
  エドガー・ウォーレス

フォー・スクウェア・ジェーンもの。
厳重な警備のもと、高価な絵画が消えうせた。
小娘の義賊ジェーンはいかにして盗みだせたのか?

 グレート・カブール・ダイヤモンド (The Great Kabul Diamond)
  ロイ・ヴィカーズ

ミス・フィデリティ・ダヴもの。
汚い手口で巨大ダイヤを入手した仲買人のヘンリ・サートル。
そのダイヤが彼の家で何重もの防犯装置をものともせず盗まれた。
犯人ともくされる淑女フィデリティはダイヤはまだ彼の家にあり、
その家ごと買い取りたいと申し出るのだが……。

 姿なき殺人者 (The Undiscovered Murder)
  フィリップス・オッペンハイム

ジャネット・ソールもの。
大犯罪者マイクル・セイヤーと、
それを追う大探偵ノーマン・グレーズ、
そしてマイクルを慕う使用人ジャネット・ソールの物語。
The Misadventures of Sherlock Holmes 1944 

「シャーロック・ホームズの災難 上」
中川裕朗・乾信一郎訳 (HM文庫)
幼き日に出会った一人の英雄、シャーロック・ホームズが、
後年のエラリイ・クイーンを作り上げたといっても過言ではない。
その運命的な出会いの日から長い年月を経てもなお、
ホームズへのクイーンの熱き思いは変わらなかった。
アンソロジストとしても卓越した業績を残したクイーンは、
長きにわたる蒐集の成果を一巻にまとめ上げた。
ホームズの誕生以来生まれた、厖大な数にのぼる
そのパロディ=パスティシュの中から最良の作品を精選し、世に問うたのだ。
作品を発表年代順に配し、
かつ編者自身の詳細な作品解説を付す、クイーン・ファン待望の書!

クイーン(ダネイ)のまえがきではじまるアンソロジー。
ホームズとの出会いから思い入れまでよく伝わってきます。


第一部 探偵小説作家篇


 ペグラムの怪事件 (The Great Pegram Mystery)
  ロバート・バー

〈探偵:シャーロー・コームズ 語り手:ホワイトスン〉
ある男が急行列車の客室で射殺体で発見される。
所持していた300ポンドも消えうせていた。
隣室の乗客は銃声や不審人物に気づくことさえせず。
新聞記者の調査依頼におうじ、すぐに真相を看破するコームズだが……。


 遅かりしホルムロック・シアーズ (Holmlock Shears Arrives Too Late)
  モーリス・ルブラン

〈探偵:ホルロック・シアーズ 語り手:――〉
「怪盗紳士リュパン」にも収録。

 洗濯ひもの冒険 (The Adventure of the Clothes-Line)
  キャロリン・ウェルズ

〈探偵:シャーロック・ホームズ 語り手:――〉
さる警部が高架鉄道で移動中、アパートの窓から窓へわたした
洗濯ひもにぶらさがった女性を目撃。
あれはいったいなんだったのか?
名探偵協会会長のホームズを筆頭に名探偵たちが解決に挑む!

豪華ですよー、ルパンやら思考機械やら、デュパンまで、
古典的名探偵がわらわら登場してけんけんごうごう。
語り手じゃないけど、登場するワトスンも笑える(w

 稀覯本『ハムレット』 (The Unique Hamlet)
  ヴィンセント・スタリット

〈探偵:シャーロック・ホームズ 語り手:ワトスン〉
シェークスピア関係文献の蒐集・鑑定・研究家が
友人から「ハムレット」の稀覯本を借りて帰宅するさい、
護衛が裏切り、貴重なこの本が強奪されてしまう。
ホームズに奪還を依頼するが――

 ホームズと翔んでる女 (Holmes and the Dasher)
  アントニイ・バークリイ

〈探偵:シャーロック・ホームズ 語り手:バーティ・ワトスン〉
婚約でトラブった女性との一幕。
文体が面白味なので説明しにくいな、
バークリイらしいシニカルユーモア。

 婦人失踪事件 (The Case of the Missing Lady)
  アガサ・クリスティー

〈探偵:―― 語り手:――〉
おしどり探偵トミーとタペンス。
北極帰りの探検家がふたりの事務所をおとずれた。
彼の婚約者が彼を避けるように行方をくらましているという。
この婦人失踪事件に首を突っこむふたりだが……。

トミーがホームズにかぶれているていどのつながりです。
オチは、なんというか、時代を問わず、なんだね(^^;

 高名なペテン師の冒険 (The Adventure of the Illustrious Impostor)
  アンソニイ・バウチャー

〈探偵:シャーロック・ホームズ 語り手:――〉
大戦中の潜入スパイの一話。
ショートショートながらこの渋味はバウチャーだなぁと。
締めが読めてしまうのが、本書の特性ゆえのじれんま。

 ジェイムズ・フィリモア氏の失踪
 (The Disappearance of Mr. James Phillimore)
  エラリイ・クイーン

ジェイムズ・フィリモア氏…失踪者
ビッグズ………………………氏の従僕
石炭屋…………………………短時の出演
電報配達人……………………短時の出演
ニッキー・ポーター…………エラリイの秘書
クイーン警視…………………エラリイの父
ヴェリー部長刑事……………警視の部下
エラリイ・クイーン…………やむなく病臥のまま難事件を解明する人
 及び
シャーロック・ホームズ……霊魂のみ出演

風邪で寝こんでいるエラリイを介護するニッキー。
そこにクイーン警視が声をかけた。
これから投資詐欺師のジム・フィリモアが
高飛びするとの密告を受け、現行犯で捕まえるという。
さっそく現場のフィリモア宅の張り込みをはじめると、
本人が出てきたが、天を仰ぐや、家へ引き返してしまう。
どうやら傘を取りに戻ったらしい。
しかし、15分経ってもすがたを現さず、
しびれを切らしたクイーン警視は家宅捜索に踏みこむが、
そこにはジェイムズ・フィリモア氏の影さえなかった……。
警視は帰宅し、病躯のエラリイに相談すると――

……ニッキーとおなじ推理をしてしまった(w

 不思議な虫の事件 (The Adventure of the Remarkable Worm)
  スチュアート・パーマー

〈探偵:シャーロック・ホームズ 語り手:ワトスン〉
ホームズのアパートにやってきた男、
彼のもとに得体の知れない醜悪な害虫が届いた。
その正体と目的の解明に乗りだすホームズだが……。

うん、たまにはこういう役回りもさせてあげなきゃね(^^)


第二部 著名文学者篇


 二人の共作者事件 (The Adventure of the Two Collaborators)
  サー・ジェイムズ・M・バリー

〈探偵:シャーロック・ホームズ 語り手:ワトスン〉
これは……事件(物語)といっていいのかな(^^;
ドイルの朋友からの、内輪ネタです。

 大はずれ探偵小説 (A Double-Barrelled Detective Story)
  マーク・トウェイン

〈探偵:シャーロック・ホームズ 語り手:――〉
暴力夫に屈辱を受け捨てられた女性。
やがて生まれた子どもは犬のような能力を持っており、
女性はかつての夫への復讐を息子にたくす。
執拗な追跡をへて、ある男の爆殺事件が発生、
この事件に居合わせたのはあの名探偵だった――

 盗まれた葉巻入れ (The Stolen Cigar Case)
  ブレット・ハート

〈探偵:ヘムロック・ジョーンズ 語り手:――〉
被害者は名探偵ジョーンズ、彼の葉巻入れが盗まれたのだ。
この大胆不敵な犯人は意外にも――(w

 シャムロック・ジョーンズの冒険 (The Adventure of Shamrock Jolnes)
  O・ヘンリー

〈探偵:シャムロック・ジョーンズ 語り手:ホワッツアップ〉
これも事件らしい事件は起こらず。
ホームズ的な名推理が披露されます。
The Misadventures of Sherlock Holmes 1944 

「シャーロック・ホームズの災難 下」
中川裕朗・乾信一郎訳 (HM文庫)
パロディ=パスティシュとして一つのジャンルを
形成するほどに厖大な作品群が生まれたのは、
シャーロック・ホームズをおいて他にない。
当然、それら書き手もミステリ作家にとどまらず、多岐多様にわたっている。
文学者もいれば、ユーモア作家、アマチュア、そしてホームズ研究家……
少年時代に決定的影響をうけたエラリイ・クイーンもまたその一人であり、
同時に、類いまれなアンソロジストとして
ホームズ・パロディ=パスティシュの蒐集につとめた。
ミステリ史上不朽の人物への熱き思いをこめて、
巨匠が全精力を傾注した傑作アンソロジー。


第三部 ユーモア作家篇


 アンプロザ屋敷強盗事件 (The Umbrosa Burglary)
  R・C・レーマン

〈探偵:ピックロック・ホールズ 語り手:ポトスン〉
田舎屋敷での強盗事件に、名探偵の超推理が光る!

 未知の人、謎を解く (The Stranger Unravels a Mystery) 
  J・K・バングズ

〈探偵:シャーロック・ホームズ 語り手:――〉
黄泉の国が舞台。
キャプテン・キッドの狼藉に狼狽し激怒する偉人たち。
そこに颯爽と現われ、混沌の場を収めるは――

 ホームズ氏、原作者問題を解明す
 (Mr. Homes Solves a Question of Authorship)
  J・K・バングズ

〈探偵:シャイロック・ホームズ 語り手:――〉
こちらも黄泉の国が舞台。
シェイクスピア作品の作者に隠された驚愕の真実!

 欠陥探偵 (Maddened by Mystery : or, The Defective Detective)
  スティーヴン・リーコック

〈探偵:名探偵 語り手:――〉
大陸を揺るがす大事件が!プリンスが誘拐されたのだ!
このデリケートな問題に名探偵が果敢に挑む!

 名探偵危機一髪 (An Irreducible Detective Story)
  スティーヴン・リーコック

〈探偵:名探偵 語り手:――〉
「ミニ・ミステリ傑作選」にも収録されています。
超ミニ殺人ミステリ。


第四部 研究家その他篇


 テーブルの脚事件 (The Adventure of the Table Foot)
  ゼロ(アラン・ラムジイ)

〈探偵:シンロック・ボーンズ 語り手:ワトソネイム〉
父親の再婚問題の相談にやってきた青年。
探偵は話を聞いただけで解決してしまう!

