「エラリー・クイーンの事件簿1」青田勝訳 (創元推理文庫) 
エラリー・クイーンと推理作家志望のニッキー・ポーターの名推理。
殺された〈健康の家〉の主人の死体が、
いつのまにか石膏の像に変わっていた不思議な事件「消えた死体」と、
中国帰りの腹話術師が殺され、
イカサマ賭博師や怪しげな中国人、現場に残された謎のカード、
宝石の行方と小道具を揃えた本格ミステリ「ペントハウスの謎」
――映画のオリジナル脚本からの小説化二編収録。

映画が土台なので視覚的な作品に仕上がっています。
ニッキーも初登場します、ちなみに鳶色(w


 消えた死体 The Vanishing Corpse (1941)

エラリー・クイーン……………推理小説作家
リチャード・クイーン警視……ニューヨーク警察本部
トマス・ヴェリー………………部長刑事
サミュエル・プラウティ博士…医務検死官補
ジョン・ブラウン…………興業会社「ジョン・ブラウンの健康の家」の社長
リディア・ブラウン……………ジョンの妻
バーバラ・ブラウン……………ジョンの娘
ジム・ロージャーズ博士………「健康の家」の住みこみ医師
ロッキー・テイラー……………「健康の家」の宣伝担当者
コーネリア・マリンズ…………「健康の家」の体育指導員
クロード・L・ザカーリ………「健康の家」の支配人
エーモス…………………………「健康の家」の庭師
ニッキー・ポーター……………推理小説作家志望の娘
ジョゼフ…………………………おおがらす
ピンキー…………………………タクシー運転手
ノリス……………………………「健康の家」の受付係
アニー……………………………クイーン家の女中
ビル,ジェリー・ライアン……ポーカー仲間、警官
フリント…………………………刑事
ネリー・スノッドグラス………ニッキーの変名

7月23日――
健康を売り物にしていた会社社長ジョンに
医師たちから死の宣告がなされた。
彼自慢の身体を癌が蝕み、余命数週間だというのだ。
健康を信仰してきたジョンは人生すべてを否定されたと
事業運営と役員たちへの遺産配分を中止すると宣言。
その晩、咽喉を切り裂かれ死んでいるジョンが発見され、
現場にあったはずのペーパーナイフが消えていた。
さらに死体収容所に運ばれたジョンの遺体が
石膏像と掏りかえられ、消えてしまった。
だれがなんの目的でこのような行動に出たのか?
ふとしたことから有力容疑者になってしまったニッキーを
かばいつつ、エラリーは真相解明に乗りだすが……。

映画向けなので軽いと思いきや、
これがけっこうできがいいんですよ。
ニッキーなんかどう見てもツンデレでやばいです。
だぶだぶのパジャマとか、狙いすぎだろ(w

しかし、もし裁判になってたら殺人罪になるのかな?
派手なカーアクションよりこっちのほうが見たい。
ついで。エラリイの愛車がキャデラックになってた。

ニューヨークの北いなか(ロチェスター)生まれ、
鳶色ニッキー・ポーターの著作リスト。
「ペルシアじゅうたんの謎」「路傍の家」
「羽根飾り帽子の謎」「女の罠」


 ペントハウスの謎 The Penthouse Mystery (1941)

ニッキー・ポーター………エラリーの秘書
シーラ・コップ……………ニッキーの友だち
ゴードン・コップ…………シーラの父、腹話術師
ハリー・ウォルシュ………ゴードンのマネージャー
パークマン…………………ホリングズワース・ホテルの支配人
ジム・サンダース…………ホテルの給仕
ブレット伯爵………………ホテルの客
ミス・オルガ・オテロ……ホテルの客
R・M・スミス……………いかさま賭博師
リッター……………………スミスの手下、元奇術師
リー・スー…………………アメリカ在住中国人の大物
ロイス・リン………………アメリカ生まれの中国娘
オスカー・バーゲン………汽船会社の司厨長
ロバートソン,フレッド…カモ
ツァン・イェン・スン……スーの親友。中国財界の巨頭
アニー………………………クイーン家の女中
ピゴット,ヘス……………刑事
ドッブ………………………ビルの管理人

8月14日(日)――
エラリーの秘書になったニッキーは
訪れた友だちシーラの相談に乗っていた。
彼女の父親ゴードンは中国で腹話術師として活躍しており、
今日、帰国するはずだったが、すがたを現さないという。
約束の場所であるペントハウスに向かったエラリー一行は
その部屋にあったトランクの中からゴードンの死体が発見する。
捜査が進むにつれ次々とあやしげな人間が浮かびあがる。
背景にひそむ中国の深刻な事情を知ったエラリーは事件解決を誓う!

なんか、もっとスマートにできないものなのか(^^;
例によって東洋観にはへだたりがある。

どちらの話もオチが笑える。
思わせぶりなエラリイの罪深いこと!(w
「エラリー・クイーンの事件簿2」青田勝訳 (創元推理文庫) 
株で失敗した相場師のピストル自殺。
その現場を見たという目撃者がいるにもかかわらず、
検死医はそれを殺人だと断定した……。
アリバイの明確な六人の容疑者たち。
おなじみエラリーとニッキーのコンビは「完全犯罪」の謎にとりくむ。
他にラジオドラマの脚本から小説化した
「〈生き残りクラブ〉の冒険」「殺された百万長者の冒険」
の二編を収録し、本格ミステリ・ファンに挑戦する!

上の2本がラジオドラマ、
3つ目が映画用の脚本が元になっています。

 生き残り(ラスト・マン)クラブ〉の冒険 The Adventure of The Last Man Club (1940)

ママ・ロッシー…………………ビルの母、レストラン経営
ビル・ロッシー……………ラスト・マン・クラブ会員、自動車にひき殺される
ジョセフ・サリバン……………同クラブ会員、六十六番クラブのバーテン
アーネスト・フィリップス……同クラブ会員、商業美術家
デイビッド・W・フレーザー…同クラブ会員、化学製品会社社長
ルシル・チェリー………………同クラブ会員、ファッション・デザイナー
ギルバート・チェリー…………ルシルの父、海軍中佐、第一次大戦で戦死
シド・パラモア…………………六十六番クラブのボス
エラリー・クイーン……………推理小説作家
ニッキー・ポーター……………エラリーの秘書
リチャード・クイーン…………ニューヨーク警察本部の警視
トマス・ヴェリー………………部長刑事
ルイジ……………………………レストラン店員

エラリーが仕事を終えたニッキーを送っていく道中、
イタリア料理店からあわてたようすの
ひとりの男がとびだし、自動車にはねられてしまった。
今わの際に男は、六十六番クラブのメンバーに
注意しろ、殺されると警告ともとれる言葉をいいのこした……。
エラリーはその伝言をするべく六十六番クラブに向かい、
やがて生き残りクラブの存在を知ることに。
第一次大戦中、チェリー海軍中佐が沈没する艦船から
自らを犠牲にして11人の乗組員を救助した。
その生存者たちがクラブを作り、感謝の意味で信託基金を設け、
20年後――今年――生存しているクラブ会員に分配することに。
会員が減れば分け前が増える、男はこれが原因で殺されたのか?
エラリーは生き残りクラブに注思するが――