 四百人の署名 (The Sign of the "400")
  R・K・マンキトリック

〈探偵:シャーロック・ホームズ 語り手:ワトスン〉
ダイヤの盗難事件に名探偵の頭脳が閃く!

 われらがスミス氏 (Our Mr. Smith)
  オズワルド・クロフォード

〈探偵:パーロック・ホーン 語り手:ジョブスン〉
とくに事件は起こらず。
ワトスンのほめちぎりを揶揄したパターン。

 天井の足跡 (The Footprints on the Ceiling)
  ジュール・キャスティエ

〈探偵:シャーロック・ホームズ 語り手:――〉
チャレンジャー教授の失踪事件、驚異のなぞ。

 シャーロック・ホームズの破滅 (The End of Sherlock Holmes)
  A・E・P

〈探偵:シャーロック・ホームズ 語り手:ワトスン〉
3歳児の父親になったホームズ。
しかし、この子どももまたすさまじい推理を繰りだし、
近隣住人を辟易させていたのだった……。

 廃墟の怪事件 (The Adventure of the Norcross Riddle)
  オーガスト・ダーレス

〈探偵:ソーラー・ポンズ 語り手:パーカー〉
妻の様子がどこかおかしい、と相談にやってきた男。
どうやら強請られているらしいのだ。
さっそく調査をはじめるポンズの冒険。

 メアリ女王の宝石 (The Mary Queen of Scots Jewel)
  ウィリアム・O・フラー

〈探偵:シャーロック・ホームズ 語り手:ワトスン〉
変哲のない、単なる、ふつうの、宝石盗難事件。

 キトマンズのルビー (The Ruby of Khitmandu)
  ヒュー・キングズミル

〈探偵:シャーロック・ホームズ 語り手:ワトスンとバニー〉
ホームズ対ラッフルズ。
しかし、ルビーをめぐるこの戦いは、
それぞれの助手のせいで思わぬ展開に……。

 最後のかすり傷 (His Last Scrape : or, Holmes, Sweet Holmes!)
  レイチェル・ファーガスン

〈探偵:シャーロック・ホームズ 語り手:ワトスン〉
兄弟のトラブル解決を依頼されたホームズ。単調。

 編集者殺人事件 (The Adventure of the Murdered Art Editor)
  フレデリック・ドア・スティール

〈探偵:シャーロック・ホームズ 語り手:ワトスン〉
"クライム・アーチスト"フレデリック・ドア・スティールに
編集者殺しの容疑がかかる。
ホームズは挿絵画家の容疑を晴らそうとするが――

よっぽど痛い目にあってたんだろうなあ(w

 カンタベリー寺院の殺人 (The Canterbury Cathedral Murder)
  フレデリック・A・クマー&ベイジル・ミッチェル

〈探偵:シャーリー・ホームズ 語り手:ジョーン・ワトスン〉
大寺院で男が刺殺されていた。
ホームズの娘とワトスンの娘が事件解決に乗りだす。

 消えたご先祖 (The Case of the Missing Patriarchs)
  医学博士ローガン・クレンデニング

〈探偵:シャーロック・ホームズ 語り手:――〉
天国でのアダムとイヴ失踪事件。
「ミニ・ミステリ傑作選」にも収録されています。

 悪魔の陰謀 (The Case of the Diabolical Plot)
  リチャード・マリット

〈探偵:大探偵 語り手:――〉
……これはなんともいいがたい事件だなぁ(^^;

 クリスマス・イヴ (Christmas Eve)
  S・C・ロバーツ

〈探偵:シャーロック・ホームズ 語り手:――〉
台本形式。
クリスマス・イヴに起こったハートフルクライムストーリー。

 不死の男 (The Man Who Was Not Dead)
  マンリイ・ウェイド・ウェルマン

〈探偵:―― 語り手:――〉
大戦中、潜入した敵国兵士が訪れたある家での物語。
んー、バウチャーのとかぶっちゃうな。
最後の一話、最後の一行としてはベストか(^^)


本書の原書は著作権だかの都合で発禁になっちゃって、
かなりの稀覯本になっているんですよね。
よくそれを翻訳・発行できたもんだ(^^;
(問題発生前だっただけかな)
日本でもそうとう入手しにくい状況には変わりありません、
見かけたら買いでっせ(w
ちなみに私の手もとにあるのは上下巻ともに初版・帯つき、
なんといまならこれに霊験あらたかな、
ありがた〜いツボをセットにして20万円で……
Rogues' Gallery 1945 
The Great Criminals of Modern Fiction

「完全犯罪大百科 上」厚木淳訳 (創元推理文庫)
好きなように犯罪を犯したあげく、
まんまと法網をくぐって罰せられずにいられるものなら、
こんなすてきなことはないだろう。
完全犯罪――それはプロ、アマを問わず、すべての犯罪者の夢である。
本書はこうした完全犯罪を達成した悪党たちを、
殺人者、泥棒、詐欺師、悪徳弁護士、各種悪党の5つの展示場に分類して、
その巧妙な手口を披露する、まことユニークなアンソロジー。
いわゆる名探偵に食傷した読者なら、この悪党本位の名作選を編集した
エラリー・クイーンの着想の妙に盛大な拍手を送るだろう。

日本版では「悪党見本市」が副題になっています。
はしがき、なかがき、あとがき、各作品の紹介文など、
非常にていねいな作りになっています、理想的な編纂書です。
完全犯罪の作品ばかりをあつかっていながら、
いずれもユーモラスで小粋な内容なのも好印象。
構想15年、クイーンによる渾身のアンソロジー。
その長きにわたる情熱を植えつけた人物への告発もすてき。

なお、本書は原書(32話)の全訳ではなく、いくつかの省略あり。

〈殺人者展示場〉から――
Q・パトリック「ある殺人者の肖像」
ベン・ヘクト「十五人の殺人者たち」
は「世界短編傑作集5」に、
アガサ・クリスティ「事故」
は「毒薬ミステリ傑作選」に、
ダシール・ハメット「悪党の妻」
は「ハメット傑作集3」(予定)に、
〈泥棒展示場〉から――
モーリス・ルブラン「白鳥の首のエディス」
は「リュパンの告白」に、収録するとのこと。

ハメットのは結局、出版されたのかな?
検索してもそれらしいものがヒットしないのですが(^^;


殺人者展示場

 郵便殺人 (Murder by Mail)
  ハワード・スプリング

記者ミルナーは同僚のシャスターを一方的にライバル視しており、
いつも一歩先を行く彼に暗い嫉妬心をためこんでいた。
やがてその鬱屈した感情が殺意へ変わり……。

 ミスター・ボウリーの日曜の晩 (Mr. Bowley's Sunday Evening)
  H・C・ベイリー

親切で善良なミスター・ボウリーは、
乱暴で身勝手な夫に悩む女性の相談に乗っていた。
善良たる彼の解決法とは?

 血の犠牲 (Blood Sacrifice)
  ドロシー・L・セイヤーズ

劇作家スケールズはその"芸術的"作品を
俳優兼興行主のドルーリーに大衆迎合の脚本に書きかえられ、
ヒットはしたものの、将来性は失墜し、恨みをおぼえていた。
そんな折、ドルーリーが交通事故に巻きこまれ、
早急に輸血が必要な事態に迫られるが――

 骨董商ミスター・マーカム (Mr. Markham, Antique Dealer)
  ジョン・ディクスン・カー

ラジオドラマの脚本。
骨董商のミスター・マーカムはゆすり屋でもあった。
ある晩、婚姻をひかえたカップルをゆすっている最中、
ついにマーカムは殺されてしまう。
しかし、犯人も被害者も法に裁かれることはなかった――

 殺人! (Murder!)
  アーノルド・ベネット

放蕩夫ジョンから逃げだしたエミリーを守るため、
ローマクス・ハーダーはジョンを射殺し、逃亡した。
この事件にたまたま居合わせた素人名探偵が乗りだすことに。


泥棒展示場

 ダイヤのカフスボタン (The Diamond Links)
  グラント・アレン

「クイーンの定員#021」にも選ばれています。
クレイ大佐は怪盗の原点とかなんとか。

 ラッフルズ罠にはまる (A Trap to Catch a Cracksman)
  E・W・ホーナング

怪盗ラッフルズがボクサーのチャンピオンの邸宅で仕事中、
いっぱい食わされ、昏倒したらしい。
真夜中の電話で助けをもとめられた相棒バニーはあわてて現場へ。
そこにボクサーや秘書たちも帰宅してしまう。
この絶体絶命の窮地をいかにして乗りきるのか?

んー、これどっかで読んだ気がするなぁ。

 不敗のゴダール (The Infallible Godahl)
  フレデリック・アーヴィング・アンダスン

科学的怪盗ゴダールもので人気を博す作家アーミストン。
ふとしたきっかけで知りあった青年ベンスンと意気投合した彼は、
厳戒に保管されたホワイトルビーにまつわる話を聞き、
それをゴダールならいかにして盗みだすかという挑戦を受けた。
アーミストンはゴダールにこの犯行を成功させられるのか?

 七十四番目のダイヤ (The Seventy-Fourth Diamond)
  エドガー・ウォーレス

ダイヤの収集家であるオランダ王侯がロンドンに滞在していた。
さっそく詐欺師たちが彼をカモにしようと動きだすが……。

 聖ジョカスタの壁掛け (The St. Jocasta Tapestries)
  ロイ・ヴィカーズ

深窓の令嬢フィデリティ・ダヴは盗賊団の頭目でもあった。
無類の価値がある聖ジョカスタの壁掛けに目をつけたが、
いかにして盗み、いかにして捌くのか、その方法とは?


詐欺師展示場

 催眠術 (A Personal Magnet)
  O・ヘンリー

催眠療法といかさまをめぐる物語。
10ページのなかで何度もひっくり返る展開ににんまり。

 強力無比座骨神経痛剤製薬会社(ビアレス・サイアタカ・カンパニー) (The Quagg Peerless Sciatacata Co.)
  ジョージ・・ランドルフ・チェスター

大道商人が売る座骨神経痛剤に目をつけたウォリンフォード。
いたってまともなやり方で会社を興そうとするが……。

ああ、なんだろう、すこぶるまともな事業なんですけどねぇ。

 大佐のお別れパーティ (The Colonel Givers a Party)
  エヴァレット・ロード・カースル

老人フラック大佐と青年ガーヴィの詐欺師コンビは負けがこみ、
滞在しているホテル代も捻出できない状況にあった。
そこで大佐が打ちだした起死回生の賭博とは?
Rogues' Gallery 1945 
The Great Criminals of Modern Fiction

「完全犯罪大百科 下」厚木淳訳 (創元推理文庫)
好きなように犯罪を犯したあげく、
まんまと法網をくぐって罰せられずにいられるものなら、
こんなすてきなことはないだろう。
完全犯罪――それはプロ、アマを問わず、すべての犯罪者の夢である。
本書はこうした完全犯罪を達成した悪党たちを、
殺人者、泥棒、詐欺師、悪徳弁護士、各種悪党の5つの展示場に分類して、
その巧妙な手口を披露する、まことユニークなアンソロジー。
いわゆる名探偵に食傷した読者なら、この悪党本位の名作選を編集した
エラリー・クイーンの着想の妙に盛大な拍手を送るだろう。


詐欺師展示場(続)

 サムとヤンキーの同盟者 (Sam and His Yankee Allies)
  エリック・ナイト

大戦中、英米協調に一役買おうとした老人サム。
若いアメリカ兵と出会い、ある行動を起こすのだが。
民話的というか落語的というか、なんとも愉快な物語。


悪徳弁護士展示場

 金策 (The Men of the Jimmy)
  メルヴィル・ディヴィスン・ポースト

悪徳弁護士ランドルフ・メースン譚。
誘拐事件を利用した金策がテーマ。
法の盲点をみごとに衝いた解釈にうなります。

 ケリハー事件 (The People Versus Kelleher)
  トマス・マクモロー

ニューヨーク。ギャングの思惑が入り乱れた選挙戦中、
対立する候補の陣営間で殺人事件が発生。
逮捕されたのはたまたまそばにいた無実の人間だが、
選挙への影響を考慮し、傍観に徹するリトル・アンビーだが。


各種悪党展示場

  追いはぎ
 ソールズベリ裁判 (The Salisbury Assizes)
  H・B・マリオット・ワトスン

辻強盗"早駆けのディック"が止めた馬車。
そこに乗っていたのは国王陛下の裁判所の判事殿だった!
しかしディックはこの状況に乗じて、判事になりすまし、
裁判長として法廷で事件を裁きはじめるのだった。

  贋造師
 真鍮の蛇 (The Brazen Serpent)
  R・オースティン・フリーマン

美術品の贋造師の物語。
ミステリもサスペンスもないのに味わい深い一品。
ソーンダイク博士ものではないです。

  密輸人
 陽動作戦 (The Red Herring)
  ウィリアム・ホープ・ホジスン

密輸業者でもあるゴールト船長。
目を光らせる税関吏たちとの化かしあい。

  密輸人
 海外電報 (The Cablegram)
  T・S・ストリブリング

ポッジォリ教授もの。
こちらも船上からの密輸がテーマ。
この話のタイトルも「陽動作戦」でいいですな(w

  すり
 愛国者、地下鉄サム (Thubway Tham, Thvilian)
  ジョンストン・マッカレー

愛すべき小男のすり"地下鉄サム"。
クラドック刑事(銭形役)とのやり取りがいい。
今回は戦時中での、どこかせつない攻防戦。

  山賊
 アンドルー・ラング三つの事件 (Adventures of Andrew Lang)
  チャールズ・J・フィンガー

賊アンドルー・ラングのストーリー。
こいつはこの本ではめずらしく素の悪性です。
法的に罪を断定できないすれすれの悪事をくり返します。

  モダン・ロビン・フッド
 盲点 (The Blind Spot)
  レスリー・チャーテリス

義賊"聖者"もの。
地下鉄駅で飛び込み自殺を図った男。
間一髪、それを助けた"聖者"サイモン・テンプラー。
事情を問いただすと、男は発明の特許を騙しとられて、
もう生活もままならない状況に陥ったという。
同情したサイモンは一肌脱ぐことに。

  ぺてん師
 ぺてん師エラリー・クイーン (Ellery Queen, Swindler)
  エラリー・クイーン

フンパーディンク…………宝石商
ジェームズ・グラント……店員の一人
ドロシー・グラント………その妻
M・ジャレット……………シカゴの一流宝石商
エラリー・クイーン………探偵兼ぺてん師
ニッキ・ポーター…………その秘書

自作の映画化の打ち合わせでシカゴに在中していた
エラリイとニッキイの前にあらわれたのは、
宝石商に巧妙な手口で全財産を奪われた店員グラントとその妻。
切実な相談を受けたエラリイは
グラント夫妻が騙し取られた4000ドルを取り返すことを約束。
目には目を、ぺてんにはぺてんを、
エラリイはニッキイを婚約者として宝石商に乗りこむことに。
ぺてん師エラリイのお手並みやいかに?

  トランプいかさま師
 ショーダウン (The Showdown)
  パット・ハンド

掌編。"ケアフル・ジョーンズ"のポーカー勝負の一話。

  背任横領者
 柳の並木道 (The Willow Walk)
  シンクレア・ルイス

宗教かぶれの隠者ジョンと
社交的で人望のあついジャスパー。
ふたりの双生児はひとりの聡明な人間によって演じられていた。
その目的はありふれた金銭目的のもの。
しかしその代償ははかりしれないものだった……。

  組織暴力団
 街を求む (Town Wanted)
  フレドリック・ブラウン

掌編。やくざの縄張り争そいの一話。
うん、最後の2節の迫力がすごいわ。
The Literature of Crime 1951 
Stories by World-Famous Authors

「犯罪文学傑作選」龍口直太郎訳 (創元推理文庫)
スタインベック、フォークナー、パール・バック、
ディケンズ、ハックスレー……
ほとんどすべての世界的に有名な作家は、犯罪文学に貢献してきました。
つまり著名な作家、当代えりぬきの巨匠たちは、
だれもがミステリ作家なのであります。
そのことを21回も繰り返して証明するために、
エラリー・クイーンがあなたに贈るアンソロジー。

冒頭に「エラリー・クイーンよりの手紙」があります。
なお、原書では26篇で、本書は21篇。足りない5編――
 ラドヤード・キップリング「パンベ船長の限界」
 マージェリー・シャープ「ロンドン夜話」
 ジェイムズ・グールド・コズンズ「誤算」
は「ミニ・ミステリ傑作選」に、
 アーネスト・ヘミングウェイ「殺人者」
は「世界短編傑作選4」に、
 ギ・ド・モーパッサン「手」
は「怪奇小説傑作集4」にそれぞれ収録されているので割愛だって。

ちなみに忠実に26篇を収録した、
「文芸推理小説26人集(全2巻)」ってタイトルもあります。
そもそもこれも創元社なんだけどね。


 死人に口なし The Post-Mortem Murder
  シンクレア・ルイス(Sinclair Lewis)

准教授があるきっかけで死に瀕した見知らぬ老人から
「世に出してくれ」と托された詩集と手紙。
最初、彼は見向きもしなかったが、
いざ目を通すと黄金にも比すべき傑作ぞろい。
さっそく論文を書き上げ発表するや、
一大センセーションを巻きおこすのだが……。
アメリカ社会の英雄崇拝を諷刺したファース。

 身代金 Ransom
  パール・S・バック(Pearl Sydenstricker Buck)

愛児を金銭目的で誘拐されてしまった夫妻の物語。
バックは昔読んだ(読まされた)「大地」が圧巻だったなぁ。

 園遊会まえ Before the Party
  W・サマセット・モーム(W. Somerset Maugham)

園遊会に招かれ、身支度をいそぐスキナー家。
8ヶ月前に娘婿ハロルドがボルネオで熱病で死亡しており、
一家は喪に服していたが、ある噂が流れていた。
ハロルドはアルコール中毒による錯乱で自殺したというのだ。
寡婦ミリセントを問いつめ、表れた震恐たる事実とは。

 「シャ・キ・ペーシュ」亭の殺人 The Murder in The Fishing Cat
  エドナ・セント・ビンセント・ミレー(Edna St. Vincent Millay)

パリですたれたレストランを営むジャン・ピエールの一話。
やられた、コメディと思わせておいて――(;´Д`)

 陪審員 The Juryman
  ジョン・ゴールズワージー(John Galsworthy)

地方巡回裁判に召喚されたボースンゲイト氏。
陸軍兵士が自殺を図ったかどで裁かれていた。
妻と離れているのにがまんができなかったという
男の言い分がボースンゲイト氏を呪縛するが。

いつだったか「林檎の樹」のミーガンにも恋焦がれた私。
氏の描く女性は清純すぎてこまる……きめぇ(w;

 殺人 The Murder
  ジョン・スタインベック(John Steinbeck)

気のいい夫ジムとおとなしい異国の妻イェルカ。
暴力――殺人から生まれる理解と幸福。

 男ざかり Prime of Life
  ルイス・ブロムフィールド(Louis Bromfield)

男ざかりに絞首刑に処されたホーマーの、
正真正銘のアメリカ的な欲情と犯罪の物語。

 追いつめられて Hunted Down
  チャールズ・ディケンズ(Charles Dickens)

「復刻EQMM」にも収録。

 ポールのばあい Paul's Case
  ウィラ・キャザー(Willa Cather)

ハイスクールの問題児ポールの物語。
舞台・劇場の世界に住む彼には
現実は軽蔑しか生みださなかったが……。

 盗まれた白象 The Stolen White Elephant
  マーク・トウエイン(Mark Twain)

シャム国からイギリス女王への贈り物の白象が、
運搬中に立ち寄ったアメリカで盗まれてしまった。
そしてはじまる大捜査と大騒動。
な、なんて豪快な作品っ(^^;

 モナ・リザの微笑 The Gioconda Smile
  オールダス・ハックスレー(Aldous Huxley)

「黄金の十二」にも収録。

 証拠の手紙 The Letters in Evidence
  C・S・フォレスター(C. S. Forester)

不貞を働く妻の11通の手紙でつづられる物語。
でもこれ、証拠書類なんですよね……。

 散髪 Haircut
  リング・ラードナー(Ring Lardner)

理髪師が語る女ぐせの悪い冗談屋ジムの一生。

 すばらしい技巧家 An Ideal Craftsman
  ウォルター・デ・ラ・メア(Walter de la Mare)

真夜中、少年はわが家の冒険へと踏みだした。
そこで遭遇したひとりの女とひとつの死体――

 安楽椅子(キャットバード・シート)の男 The Catbird Seat
  ジェイムズ・サーバー(James Thurber)

F&S商会の社長に取り入り、特別顧問となったバロウズ夫人。
しかし彼女の強引傲慢な裁断に会社の将来を憂いたマーティン氏は
彼女を"消す"ある計画を練りだした。
倒叙ものだけど、手際がクールでスマート。
タイトルはノースリーの打者の心境だそうで(w

 マークハイム Markheim
  ロバート・ルイス・スティーヴンスン(Robert Louis Stevenson)

金目当てで質商人を殺害したマークハイム。
いざ死体を前にしてすっかり茫然自失してしまった
彼のまえにひとりの男が現われた。
それは悪魔なのか、それとも――

これはかっこいいわ、尊厳のなんたるかを見せつけられた。
本書のマイベスト。

 ブリシャー氏の宝 Brisher's Treasure
  H・G・ウェルズ(H. G. Wells)

若いころは伊達男だったと語る独身のブリシャー氏。
彼はある女性と婚約にまでいたったが、
彼女の家の庭で偶然、宝(銀貨)を発掘し状況は一変する……。

 ユーモア感 Sence Of Hymour
  デイモン・ラニヨン(Damon Runyon)

ユーモア感あふれるいたずらもののジョーカー・ジョー。
町中の人たちにいたずらを仕掛けては笑いをさそっていたが
ついに冗談の通じぬ相手との抗争に発展する。
化かしあいのすえ、最後に笑うのは?