魔術(マジック)だ」と警視はつぶやいた。「まぎれもない魔術だ」 「いいや、おやじさん、論理(ロジック)だ」とエラリーはくすくす笑って、 「まぎれもない論理です」
好きだなあ、これ。人類史を瘰癧を感じさせるね。 「読者への挑戦」付き。 だけどポストの色はびっくりしちゃったな。 ねえ、あとひき逃げ犯は放置でいいの? ちなみにここではブロンドニッキーです。  殺された百万長者の冒険(大富豪殺人事件)   The Adventure of The Murdered Millionaire (1942) ピーター・ジョーダン………百万長者 マーガレット・ジョーダン…ピーターの妹 ロベルト・カッシーニ………マーガレットの婚約者、メトロポリタンのテナー ウインターズ…………………ジョーダン家の執事 アイラ・スコット……………ジョーダンの友人 ソーンダイク…………………ジョーダンの弁護士 プラウティ博士………………検死官補 フリント………………………指紋係 ニコルズ………………………写真係 スワンソン……………………刑事 ジェーン・ホールジー………マーガレットの古い学校友だち 5月の日曜日―― エラリイは老富豪から奇妙な依頼をうけた。 彼は妹の婚約者から財産と命を狙われていると訴え、 その身の防衛対策に毎週遺言状を書きかえ、あるときは妹に、 あるときは慈善団体へ全財産を寄付することにしていた。 そしてエラリイに自分が殺されかけている証拠を つかんでくれというのだ。 しかし、その晩、老富豪は無残にも殺害されてしまう。 今週の遺言状により遺産は慈善団体に寄付されることに。 つまり彼を殺して得をする人間はいないはずなのだ。 この動機なき殺人にエラリイは苦戦する。 ニッキーの歌声しか印象に残らない(w こちらもブロンドニッキー。  完全犯罪 The Perfect Crime (1942) ウォルター・マシューズ………エラリー・クイーンの友人 ジョン・マシューズ……………ウォルターの伯父 カーロッタ・エマーソン………ウォルターの叔母 メーリアン・ガーテン…………ウォルターの婚約者 レイモンド・ガーテン…………メーリアンの父、マシューズ家の隣人 ヘンリー・グリスウォルド……ガーテンの図書係 アーサー・F・ローズ…………ジョン・マシューズの弁護士 ルーファス・スミス……………競売人 ジェームソン……………………銀行の副頭取 シーザー・ジョーンズ………電話交換手、エレベーター運転手 リー…………………………………マシューズ家の召使 クラークソン……………………マシューズ家の執事 ジミー,フリント,ハグストロム…刑事 ジェラルド・T・シンプソン…弁護士 トーゴー…………………………チンパンジー エラリーは友人ウォルターにたのまれ競売場に赴いた。 彼の叔父は株の相場師で不法すれすれの荒稼ぎをしており、 ついにはウォルターの婚約者の父ガーテンを破産に追いやった。 そのため、蔵書家のガーテンは一財産といえるほどの貴重な書物を すべて手放すはめになり、義憤を覚えたウォルターが それらをエラリーに競り落としてほしいというのだ。 軍資金25万ドルをあずかったエラリーは片っぱしから競り落とすが、 途中、詳しい事情を知らないニッキーがあらわれ、 神経症から気でもちがったのかと心配されてしまうのだが―― ……って、事件発生してないじゃないかっ。 このあと、叔父が自殺したとの一報が入り現場へ行くが、 プラウティ博士が検死をはじめてすぐに殺人と断定。 容疑が濃い友人ウォルターのため奔走する、って流れ。 ニッキーのくだりはほとんどコメディで笑える笑える。 もうじつに魅力的、やきもちが萌える萌える。 そのとび色ニッキーの新作は「図書室殺人事件」とか。
In the Queens' Parlor 1957 

「クイーン談話室」谷口年史訳 (国書刊行会)
探偵小説収集狂の進化の4段階、カーとロースンのアイデア交換秘話、
作家のサインの値段、有名作家が選んだ究極の名作リスト、
世界最初の女性探偵、ペンネームの選び方、タイトルの解剖学、
紳士探偵の性生活、名探偵のトレードマーク、等々、
本格ミステリの第一人者にして名編集者クイーンが披露する、
ミステリをめぐるさまざまな話題、EQMMの興味津々の編集裏話を満載。
該博な知識と軽妙な語り口で
人気を博したミステリ・エッセイの名著中の名著。
付録として、合作方法、代作問題など
クイーンの創作の秘密に迫る小伝を付す。

クイーン(というかダネイ)の随筆。
EQMMの編集裏話を50のリーフという形で披露。

いや、もう、大変おもしろかったです(*´Д`)
クイーンを措いてこれを描破しえる作家は絶対にいませんよ。
よっ、救い難い改題魔(w
もうねぇ、語り口が作家クイーンというより
どことなく探偵エラリイっぽいの、たまらんの。

探偵小説収集狂の進化の4段階…
書物愛好家(ブックラバー)→鑑識家(コニサー)→
書物狂(ファナテック)→書物崇拝狂(ビブリオファイル)
…のマニアックなエピソードとか市場価値、交遊談話、
長短編のオールタイムから執筆にまつわる話まで盛り沢山。
注釈も出すぎず適確でとても参考になります。
これ1冊でクイーンはもちろん、ミステリのルーツまで学べちゃいますよ!