 評決 The Verdict
  フランク・スウィナトン(Frank Swinnerton)

ゆきつけのクラブでの昼食会に集まった3人の女性。
話題は身近で起きた殺人事件、闇の真相。

 アン・エリザベスの死 Guilty
  ファニー・ハースト(Fannie Hurst)

ある懸念を抱え高齢出産にのぞんだ夫妻、
そして生まれたアン・エリザベスに表れる徴候……。
さかな、さかな、さかな――(;´Д`)

 修道士(マンク) Monk
  ウィリアム・フォークナー(William Faulkner)

殺人犯・野生児マンクの生涯の行跡。
動物とおなじく死のなにものたるかが
理解できない人間のコーパス・デリクタイとは。
アンクル・アブナー譚を彷彿とさせる、格調高い芸術品です。
Ellery Queen's International Case Book 1964 

「エラリー・クイーンの国際事件簿」飯城勇三訳 (東京創元社)
美味なる犯罪を求めて世界を周遊する名探偵エラリー・クイーン。
行く先々で供される珍味佳肴は異彩を放つものばかり。
フランスで名警部の秘話に耳を傾け、日本の帝銀事件に仰天し、
聖地エルサレムの未解決事件に真相提示を試みる――。
『エラリー・クイーンの国際事件簿』『事件の中の女』の2集に併せて、
ハリウッドを巡る摩訶不思議な「テイラー事件」、
ファイロ・ヴァンスひいてはエラリー・クイーン誕生の契機となった
エルウェル事件を描く「あるドン・ファンの死」を収録する、犯罪小説集成。

エラリー・クイーン生誕100年記念出版!
ショートショートの犯罪実話集。
1968年「真鍮の家」の作中冒頭でエラリイが――

地球上をまたにかけて豪遊旅行をやっていた。
諸国の警察署長に会っては、犯罪の美食をご馳走になって歩き、
いろいろと珍奇な犯罪学の料理を味わった

――と描かれているのが本書(国際事件簿)にあたるもよう。
一人称で表現されてるのが貴重です。
なお、「私の好きな犯罪実話」を除く作品は
リーが単独で筆をとっているようで、この辺りも注目です。

●エラリー・クイーンの国際事件簿
第1話「エル・プエルトの美女」(南スペイン)
第2話「東京の大銀行強盗」(日本)
第3話「フォス警部最後の事件」(ノルマンディー)
第4話「ブエノスアイレスの屠畜人」(アルゼンチン)
第5話「アダモリスの詐欺師」(ルーマニア)
第6話「絞殺されたオランの花嫁」(アルジェリア)
第7話「死の顎」(メキシコ)
第8話「カーリーの呪い」(インド)
第9話「バルカン風連続犯罪」(ユーゴスラヴィア)
第10話「ナショナル・ホテルの謎の銃弾」(エクアドル)
第11話「両眼を失った青年」(パリ)
第12話「マニラに死す」(フィリピン)
第13話「アボリジニの中の死」(西オーストラリア)
第14話「浮気娘の奇妙な病」(チェコスロバキア)
第15話「クルーピエの犯罪」(モンテカルロ)
第16話「アフリカのラヴ・ストーリー」(モロッコ)
第17話「ハーレムの秘密」(トルコ)
第18話「上海の銃撃」(中国)
第19話「赤い処女」(マドリード)
第20話「聖地の受難」(エルサレム)

ノンフィクションとはいえ、
ただ事実関係を書きつらねるだけじゃなく、
ミステリの形式にもそっているのがさすが。
エラリイが日本に来てタタミマットの上で
足をしびれさしている姿がとてもいい(w

●私の好きな犯罪実話
第1話「テイラー事件」
第2話「あるドン・ファンの死」

ハリウッドを巡る摩訶不思議な「テイラー事件」。
アメリカってどでかい事件でも未解決って多いね。
いや、ごく一部が強烈に焼きついてるだけなんだろうけど。

「あるドン・ファンの死」はファイロ・ヴァンス、
ひいてはエラリー・クイーン誕生の契機となった
(「ベンスン殺人事件」の原形といわれる)エルウェル事件の話。
クイーンがヴァンダインについて語るだけでも興味深甚。

この1956年「私の好きな犯罪実話」は
副題を「世界の著名ミステリ作家による犯罪実話集」といい、
そのなかでクイーンが担当したのが上の2作。
後者は「クイーンのフルハウス」の作品とは別ものです、念のため。

●事件の中の女
第1話「〈孤独な心〉の跡」
第2話「検察側の証人」
第3話「「女王陛下より沙汰あるまで拘留」」
第4話「アイリーン・シュレーダーの秘密」
第5話「美しきラトビア人」
第6話「黄色い糸の謎」
第7話「エレーン・ソウレの奇妙な事件」
第8話「夢探偵」
第9話「茶の葉に現れた死」
第10話「大きな耳を持つ男」
第11話「雪だまりの中の女」
第12話「毒入りウィスキー事件」
第13話「驚くべきパターソン夫人」
第14話「絹靴下の女」
第15話「吊された女」
第16話「死体なき殺人」
第17話「ハムステッドの美しき殺人者」
第18話「愛の聖堂」
第19話「ロンダ・ベル・マーティンの謎」

女性がらみの犯罪実話集。
犯人だったり被害者だったり探偵だったりと、
さほど明確に女性にウエイトがあるわけでもなく。
なにかしらはね、ふつう関わっているものですし。
とはいえフィクションを凌轢するてん末もあったりで唸ったり。
不謹慎ながらおもしろい事件が多いので、
作り話に飽きたりしていたら気軽に手にしてみましょう。
Ellery Queen's Poetic Justice 1967 
23 Stories of Crime, Mystery, and Detection
by World-famous Poets from Geoffrey Chaucer to Dylan Thomas

「犯罪は詩人の楽しみ」柳瀬尚紀訳 (創元推理文庫)
チョーサー,スコット,ロード・バイロン,
ホイットマン,イエーツ,エイケン,ベネ……
これらの名高い詩人たちには,何か共通するものがあるのか?
そう,彼らはみな,犯罪もの,あるいは探偵もの,
あるいはサスペンスの短編を書いているのだ。
ホラティウスも語ったように,
「詩人はつねにあらゆることを思うがままに企ててきた」とすれば,
ミステリを書いても不思議はない。
ディズラエリィがかつていったように,
「裁きは行動する真理なのだ」――
そして探偵物語の真の性格のこれほど適切な定義はない。
さあ,この詩人たちの仲間入りをしてはどうだろう?
――エラリー・クイーン敬白

副題は「詩人ミステリ集成」です。
原書は23編収録ですが、本書は18編。欠落した5編は――

ポオ「群集の人」は「ポオ小説全集2」に、
ロバート・ルイス・スティーヴンソン「マークハイム」と
ミレー「『シャ・キ・ペーシュ』亭の殺人」は「犯罪文学傑作選」に、
G・K・チェスタトン「古書の呪い」は「ブラウン神父の醜聞」に、
ディラン・トマス「真実の物語」は「ミニ・ミステリ傑作選」に、
それぞれ収録とのこと。
重複を避けるのもいいけど、全訳にもこだわってもらいたい!

 免罪符売りの話 (An excerpt from THE PARDONER'S TALE)
  ジェフリー・チョーサー (Geffrey Chaucer)

罰当たりな3人の放蕩者が町はずれの森で金貨の山を発見。
その分け前をめぐっての因果な物語。
600年以上前に書かれた話なんですってよ!

 ウェイクフィールドの牧師 馬を売ること
 (THE VICAR OF WAKEFIELD Sells a Horse)
  オリヴァー・ゴールドスミス (Oliver Goldsmith)

長編小説(?)からの抜粋らしい。
それだけによくわかんない部分もあるけど、
ようするに牧師一家がふんだりけったりのぺてんに遭う一節。

 ふたりの牛追い (THE TWO DROVERS)
  サー・ウォルター・スコット (Sir Walter Scott)

ふたりの牛追い、ロビンとハリー。
民族も気質もちがったふたりだが、親友同士だった。
しかしささいな行きちがいから喧嘩になってしまい、
ついに殺人沙汰にまで発展する。習慣が生んだ悲劇の事件。

 ダーヴェル (DARVELL)
  ジョージ・ゴードン、ロード・バイロン (George Gordon,Lord Byron)

オーガスタス・ダーヴェルの奇妙な遺言の話。
こいつもなんともようわからん話だけど、
編者の注釈でそういうもんなのかといちおうなっとく。
フランケンシュタインでおなじみの、
あの湖畔での競作に因するエピソードも面妖。

 ペリゴリーの公証人 (THE NOTARY OF PERIGUEUX)
  ヘンリー・ワズワース・ロングフェロー (Henry Wadsworth Longfellow)

女房の尻に敷かれているしがない公証人のお話。
じっさい、落語のような小噺です(w

 一度きりの邪な衝動! (ONE WICKED IMPULSE!)
  ウォールト・ホイットマン (Walt Whitman)

悪徳弁護士アダム・コヴァートは
遠縁の男マーシュの遺産の後見人という立場を悪用し、
マーシュの娘エスターに言い寄っていた。
その事実に激昂したエスターの兄フィリップは
偶然、弁護士と町で顔を合わせた際、衝動的に殺害してしまう。
シンプルなゆえ、フィリップは拘束されるも証拠不充分で釈放。
法的裁きを逃れた彼なのだが――

これぞ"誌的裁き"というべき美しくこうごうしい結末。
注釈の後日談があるほうよりこっちが好きだなぁ。

 弁護士初舞台 (MY MAIDEN BRIEF)
  W・S・ギルバート (W. S. Gilbert)

法廷ミステリ。老婦人にかけられたスリの嫌疑。
その弁護を務めるホレス・ペンディトンの初舞台。

うふん、これが現実的なんでしょうねー。

 三人のよそ者 (THE THREE STRANGERS)
  トマス・ハーディ (Thomas Hardy)

嵐の夜。田舎の農村の一軒家で
赤ちゃんの誕生祝いと命名式のパーティが開かれていた。
その最中、次々におとずれた3人の見なれぬ客人たち。
どこか奇妙な振るまいに隠された真相とは?