「エラリイ」という名前の意味・由来までわかっちゃいます。
「榛の木の繁る島」ね。
ダネイの少年時代の友だちにエラリイ・ハーマンって人がいたと。
(本書で読みたい人のために伏せておきます、見たいなら反転〜)

ファンには嬉しすぎるこのエピソード。
サイト名にしてもよかったね、詩的で洒落てるもの。
小説は全部読んだのに知らないこといっぱい、どうしたって必読ですぜ。
消灯。
The Golden Summer 1953 

「ゴールデン・サマー」谷口年史訳 (東京創元社)
主人公のダニーは小柄で胸板は薄く、腕も細い。
小さな顔に大きな耳と大きな鼻、ごついニッケルフレームのメガネ。
頭の中には、とてつもないアイデアを生み出す小さな灰色の脳細胞。
舞台は1915年のアメリカ、
マーク・トウェインも住んでいた小さな町エルマイラ。
トム・ソーヤーやハック・フィンさながらの日々を過ごす
10歳のダニーを活写する。
巨匠エラリー・クイーンの半身
フレデリック・ダネイ(=ダニエル・ネイサン)が物した、
ミステリ心あふれる少年小説。

ええっとぉ、東京創元社|ゴールデン・サマーの、

【エラリー・クイーンがトム・ソーヤーだった頃】
【飯城勇三氏による解説[全文]を読む】

を読んでいただければ、もういうことないです(^^;
だって、完ぺきな解説なんだもん、他にいうことなどないですよ('A`)
谷口年史氏のあとがき(FCに完全版あり)も含めば無敵状態。

でもまあ、補足にすらなりえない蛇足雑感でも。
全体構成は、主人公のダニー少年が活躍する22章と、
合間合間に導入されるダネイ(大人)の時代情景パートの交叉です。
連作短編集といえなくもないかと。
自伝風なだけで、7〜8割がたはフィクションでしょうね。
トム・ソーヤーの冒険に似てますな(こっちほど過激ではないけれど)
ちらっとですけどリー少年も登場してます♪

さて、このダニー君ってば弱冠10才にして
お金儲けへの執着が横溢してるんですよ。
終始、そのことばかり考えてるといっても過言じゃないくらい。
"ゴールデン・サマー"を
輝かしいノスタルジックな少年の夏と誤読するなかれ。
ゴールデンはお金ですので(w

とはいってもそこは少年、無謬に思える誤謬というか、
詭弁でいいくるめ小銭をかすめとる姿はある種 爽快です(そうか?)
基本的にフェアだし、その技巧はミステリに通じてますからね。
この辺が読みどころではないでしょうか。
なんだかんだでノスタルジーな箇所もありますし。

ところで上の「クイーン談話室」の反転で、
ダネイの少年時代の友だちにエラリイ・ハーマンって人がいた、
と記述してますが、本書では友だちの父親になってます(^^;
こっちが正解、でいいんですよね。惑わすない(;´Д`)

…なにいっても飯城、谷口両氏に重複するのでこんなもんか。
飯城さんのは好意的すぎる気もしますけどもね、
一般層には受け入れられるレベルではないかなぁと。
私はQビック(?)なのでちっとも構わないんですけど。
クイーンファンならとりあえず看読しても害はないでしょう。
でもなぜに文庫にしないかなぁ…

平成十七年九月、ゴールデン・サマーの相州にて
Dead Man's Tale 1961 

「二百万ドルの死者」青田勝訳 (HM文庫)
ギャングの大物ストリートが殺され、二百万ドルの遺産が残された。
当然自分の手に入ると思っていた妻エステルは、
遺言書に目を通し愕然とした。
全部の遺産を、戦時中命を救ってくれた
チェコスロヴァキア人ミーロ・ハーハに遺贈するというのだ。
この男はいったい何者なのか?
腹にすえかねたエステルは自分の愛人スティーヴにハーハの調査を頼んだ。
さっそくチェコへ飛んだ彼を待ち受けていた巨大な罠とは?