 宿無しの磔刑 (THE CRUCIFIXION OF THE OUTCAST)
  ウィリアム・バトラー・イエーツ (William Butler Yeats)

宿無しの歌人が修道士たちから磔刑に処されるまでの一幕。

 インレイの帰還 (THE RETURN OF IMRAY)
  ラドヤード・キプリング (Rudyard Kipling)

ストリックランド警部もの。
突然、なんの前ぶれもなく失踪した好男子インレイ。
19世紀のインドで起きたひとつの事件……。

 レインズ法 (A RAINS LAW ARREST)
  ジョン・メイスフィールド (John Masefield)

禁酒時代、もぐり酒場の風景。

 恐喝の倫理 (WHITEMAIL)
  ジョイス・キルマー (Joyce Kilmer)

人望厚い博愛主義の改革家の結婚詐欺を
すっぱ抜いた記者スパイク・リチーの恐喝の倫理。

狙いすました最後の一文もナイス☆

 スミスとジョーンズ (SMITH AND JONES)
  コンラッド・エイケン (Conrad Aiken)

夜道を歩く瓜ふたつのスミスとジョーンズ。
その哲学的で幻想的な会話の妙(いかにも詩人が好きそうな)

 死後の証言 (TESTIMONY AFTER DEATH)
  マーク・ヴァン・ドーレン (Mark Van Doren)

画家の息子ラファエルが死体となって発見された。
その死に顔はふしぎに美しく、なにかを語っているようだった――

 シュタインピルツ方式 (THE STEINPILZ METHOD)
  ロバート・グレイヴズ (Robert Graves)

シュタインピルツ博士の堆肥農法の虜となった夫妻の一話。

 いかさま師 (A GENTLEMAN OF FORTUNE)
  スティーヴン・ヴィンセント・ベネ (Stephen Vincent Benet)

養老施設で暮らす偉大ないかさま師ヴィアリー氏。
若いカップルがカモにされていることを見抜いた氏だが……。

 三無クラブ (THE THREE D'S)
  オグデン・ナッシュ (Ogden Nash)

女子学院に入学したおてんば娘ヴィクトリアは
無謀、無鉄砲、無二の偉業をなしとげた者が入会できる
三無クラブの試験を受けることに。

出だしは軽妙なのに、怪談なのね……。

 仲間 (THE CLUB)
  ミュリエル・ルーカイサー (Mariel Rukeyser)

事故に見せかけ首尾よく妻を殺害した夫。
人殺しの仲間入りをした彼の運命とは――
Ellery Queen's Minimysteries 1969 

「ミニ・ミステリ傑作選」
吉田誠一・永井淳・深町眞理子・中村保男訳 (創元推理文庫)
いつでもどこでも、どこから読んでも楽しめる
67編のショート・ショートを収めた、
まさしくクイーン・サイズの一大パッケージ。
クイーンをはじめ、ブロック、ダンセイニ、サキ、セルヴァンテス、
ディケンズ、デュマ、モーパッサン、ヴォルテール、カー、クェンティン、
スタウト、バウチャー等、粒ぞろいのミニ・ミステリ大集成!

ショートショート集。
原書の副題は――

70 short-short stories of crime, mystery, and detection

――といい、70話が収録されています。日本では67編。
足りない3話は、

フレドリック・ブラウン「町を求む」
コーネル・ウールリッチ「だれかが電話をかけている」
ジョルジュ・シムノン「クロワ・ルス区の小さな家」

で、それぞれ、
「まっ白な嘘」「アイリッシュ短編集3」「13の秘密」にて
すでに収録されているため、重複を避けたとか。
SS3本くらい重複したってだれも文句いわねーよ!ケチンボ!
(そもそも、かぶってるのがこの3本だけとは思えないw)

ジャンルは、ミニ犯罪小説(クライム)、ミニ・ミステリ、ミニ・クラシック、
ミニ・シャーロッキアーナ、ミニ探偵(デテクション)、幅広いです。
序文にはクイーンの饒舌な"ミニントロダクション"あり。

クイーン作のSSもあり、タイトルは「角砂糖」、
「クイーン検察局」に収録されてるやつね。

いつでもちょっとした合間にたのしめる手軽な一冊です。

一番気に入ったのはニュートン・ニューカークの
「探偵業の起源」だなあ、これおもしろすぎる。ユニーク。
アダムとイヴの最初のミニ・ミステリなのですが、
本書を開くたびにこの話は再読してましたよ(w


では、心を鉄にして目次を起こそう……。

 最初のミニ・ミステリ

「探偵業の起源」 Origin of the Detective Business
 ニュートン・ニューカーク(Newton Newkirk)

 ミニ犯罪小説

「百万に一つの偶然」 The Unreckonable Factor
  サミュエル・ホプキンス・アダムス(Samuel Hopkins Adams)
「ハリウッド式殺人法」 Murder a la Hollywood
 スティーヴ・アレン(Steve Allen)
「タイミングの問題」 A Matter of Timing
 シャーロット・アームストロング(Charlotte Armstrong)
「逆の事態」 The Way Round
 フィリス・ベントレー(Phyllis Bentley)
「生きている腕輪」 The Living Bracelet
 ロバート・ブロック(Robert Bloch)
「保安官、決断を下す」 The Sheriff Decides
 ロアーク・ブラッドフォード(Roark Bradford)
「ウェディング・ドレス」 The Wedding Dress
 ルイス・ブロムフィールド(Louis Bromfield) 
「検死審判」 Coroner's Inquest
 マーク・コネリー(Marc Connelly)
「カードの対決」 The Showdown
 トマス・B・コステイン(Thomas B. Costain)
「牧師の汚名」 Clerical Error
 ジェイムズ・グールド・カズンズ(James Gould Cozzens)
「演説」 The Speech
 ロード・ダンセイニ(Lord Dunsany)
「隣人」 The Neighbors
 ジョン・ゴールズワージー(John Galsworthy)
「わたしの目の黒いうちは」 Over My Dead Body
 アントニー・ギルバート(Anthony Gilbert)
「月の光」 Moonshine
 W・ハイデンフェルト(W. Heidenfeld)
「詐欺師カルメシン」 Karmesin, Swindler
 ジェラルド・カーシュ(Gerald Kersh)
「パンベ・セラングの限界」 The Limitations of Pambe Serang
 ラドヤード・キップリング(Rudyard Kipling)
「豹男の話」 The Leopard Man's Story
 ジャック・ロンドン(Jack London)
「信用第一」 Robbie Always Pays
 フィリップ・マクドナルド(Philip MacDonald)
「パール・バトンはいかにして誘拐されたか」 How Pearl Button Was Kidnaped 
 キャサリーン・マンスフィールド(Katherine Mansfield)
「最善の策」 The Best Policy
 フェレンツ・モルナール(Ferenc Molnar)
「殺すか殺されるか」 Kill or Be Killed
 オグデン・ナッシュ(Ogden Nash)
「スタジアムに死す」 A Death in the Stadium
 ロバート・ネイサン(Robert Nathan)
「良心」 Conscience
 エルマー・ライス(Elmer Rice)
「真実の物語」 The True Story
 ディラン・トーマス(Dylan Thomas)
「Rien Ne Va Plus」 Rien Ne Va Plus
 アレグザンダー・ウールコット(Alexander Woollcott)

 ミニ・ミステリ

「婚礼の池」 Bridal Pond
 ゾーナ・ゲイル(Zona Gale)
「壁の中へ」 Through the Wall
 ヴィクター・カニング(Victor Canning)
「青ペンキの謎」 The Blue Wash Mystery
 アンナ・カサリン・グリーン(Anna Katharine Green)
「幽霊屋敷」 Haunted Ground
 オリヴァー・ラ・ファージ(Oliver La Farge)
「ある老人の死」 Death of an Old Man
 アーサー・ミラー(Arthur Miller)
「ダヴ・ダルセットの明察」 Dove Dulcet Hitches His Wagon
 クリストファー・モーリイ(Christopher Morley)
「開かれた窓」 The Open Window
 "サキ"(H・H・マンロー) “Saki”(H. H. Munro)

 ミニ・クラシック

「絶妙な弁護」 An Ingenious Defense
 作者不詳(Anonymous)
「サンチョ・パンサの名探偵ぶり」 Sancho Panza, Detective
 ミゲル・デ・セルヴァンテス(Miguel de Cervantes)
「子守歌」 Hush-a-bye, My Baby
 アントン・チェーホフ(Anton Chekhov)
「手袋」 The Pair of Gloves
 チャールズ・ディケンズ(Charles Dickens)
「ナイフの男」 The Man of the Knife
 アレクサンドル・デュマ(Alexandre Dumas)
「復讐」 Vendetta
 ギイ・ド・モーパッサン(Guy de Maupassant)
「正義の費用」 The Expense of Justice
 ギイ・ド・モーパッサン(Guy de Maupassant)
「わたしの懐中時計」 My Watch
 マーク・トゥエイン(Mark Twain)
「犬と馬」 The Dog and the Horse
 ヴォルテール(Voltaire)

 ミニ・シャーロッキアーナ

「これ以上短縮できない探偵小説、 An Irreducible Detective Story;
 または、髪の毛一本が運命の分れ目、 or, Hanged by a Hair;
 または、超ミニ殺人ミステリ or, A Murder Mystery Minimized」
 スティーヴン・リーコック(Stephen Leacock)
「パラドール・チェンバーの怪事件」 The Adventure of the Paradol Chamber
 ジョン・ディクスン・カー(John Dickson Carr)
「アダムとイヴ失踪事件」 The Case of the Missing Patriarchs
 医学博士ローガン・クレンデニング(Logan Clendening, M.D.)
「探偵の正体」 A Case of Identities
 マーガレット・ノリス(Margaret Norris)

 ミニ探偵

「見えないドア」 The Unseen Door
 マージェリー・アリンガム(Margery Allingham)
「消えた暖房炉」 The Case of the Pinchbeck Locket
 エリック・アンブラー(Eric Ambler)
「イニシャル入り殺人」 The Initialed Case
 ローレンス・G・ブロックマン(Lawrence G. Blochman)
「火星の犯罪」 Crime On Mars
 アーサー・C・クラーク(Arthur C. Clarke)
「ペントハウスの殺人」 The Simplicity of the Act
 ジョージ・ハーモン・コック(George Harmon Coxe)
「川べりの犯罪」 The Crime by the River
 エドマンド・クリスピン(Edmund Crispin)
「殺人のメニュー」 Recipe for Murder
 C・P・ドンネルJr.(C. P. Donnel, Jr.)
「ダウンシャーの恐怖」 The Downshire Terror
 アンドリュウ・ガーヴ(Andrew Garve)
「ティー・ショップの暗殺者」 The Shop Assassin
 マイケル・ギルバート(Michael Gilbert)
「シカゴの夜」 Chicago Nights' Entertainments
 ベン・ヘクト(Ben Hecht)
「二十年後」 After Twenty Years
 O・ヘンリー(O. Henry)
「アプルビイ警部最初の事件」 Inspector Appleby's First Case
 マイケル・イネス(Michael Innes)
「殺人のにおい」 The Scent of Murder
 ロックリッジ夫妻(Frances and Richard Lockridge)
「ビーグルの鼻」 The Nose of a Beagle
 アーサー・ポージズ(Arthur Porges)
「角砂糖」 A Lump of Sugar
 エラリー・クイーン(Ellery Queen)
「土曜の夜の殺人」 Death on Saturday Night
 パトリック・クェンティン(Patrick Quentin)
「馬をのみこんだ男」 The Man Who Swallowed a Horse
 クレイグ・ライス(Craig Rice)
「ロンドン夜話」 London Night's Entertainment
 マージェリー・シャープ(Margery Sharp)
「サンタのパトロール」 Santa Claus Beat
 レックス・スタウト(Rex Stout)
「神隠し」 As If By Magic
 ジュリアン・シモンズ(Julian Symons)

 最後のミニ・ミステリ

「決め手」The Ultimate Clue
 アントニー・バウチャー(Anthony Boucher)
Japanese Golden Dozen 1977 

「日本傑作推理12選 第1集」 (光文社)
世界の推理作家の最高峰で、
名アンソロジストとして知られる、エラリー・クイーンが、
初めて日本人作家の作品を集めて編纂した"Japanese Golden Dozen(ジャパニーズ ゴールデン ダズン)"。
12の珠玉の短編は、さまざまなタイプの探偵作法を読者に提供し、
あらゆる型の犯罪を網羅する!
クイーンの、鋭く暗示的で、ユーモアに富んだ紹介、評論つき。

クイーンの解説(原文も!)付きの日本短編集。
(1977.1.28 NY州ラーチモントにて)
クイーンといってもリーは死去しているのでダネイね。
ともかく、クイーンが目を通して選別した国産作品集なので
妙に高揚というか、感慨があるのですよ。
では個別に収録作品をざっと紹介します。

 噂を集め過ぎた男 Too Much About Too Many 石沢 栄太郎

忘年会のさいちゅうに発生した毒殺事件。
犠牲者は控えめながら信望がある組織の中立的な人物だった。
その彼がなぜ殺されてしまったのか? "待つ捜査"がクール。

 奇妙な被告 The Cooperative Defandant 松本 清張

事件は単純にみえた。
悪評高い金貸しの老人が、借金苦に悩む若い男・植木寅夫に殺されたのだ。
植木は自白をしており、殺害の経緯の説明も筋が通っている。
主人公の弁護士は国選でこの事件をしぶしぶ引き受けたが、
植木は前述をひるがえし、自白は担当警察官に強要され、
自分は無罪だと主張しはじめるのだが……。 社会派だねぇ。

 死者の便り A Letter from the Dead 三好 徹

新聞記者の主人公のもとに一通の手紙が舞いこむ。
自分は三途の川のほとりからこの手紙を書いている、
自分は殺されたのに事故自殺と判断されたのが無念で成仏できない、
というのだ。主人公は興味を覚え、単独で調査を試みるが――

 魔少年 Devil of a Boy 森村誠一

んー、これはどうも説明しにくいなぁ。パス(マテ
有名な作品だし。
クイーンがこれを選んだ、ってのもニヤリとさせるね。

 断崖からの声 Cry from the Cliff 夏樹 静子

海辺に住む彫刻家夫妻をめぐる恋物語。
時間差トリックのハウダニット。

 優しい脅迫者 The Kindly Blackmailer 西村 京太郎

床屋が舞台。理髪店を運営する主人公はある日、
急に跳びだしてきた園児の女の子をひき逃げし、死なせてしまう。
おびえながらも足はつかなかったが、ひとりの客が訪れ事態は一変する。
彼はこの事故を目撃していたのだ。そして脅迫がはじめるのだが……。

うーん、たしかに優しいけどさぁ、園児の家族はどうなるのよ。

 証拠なし No Proof 佐野洋

自社ビルの屋上。総務課員全員での記念写真の撮影時。
シャッターを担当した若い社員が、いたずらで猿のお面を披露。
みんなのおどろいた表情を撮ろうとしたのだ。
ところが、彼の上司が文字通り死ぬほどおどろき、
心臓発作で死亡してしまった!はたしてこれは犯罪なのか?
不能犯、過失犯、そして正当防衛の法的解釈が最高な一話。
これが一番好きです(w

 海からの招待状 Invitation from the Sea 笹沢 佐保

"海"と署名された豪華ホテルへの招待状が男女5人に配られた。
ところが招待主は姿を現さない。
なぜこの5人が選ばれたのか。共通点は?
プロットはありがちですが、ロマンティックなミステリ。ひゅ〜。

 複顔 Facial Restoration 草野 唯雄

ごみ収集所でドクロが発見される。当然、身元は不明。
そこで警察は頭蓋骨研究の権威に複顔を依頼するが――
怪奇じみてて、美しい、けれど現実的な物語。

 黄色い吸血鬼 The Vampire 戸川 昌子

吸血鬼と血を供給する寮生と血液銀行。
伝奇ものかと思わせておいて――

 加えて、消した Write In , Rub Out 土屋 隆夫

妻に自殺された男の物語。タイトルがいい。
漢字ミステリといえるもので、そこが気にいったのかな。
翻訳でもたまに原文が載ってるのって、
こういう活用されるってわかっちゃうからむずかしいね。

 如菩薩団 Perfectly Lovely Ladies 筒井 康隆

ブラックユーモアな強盗団を描いた作品。
すでにおなじみな観があるんだよなぁ、この作家。

クイーンの金科玉条が垣間見れる良質作品集です。
Japanese Golden Dozen 1977 

「日本傑作推理12選 第2集」 (光文社)
12の短編は、その巧妙なプロットと息もつかせぬサスペンスにより、
東洋と西欧の推理小説間に横たわるギャップを埋めるものとなった。
……日本の推理小説はいまや推理小説としての要素を
すべて兼ね備えた最高の水準にまで至っているのである。
(クイーンの解説より)
――推理界の巨匠から世界的水準と折り紙をつけられた名作集(アンソロジー)

序説「東洋と西欧の推理小説間に横たわるギャップを埋めるもの」
1977年8月 ファイア・アイランド・シービュー(別荘)にて

 駆ける男 The Running Man 松本清張

由緒ある旅館と離れの料理屋をつなぐ急勾配の180メートルの歩廊。
この歩廊を宿泊客の老人が全速力で駆けぬけ、
心臓発作で死亡するという事件が発生。
老人は食事中になぜとつぜん走りだしたのか?

んー、なんだかなあ。ハシリドコロ【走野老・莨苔】なんてなあ。
意味ありげな蒐集狂もこれを拾うためだけの存在だし、
そもそもそんな重要な証拠をうっかり落とすな(w
動機にしてもお得意の社会派的教訓も見当たらない。

 滑走路灯 The Runway Lights 夏樹静子

街中で思いがけず昔の恋人碧川に出くわした志保子。
彼の様子がおかしかったが、やがてその理由を語りだした。
彼は身勝手な元妻に人生を台なしにされたとして殺害した直後だったのだ。
周到にアリバイを用意してきたが、志保子に出会ったことで水の泡となり、
後生だから黙っていてくれという。
志保子は同情し承知しかけたが、
裏にひそむ事情を看破し、やはり告発することに。
しかし、簡単にはできなかった。
なぜなら彼女もまたアリバイを必要としていたから――

死角がない良作。心証の変化の流れがあざやか。

 凍った時間 Frozen Time 結城昌治

横浜で生まれ育ったアメリカ人諜報員アルフレッド・ベイリーは
直属の上司ロジャー・ブラウンに、
10日前に行方不明になった同僚ハリー・ハーロレーの捜索をたのまれた。
さっそく仕事にとりかかるベイリーに待ちうける運命とは?

スパイもの。凍りつくような心理サスペンスが味わえます。

 五島・福江行 Journey to Fukue City 石沢英太郎

理髪店主が殺された。従業員のひとりが犯行を自供。
店主には盲目で唖の連れ子がおり、
その娘が店主に襲われているところを目撃し
揉みあいの末に殺害にいたったという。
しかし、連れ子もまた自分がやったと自白をして……。

クイーンもまた人情と旅情に魅せられたもよう(^^ヾ

 殺意のまつり A Festival of Murder 山村美紗

ありきたりな殺人事件が発生した。
容疑者は無罪を叫びつづけたが服役はまぬがれなかった。
その20年後、我こそが犯人であると名乗り出た男がいた。
男は事件が時効になったので、
ようやく誤判で苦しんでいる無実の男の救済を決心したのだ。
しかし、事態は思わぬ方向へ――

これはすごいぞ、爆笑したよ(w まさに殺意のお祭り状態!