バーニー・ストリート……………ギャングのボス
エステル・ストリート……………バーニーの妻
スティーヴ・ロングエーカ………バーニーの手下
アンディ・ロングエーカー………スティーヴの弟
ロナルド・ハーレー………………弁護士
ルー・グッディ……………………殺し屋
ミーロ・ハーハ……………………バーニーの恩人。チェコスロヴァキア人
ヨースト……………………………オランダの農場主
カトリナ……………………………ヨーストと同居している娘
ファン・ヒルファーサム…………オースターダイク市の市長
ヨハンナ……………………………ファンの妻
ゲルトルーデ・オーレンドルフ…スイス在住の女
ハインツ・ケムカ…………………音楽家
ゲルハルト・ミュラー……………バスの運転手
ディーター・ローリングホーフェン……スパイ
ヴァクラフ・ミドラール…………チェコスロヴァキアの社会民主主義者
リブセ・ミドラール………………ヴァクラフの娘
オットー・ザンダー………………警察長官

名義はクイーンでも、筆をとったのはスティーヴン・マーロウ。
探偵エラリイもクイーン警視も登場しませんので留意。

ジャンルはハードボイルドですね。及びサスペンス。
遺産相続もの。
ギャングのボス・ストリートは妻エステルの姦計で殺害される。
ところが遺産はストリートの恩人ミーロ・ハーハに贈られることに。
そこでエステルは愛人スティーヴにハーハの殺害を指示。
スティーヴと弟アンディはハーハを捜すためチェコへ乗り込む――

キーになりそうな人物が次々に殺されるので少し笑う。
ヨーロッパ各国を転々とする舞台もテンポいいです。
けど焦点がしぼられてないので、なにがしたいのやら┐(´ー`)┌
アンディも結局、警官殺してたんだか不明だし。
例のセリフはよかったね。

「傑作というものは、人生を愛していては生まれないものです。
 傑作は絶望から生れでるものです」
The Blue Movie Murder 1972 

「青の殺人」門野集訳 (原書房)
一部のファンの間では伝説と化した映画『ワイルド・ニンフ』を残して
二十年前に失踪した映画監督の行方を追っていた映画プロデューサーが、
何者かに殺害された。
州知事の命を受けた特別捜査官マイカ・マッコールは現地に赴いたが、
『ワイルド・ニンフ』に関係していたと思われる人々は一様に口を閉じ、
捜査は難航する。その映画には何が封じてあったのか。
被害者はその封印を解いてしまったのか。
そして失踪した映画監督の正体とは誰なのか…。
「巨匠たち」がおくる熟練の本格長編。

マイカ・マッコール…………元私立探偵。州知事直属の問題解決屋(トラブルシューター)
サム・ホランド………………州知事
シンシア・ローズ……………女性解放運動家
ベン・スローン………………映画プロデューサー
ヌザンヌ・ウォルシュ………スローンの秘書
フランク・ジョーダン………ロックビュウ市長
ザヴィア・マン………………フィルム製造会社社長
エリザベス・マン……………ザヴィアの妻
フィリップ・ハート…………州警察長官
パウエル………………………ロックビュウ市警警部補
ソル・ダールマン……………失踪した映画監督
エイプリル・エヴアンズ……ロックビュウに現われた謎の女性
キャリー・ターナー…………フィルム製造会社従業員
ジョージ・ワッツ……………同従業員
ジャック・コジンスキ………同アルバイト
ロン・コジンスキー…………タクシー運転手、ジャックの兄

名義はクイーンでも、筆をとったのは愛弟子エドワード・D・ホック。
探偵エラリイもクイーン警視も登場しませんので留意。
トラブル・シューター・シリーズらしい。

ジャンルはミステリで、(キレの弱い)ハードボイルド派。
帯には異色のフーダニット問題作なんて書いてあります。
おそらくリーが関わった最後の作品。

伝説の芸術的ポルノ映画「ワイルド・ニンフ」を残して
20年前に失踪した監督ソル・ダールマンの行方を追っていた
映画プロデューサーが何者かに射殺されてしまった。
州知事からこの事件の調査を依頼された
直属の特別捜査官マイカ・マッコールは現地・ロックビュウに赴くが、
事件の関係者たちはこの商業の町の大企業で非協力的。
この映画にかくされた秘密とは?

ウーマン・リブとブルー・ムービーがテーマ。
タイトルの「青」も後者ですね。
作中でデーヴィッド・H・ロレンスが軽く言及されていますが、
イメージは「チャタレイ夫人の恋人」(1928)ですよね。
日本では「エロすぎる」と裁判までやった作品。
現代人からすりゃぜんぜんそんなことないのですが、
性愛を文学たらしめたものなので、興味ある人はこちらもどうぞ。
「世界の名探偵コレクション10」
鎌田三平訳 (集英社文庫) 1997 
探偵エラリー・クイーンは知り合いの本屋から相談を受けた。
ベストセラー『混沌のヨーロッパ』を買った人たちが
襲われたり、盗難に遭っているというのだ。
どうやら近くのビルから盗まれた《ヴィクトリア女王の黒の1ペニー切手》を
犯人がその本の中に隠したらしい…(「黒の1ペニー切手の冒険」)。
ニューヨーク市警のヴェリー部長刑事、
父のクイーン警視と協力し、怪事件に挑むクイーンの大冒険。

この「世界の名探偵コレクション10」は、
全10巻で名探偵たちを短編集形式で紹介したもの。
ラインナップは以下の通り。

【1】ホームズ(ドイル)
【2】ルパン(ルブラン)
【3】ブラウン神父(チェスタートン)
【4】ポアロ(クリスティ)
【5】コンティネンタル・オプ(ハメット)
【6】メグレ警視(シムノン)
【7】クイーン(クイーン)
【8】ミス・マープル(クリスティ)
【9】ストライカー(ウールリッチ)
【10】マーロウ(チャンドラー)

ここでは【7】のクイーンを紹介。
ラジオドラマの台本が貴重ですね。
短いけどエッセイ的なものもマニアにはたまりません。


 黒の一ペニー切手の冒険

「エラリー・クイーンの冒険」にも収録。
本書にはまえがきあり。25ドル!

(初出:「グレート・ディテクティヴ」1933年4月号)

 いかれ帽子屋のお茶会世界短編傑作集4」にも収録。
本書にはまえがきあり。なるほど、荒れているわけだ(w

(初出:「レッド・ブック」1934年10月号)

 暗黒の館殺人事件

「エラリー・クイーンの冒険」にも収録。

(初出:「アメリカン・マガジン」1935年2月号)

 人間が犬を噛む

「エラリー・クイーンの新冒険」にも収録。

(初出:「ブルー・ブック」1939年6月号)

 世界一下劣な男

ラジオドラマの台本。「読者への挑戦」付き。
貧しい人々から金利をむしり取り続け"世界一下劣な男"と
いわれた守銭奴シルベスター・ゴールが刺殺された。
今、法廷でその罪に問われているのはウィル・キーラー。
ウィルは地上12階のゴールのオフィスで、
被害者と最後に対面していたので、その容疑は確定的だった。
陪審員席にはエラリイとニッキイが成りゆきを見守っていたが
やがてエラリイは論理の穴を見つけだし――

(CBSラジオ「エラリー・クイーンの冒険」1940年8月18日放送
 脚本は「EQMM」1942年7月号掲載)