 柴田巡査の奇妙なアルバイト Moonlighting 西村京太郎

柴田巡査は冬場だけ刑務所で過ごしたいという
ホームレスの願いを聞き入れ、ひと役買うことに。
まず柴田巡査が警ら中に万引きをし、
その罪をホームレスが被るというもの。
品物は返却するので店側に被害はなく、柴田巡査は点数を稼げ、
ホームレスも寒い冬を無事に過ごせるという寸法。
そんなある日、柴田巡査の前に冬だけでなく、
"一生"刑務所で過ごしたいというホームレスが現われて……。

冬場だけ、しかも窃盗犯だけを挙げつづけたらあやしまれるだろ(w

 酒乱 Rememdrances of an Alcoholic 笹沢左保

老境を迎えつつある夫婦の
のどかな会話のみで構成されるミステリ。
過去に見境がないほどの酒乱だった妻が起こした殺人事件の回想。
これは理想の夫婦……なのかなぁ(w

 神獣の爪 The Divine Beast's Claws 陳舜臣

西脇警部補宅の階上に住む中国人・王仁銘夫妻。
彼の叔父は本国の盗掘団の首領だったが、
日本から来たふたりの古墳荒らしに無惨に殺されたという。
やがて近所で殺人事件が発生し、西脇はこのよき隣人の関与を疑うが――

真犯人はともかく遠隔操作というか駒に仕立てあげた手法が見事。

 自負のアリバイ Conceited Alibi 鮎川哲也 

倒叙もの。
大学講師が妻の浮気を知り、殺害を決意。
3枚のレコードを利用した鉄壁のアリバイをこしらえるのだが……。

 尊属殺人事件 A Murder in the Family 和久峻三

法廷ミステリ。
鬼畜の義父を殺したとして、
不遇な一生を送ってきた女性が裁かれていた。
彼女は無罪を主張するが、ことの真相とは?

 天分 The Gifted Man 海渡英祐

両親の遺産で気ままな生活を送る独身貴族の伊吹。
放蕩するわけでもなく、画家としても成功をしていた。
しかし、そんな彼も深刻な悩みを抱えていた。
心の底から湧き上がってくる殺意の衝動を……。

ホラーじみてるな。因果なラストがすばらしい。

 妻の証言(肉親の証言改題) Bloody Evidence 佐野洋

法廷ミステリ。
大学助教授が問われている殺人の罪。
彼には犯行時刻に妻と自宅にいたという
単純なアリバイがあるのだが、真相は意外な展開へ!

アリバイを逆手にとったトリックがナイス。
二転三転する論理のたのしさは病みつきになります。
Japanese Golden Dozen 1982 

「日本傑作推理12選 第3集」 (光文社)
「この最新のアンソロジー第3集には、探偵、ミステリー、
サスペンス、犯罪などをあつかった12の作品が収めてあります。
これらの才能ある作家の作品を通して、
日本の現代推理小説の創造的活力をみることができます」(E・クイーン)
日本推理小説界の層の厚さと、
水準の高さをみごとに実証した、珠玉の作品集!

序論「欧米文壇が日本に学ぶ日」
1981年9月 ニューヨーク・シービューにて

 箱根初詣で AChance Meeting 松本清張

NYへ海外出張に発った3人の会社員が深刻な事故にあったらしい。
3人の会社員の妻たちはすぐに現地へ向かうが――

なんだかへ〜んな話。清張さんこんなんも書くんだ(w

 時効は役に立たない You Can't Trust Faulty Apartment 生島治郎

銀行の現金輸送車を襲撃し、大金をせしめ、
ついに時効成立まで逃げきった工藤と井川。
工藤はそれを資金に不動産業で成功したが
井川は落ちぶれ、工藤のもとへ金の無心におとずれ、
断れば犯罪の真相をしゃべると脅してきたのだ。
時効とはいえこの秘密を暴露されれば会社は倒産必至。
工藤は井川の抹殺を考えるが……。

うふん、強度偽装ブームの現代でも通じるね。

 沿線同盟 Beat Your Neighbour Out of Doors 赤川次郎

わずか5軒の世帯が孤立した住宅地に
若い夫婦がマイホームを購入し、引っ越してきた。
やがてこの夫婦へのいやがらせがはじまるのだが……。

ぶるる!日本的だなあ、封建的なこの感じ。
あと、やはり昔読んだことある(w

 商腹勘兵衛 Kambe 栗本薫

17世紀を舞台にした時代ミステリ。
領主の死を悼み後追い自殺をする「追腹」がテーマ。
中年と少女の悲恋の物語。

 山手線の日の丸 The Cigarette Lighter 戸板康二

倒叙形式。
もと習字教師の老人の愛娘が自殺を遂げた。
理由は不義の恋の果てのことらしい。
老人は娘を死に追いやった男に復讐を誓う。

タイトルは山手線で国旗片手に若者に席を譲れと
道徳を説いている、老人とそっくりの人物がいて、
それをアリバイトリックに利用するというもの。

 趣味を持つ女 A Woman With a Hobby 阿刀田高

もの静かな弟とふたりで暮らしているハイ・ミスの京子。
彼女には見知らぬ人の葬儀に参加するという"趣味"があった。
一方で近辺では香典泥棒が犯行を重ねており、
彼女に疑惑がふりかかるが――

ああ、これはうまいなぁ。ぞっとするな。

 被告は無罪 Revenge 小泉喜美子

ジャズグループの女性シンガーの恋人(サクス担当)が、
ピアノ担当の男に酒の上の口論から殺されてしまった。
被告は犯行時、心神耗弱状態と認められ無罪が確定。
納得のいかない彼女はおなじ方法で復讐に燃えるが。

意図していんだろうけど、DQNっぷりがなあ。

 小梅富士 The Koume Fuji 都筑道夫

(江戸)時代ミステリ。なめくじ長屋もの。
下半身不随の老人が殺された。死因は圧死。
なんと大の男4〜5人でも持ちはこぶのに
苦労する富士山に似た庭石が兇器だったのだ。
女の手でも簡単に殺せる寝たきりの老人を
だれがなぜわざわざこんな方法で殺害したのか?

 草原特急の女 The Woman on the Plains Express 伴野朗

ゴビ砂漠を経由し中国とモンゴルをつなぐ
国際列車の車内で歴史学者・日向は
若く美しい中国人らしき女性と知りあった。
やがてスパイと陰謀の手が日向にも迫り――

冒険サスペンス。
中国とソ連に板ばさみにされたモンゴル事情が良。

 天女脅迫 The Blackmail 斎藤栄

放火とみられる火災で
50歳の寝たきりの未亡人が焼死した。
数日後、横浜市長の秘書・徳井に
匿名の手紙が舞いこみ、そこにはあの火災に
谷上教育長が関係していると書かれていた。
谷上は徳井のもと上司で、ひどくいびられていた。
そこで徳井は私怨を燃料に調査をはじめるが。

こまった素人探偵だな(w

 妻よ、安らかに Sleep Tight 菊村到

平凡なサラリーマンがたまたま令嬢と結婚。
さらにたまたま愛人ができ、
その愛人が妻を殺すと言いだすが、
事態はおかしな方向へ流れだし……。

みんなグダグダだな(^^;

 共喰い ―ホロスコープ誘拐事件 The Day of the Cannibals 小松左京

資産家の一人息子を誘拐し、身代金を要求しようと
相手の家に電話をなんどもかけるがだれもでない。
業を煮やし直接その家のようすを見にいくと、
マリー・セレスト号よろしく蛻けの殻だった。
やがておそるべき事実が明らかになり……。

薄気味悪いミステリかと思いきや、ファルスやねえ(w
ホロスコープ誘拐事件はよかった。
Ellery Queen's Dozen and One Literary Mysteries 1977 

「世界傑作推理12選&One」新庄哲夫訳 (光文社)
本書は、世界推理文壇の巨匠で名アンソロジストとして、
幾多の"黄金の12選(ゴールデン・ダズン)"シリーズを世に送り出したエラリー・クイーンが、
生前、特に日本読者のために編んだ珠玉の短編選集(アンソロジー)である。
なじみ深い古典ものから、日本初公開作品まで、
いずれも高水準のものを13編収録した。
題名の"& ONE(アンド・ワン)"とは、クイーンの自作短編「三人の未亡人」を
12選につけ加えたことを表わしている。

序文「親愛なる読者のみなさまへ」
1977年8月 ニューヨーク州ラーチモントにて


 「魚捕り猫」亭の殺人 The Murder In The Fhishing Cat
  エドナ・セント・ヴィンセント・ミレー

「犯罪文学傑作選」にも収録。

 世にも危険なゲーム The Most Dangerous Game リチャード・コンル

夜中、事故でヨットから転落した狩猟家レインズフォード。
闇雲に泳いでいると島にたどり着いた。
そこにはザーロフ将軍が居をかまえており、彼もまたハンターだった。
将軍はあらゆる大物撃ちを経験し、もの足りなくなり、
ついには禁断の獲物――人間を標的にするというのだが……。
狩猟家同士の狩りゲームがいまはじまる!