 ダイヤモンドを二倍にする男

ラジオドラマの台本。「読者への挑戦」付き。
発明家ラザルス教授がダイヤモンドの大きさを
2倍にする方法を発見したという話を宝石商に持ちかけた。
当然、宝石商ケニヤンは信用しなかったが、
徹底的な監視と検査を条件に
実験に使うダイヤのスポンサーになることを承諾。
……1週間後、その日の実験を終え帰宅したラザルス、
ふと不安を感じたケニヤンは金庫室兼実験室を調べて仰天、
すべてのダイヤが紛失していたのだ!
すぐにケニヤンはクイーン宅に相談をしに行き、
そこでラザルスが何者かに殺害されたと知る。
ラザルスはいかにしてダイヤを持ちだしたのか?
そしてだれに殺されてしまったのか?

(CBSラジオ「エラリー・クイーンの冒険」1940年5月5日放送
 脚本は「EQMM」1943年5月号掲載、2005年8月号に再録)

 芸術としての殺人

「ミステリ・リーグ」に掲載された小エッセイ。
クイーンとロスがまだ覆面だった頃のエピソード。

(初出:「ミステリ・リーグ」1934年1月号)
「現代世界戯曲選集 Z」
菅原卓編 (白水社) 1954 
全13冊のこのシリーズ。ラインナップは以下の通り。

【1】フランス篇  鈴木力衛編
【2】ドイツ篇   杉山誠編
【3】ロシヤ・ソヴェート篇 神西清編
【4】南欧北欧篇  会田由/山室静編
【5】イギリス篇  内村直也編
【6】アメリカ篇  菅原卓編
【7】一幕物篇   菅原卓編
【8】フランス篇2 鈴木力衛編
【9】アメリカ篇2 菅原卓編
【10】ドイツ篇2  杉山誠編
【11】イギリス篇2 内村直也編
【12】諸國篇    杉山誠編
【13】フランス篇3 鈴木力衛編

ここでは【7】をピックアップ。
クイーンのめずらしい一話が収録されているというので。
しかしや、意外な真相が待ちうけていたのだった――!
まずは収録作品を。

 ナポレオン式の男 S・ギトリー
 最初の夫婦 A・デュマ
 坊やに下剤を A・シュニッツラー
 カルラールのおかみさんの銃 B・ブレヒト
 春に S・オプストフェルダー
 元帥 モルナール・F
 密林地帯 P・ヤーリツェフ
 初恋 O・ヴェルガーニ
 ドン・ペルリンプリンとベリサの恋 G・ロルカ
 天国へ行かぬ男 S・スミス
 置手紙 J・バリー
 彼女の夫に嘘をついたお話 B・ショウ
 ポートレート L・ロビンソン
 特急寝台車 T・ワイルダー
 ポット・ボイラー A・ガーステンバーグ
 飢えたる者ども W・サローヤン
 13番ボックス殺人事件 E・クイン

さて、ここでQueen's Question!
この「13番ボックス殺人事件」こと
The Addventure of The Foul Tip の登場人物――

エラリイ・クイン
ニッキイ・ポーター
クイン警部
ヴェリイ巡査部長
チック・エイムズ(西部劇のスタア)
アイリーン・エイムズ(その妻)
メリノ(アイリーンのダンスパアトナー)
バーニイ(アイリーンのマネエジャー)
ヴィンセント(ナイトクラブの経営者)
モンゴメリイ(少年)
司会者

――を見て「おや?」と思うことはありませんか?
(訳が旧いとかではなく)
これだけでピンときたらQ道五段はありますぜ。
少年がポイント。
ではおおざっぱなストーリーを。