 うぐいす荘 Philomel Cottage アガサ・クリスティ

身持ちのいいアリックスは友人の家で出会ったジェラルドと
恋におちいり、1週間後に婚約、1ヵ月後に結婚してしまう。
やがて日常のささいな風景が彼女にある疑惑を植えつける。
ジェラルドは結婚詐欺師の殺人犯なのではないかと……。

 オッタモール氏の手 The Hands of Mr. Ottermole トマス・バーク世界短編傑作集4」にも収録されています。

 銀の仮面 The Silver Mask ヒュー・ウォルポール世界短編傑作集4」にも収録されています。

 疑惑 Suspicion ドロシー・L・セイヤーズ世界短編傑作集4」にも収録されています。

 情熱なき犯罪 Crime Without Passion ベン・ヘクト

倒叙もの。
法廷弁護士ヘンドリックス氏は
踊り子の恋人ブラウニーに別れを切りだし、修羅場にいた。
いつも冷静な彼だったが、なにがとちくるったか、
口論のはずみで彼女を死なせてしまう。
ヘンドリックス氏は無罪になるための工作をはじめるが……。

法廷弁護士だけに裁判の心証やポイントを計算するのがおもしろい。
皮肉などんでん返しもみごとな手際。

 人殺しの青 Blue Murder ウィルバー・D・スティール

3兄弟、農夫ジム、商人フランク、鍛冶屋キャムデン。
ある日、ジムが"人殺しの青"という名前の種馬を購入した。
はたしてその晩、厩舎で暴れたこの馬にジムが殺されてしまう。
復讐に脱走した馬を追うフランクとキャムデンの運命は――

 特別料理 The Specialty of The House スタンリー・エリン

美食家ラフラーは部下のコステインを連れ、
裏通りの穴蔵じみた一風変わったレストランにやってきた。
ここで出される料理は定食のみだがどれも絶品ばかり。
この店の常連であるラフラーはごくまれに出される特別料理――
幻の羊アミルスタン・ラムを使用した――があるというの。
ところが、その背後には不穏な気配が……。

まあ、お約束ながらぞっとしますな。

 敵 The Enemy シャーロット・アームストロング

「黄金の13/現代篇」にも収録。

 ダール アイ ラブ ユ Darl I Luv U ジョー・ゴアーズ

ペンタゴンに勤める奥手で孤独なチャーリー。
ある日の退庁後、ひとりタイプの練習をしていると、
テレタイプの通信でミリーと名乗る女性と知りあうことに。
文字でのやりとりから、いつしか彼は彼女に恋をしてしまう。
そしてこの出会いは世界をゆるがす殺人事件へと発展し――

今世紀における最も毛色の変わった殺人者、いやはや。

 ごらん、あの走りっぷりを See How They Run ロバート・ブロック

三文文士の日記で語られる物語。
精神科医のすすめで書かされている日記から
表面化するトラウマと崩れていく精神がこわいわ。

 三人の未亡人 The Three Widows エラリー・クイーン

「クイーン検察局」にも収録。
Ellery Queen's Criminal Dozen 1982 

「新 世界傑作推理12選」 (光文社)
圧倒的評判を呼んだ『日本傑作推理12選(第1〜第3集)』
『世界傑作推理12選&One』『日本文芸推理12選&ONE』に続いて贈る、
E・クイーンのオリジナル・アンソロジー第六弾!
クイーンは一九四一年いらい、四十年余の長きにわたって
「エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン」(EQMM)を編集してきた。
その間、掲載された作品は六千余――その膨大な作品群の中から、
きびしい選択眼でえらび抜いた名品を集めたのがこの本である。
文字どおり、世界のミステリー界をリードしてきたEQMMの
「ベスト・ミステリー決定版」である。

序文「親愛なる日本の読者のみなさまへ」
1982年3月 ニューヨーク州ラーチモントにて


 エクセルシオー荘の惨劇 Death at the Excelsior P・G・ウッドハウス

船員相手の下宿屋で、下宿人の頑健な老船長が変死した。
死因はコブラの毒によるものだった。
評判を重んじる下宿屋の女将は
一刻もはやく事件にかたをつけるべく捜査を探偵社に依頼、
しかし派遣されたのはうぬぼれ屋の新人探偵。
彼に事件を解決することができるのか?

検死で蛇の牙と猫の爪の差がわからんものか(^^;

 三人レオポルド Captain Leopold Incognito エドワード・D・ホック

大物麻薬取引人ハザードがヘルス・クラブに現われた。
近々おこなわれるであろう取引で現行犯逮捕すべく、
レオポルド警部は偽名を使い潜入する。
その情報を耳にしたハザードは警戒するが、
ヘルス・クラブにやってきたのは3人の男。
だれがレオポルド警部なのか?

犯人の探偵当てという趣向の一作。

 生まれついての犠牲者 Born Victim ルース・レンデル

「クイーンズ・コレクション 2」にも収録。

 世界一親切な男 The Kindest Man in the World ヘンリイ・スレッサー

ヨットの衝突事故で妻を亡くした夫。
衝突したヨットに乗っていた男4人に
"とても親切な"復讐を決行するが……。

 受難のメス Trial and Terror ハロルド・Q・マスア

医療ミス、強盗、脱税、殺人……。
ひとりの医師に次々と降りかかった受難、
弁護士スコット・ジョーダンの事件簿。

 臭い名推理 Dover and the Smallest Room ジョイス・ポーター

女癖のわるい広告デザイナーが殺された。
凶器は遺体のそばに落ちていた銃らしい。
暴食からトイレへ向かうドーヴァー警部が発見した手がかりとは?

 完璧なアリバイ In the Clear パトリシア・マガー

妻と愛人に飽きた男があらたに出会った女性に恋をした。
しかし妻は離婚におうじず、彼は殺害を決意する平凡な倒叙もの。
殺人は殺し屋に依頼しちゃうのでアリバイ作りは安易でズルいです。
けども、結末は気が利いているのでクイーンが選んだのでしょう。

 朝飯前の仕事 A Nice Easy Job ビル・プロンジーニ

名無しの私立探偵に依頼された仕事は、
密室に保管された無数の結婚披露宴のプレゼントの番だった。
しかし、室内からプレゼント(高価な指輪)が盗まれてしまい、
容疑の目はひとり部屋を見張っていた探偵に向けられる。
犯人はいかにして密室から指輪を盗みとったのか?

 汝の隣人の夫 Web of Circumstance ドナルド・オルスン

子宝には恵まれないものの、
理想的な結婚生活を送っていた夫妻。
ある日、隣りに若い夫婦が越してきて、
平穏な日常の歯車が狂いはじめる……。
孤独と日記による誤解が織りなす人間模様。

 レドンホール街の怪 Behind the Locked Door ピーター・ラヴゼイ

メシター氏はタバコ屋の階上に下宿するため、
一年近くも辛抱づよく待っていた。
ところがいざ借りることができた部屋をあまり使うようすはない。
メシター氏の目的とはいったい?

 足の裏 The Sole of the Foot 夏樹静子

信用金庫をおそった3人組の強盗。
首尾よく2千万円を強奪し、すがたをくらます。
唯一の手がかりである札のナンバーから、
巨大な組織の不正が浮かびあがるのだが……。

これは現実にありそうだなぁ。
現代ではチェック機能とかあるのかしらん。

 証言 The Secret Alibi 松本清張

不倫中の貞一郎が偶然すれちがった近所の男。
その男に殺人の容疑がかかった。
貞一郎が証言をすればアリバイ――無実を証明できるのだが、
自分の不貞をさらけだし、家庭や会社の立場の悪化を
きらった貞一郎は男に会ってなどいないと偽証をすることに。
このひとつの嘘が次々とあらたな嘘を招き、事態はおおきく――
Japanese Literary Mystery 1978 

「日本文芸推理12選&ONE」 (光文社)
本書のために私が選んだこれら12編の文芸推理作品をお読みになれば、
混沌から秩序への変形プロセスが
推理小説の根本的要素だということがおわかりになるだろう。
12の作品のテーマとスタイルと特色は、驚くほど多方面に亙っている。
犯罪の種類は、蒸発、裏切り、殺人と、ひととおり揃っているし、
殺人法も毒入りの酒、デパートの屋上や崖からの突き落とし、
あるいはアンティックナイフの利用など全く多彩である。(序文より)

このリテラリー・ミステリーズをもって、
"12選シリーズ"全4巻は完結だそうです。
――結論からいえばVだの新だのもあるようですが(w

 途上 The Inevitable Death 谷崎潤一郎

私立探偵の身元調査であばかれる、
偶然と必然の途上にあるプロバビリティの殺人模様。

 人間椅子 The Human Chair 江戸川乱歩

これは有名すぎますね。
大型安楽椅子に潜りこんだ男の話。
"創作オチ"とはいえ、わが家のソファが気になるんですよね(w

 文学少女 A Literary-Minded Girl 木々高太郎

秀才文学少女の一生を切り取った小編。
題名のうまさにつきますな。すばらしい。
女主人公ミヤはすぐに成長するのにこれですよ。

 殺意 Malice Aforethought 高木彬光

三角関係のもつれから発生した殺人事件。
単純すぎる事件の裏にひそむ殺意の罠。

故殺か謀殺か、旧刑法で区別されていた問題点を衝いた一作。
これはすごいわかるわあ。
ニュースでよくきく「計画的犯行」なんてふざけるなと思うもんね。
本気で計画しているなら、計画自体の痕跡を残しませんて。
刑を最小限にとどめるにはどうするか、それが計画でしょう。
(計画的な人間は完全犯罪なぞ想定しないので)
「ついカッとなってやった。今は反省している」こそ、
計画的犯行といえましょう。

 火の記憶 The Memory of Fire 松本清張

幼少時、父親が突然失踪した男の物語。
わずかな記憶の断片から導きだされえる理由とは。

 三十六人の乗客 The Thirty-six Passengers 有馬頼義

36人の乗客を乗せバスはスキー場へ向かう。
そのなかにひとり刑事がいる。
先日起こった銀行強盗事件の犯人一味が
逃走にこのバスを利用していると踏んだのだが……。

 落ちる The Fall 多岐川恭

病的に自殺願望に囚われた男の心理ミステリ。
切れ味では本書でベストか。

 ナポレオンの遺髪 Napoleon's Hair 三好徹

歴史ミステリ。ナポレオンの死因は胃癌か毒殺か?

 長い暗い冬 The Long Dark Winter 曽野綾子

異国の地で暗い生活を送る父子。
孤独が生む病の実相をえぐる一作。こわい。

 死ぬより辛い Hander Than to Die 夏樹静子

わずかに目を放した隙に愛児を死なせてしまった母親。
絶望に沈む彼女だが、この事態が意外な事実を掘りおこし……。

 祖母為女の犯罪 Grandma Tame's Sin 森村誠一

98歳で天寿をまっとうした福原為。
孫に托された遺物が彼女の犯罪――輪廻と因果の妙を解き明かす。

 エーゲ海の殺人 Murder on The Aegean Sea 石川喬司

エーゲ海を船旅する男。
きな臭い乗客たち、舞いこむ呪いの怪文書、
そして計画された殺人……しかし、その真相は――

 E文字の殺人 E=Murder エラリー・クイーン

「クイーンのフルハウス」にも収録。こちらは新庄哲夫訳。
▼BACK▼          ▽TOP▽