あるニューヨークのナイトクラブに
ハリウッドの映画スター、チックが妻アイリーンを捜しにやってくる。
しかし、勝気なアイリーンは前々から彼とは離婚したいと訴えており、
それに取りあわないチックと口げんかになってしまう。
その険悪なムードを取りつくろうべく、
マネージャーのバーニイが一同で野球観戦にでも行こうと提案。
――バーニイは花形である夫妻がいっしょにいるだけで
クラブにとってかなりの宣伝効果があると考えたのだ。
翌日。
球場に集合した一同は13番ボックスに陣取り、
その隣りの14番ボックスにはエラリイ一行が居合わせた。
さっそくファンに取り囲まれてしまったチックは
6人にだけにサインをすると通達し、
ことを終えると同時に突然、床に倒れてしまった。
すぐに即効性のある毒が死因と判明したが、
チックはこの一時間、なにも飲み食いしていないという。
それを聞いたエラリイはさきほどチックがしていたサインを
持ってきてくれたら5ドル払うと大声で叫びだす。
はたしてその目的とは?
そしてだれがいかにして彼を死に到らしめたのか?

ね、どこかで聞いたことあるような話でしょう。
そう、「人間が犬をかむ」とそっくりなんですな。
といっても、真相というか構造なんかは
これでおおきくちがっていたりもするのですが。
ラジオドラマにはネタの流用がよくあるのでこれもそのパターンと。

……けっこう苦労して入手した一冊なのに――!(w
The Adventure of the Murdered Moths 2005 
and Other Radio Mysteries Volume 1

「ナポレオンの剃刀の冒険 聴取者への挑戦T」
飯城勇三訳 (論創社)
動く密室と化した列車内で男が殺された。容疑者は七人。
しかもあるはずの宝石がなくなっており、
車内のどこを探しても見つからない……。
巧みなトリックとエラリーの名推理を堪能できる表題作を始め、
国名シリーズを彷彿させる傑作シナリオ八編を収録。
クイーン警視、ヴェリー部長刑事、ニッキイ他
おなじみのメンバーも登場する本格ミステリ。
全編 〈聴取者への挑戦状〉つき!
ラジオ版「エラリー・クイーンの冒険」のエピソードリストを併録。


 出版者の序

編者ダグラス・G・グリーンによる解義、謝辞。


 The Adventure of Napoleon's Razor 1939.7.9
  ナポレオンの剃刀の冒険

エラリー・クイーン……………探偵の
ニッキイ・ポーター……………その秘書の
ジョージ・レイサム……………セールスマンの
スミス、ジョーンズ、ブラウン…お高くとまった
リーリー・ドッド………………映画俳優の
ヘンリー・スタイルズ夫妻……新婚旅行中の
マルセル・コッサー・クサンチッペ・デュボワ…………フランス共和国(リバブリク・ド・フランセ)の
保安官……………………………テキサス州アマリロの
ハワード・マクナリティ上院議員…ミリーズ州議会の
リチャード・クイーン警視……ニューヨーク市警の
トマス・ヴェリー部長刑事……ニューヨーク市警の
フリント…………………………ニューヨーク市警の
タクシー運転手、車掌、赤帽

カルフォルニアからニューヨークへ向かう列車内。
ナポレオン研究家であるデュボワ教授の蒐集品、
ナポレオンの剃刀が盗まれてしまう。
それ自体は模造品にすぎず、無価値だったのだが、
翌朝、その剃刀で刺殺されている男が発見された!
さらにその男が所持していたはずのエメラルドが消失。
犯人は?そして宝石をどこに隠したのか?

これは兇器の空輸が不自然だよね。


 The Adventure of the Dark Cloud 1940.6.23
  〈暗雲(ダーク・クラウド)〉号の冒険

エラリー・クイーン……………探偵の
ニッキイ・ポーター……………その秘書の
マーガレット・バレンタイン…遊民の
パーシー・バレンタイン………その弟の
バレンタイン氏…………………"1929年の百万長者"
アルフレッド・クロケット……その義兄の
バイ船長…………………………〈暗雲(ダーク・クラウド)〉号を操る
リチャード・クイーン警視……ニューヨーク市警の
トマス・ヴェリー部長刑事……ニューヨーク市警の

ロングアイランド海峡に浮かぶ豪華ヨットに
富豪クロケットの意向で招待されたエラリイご一行。
その嵐の夜、クロケット氏が射殺されてしまう。
口述機に遺言を録音している最中だった。
その内容からエラリイは犯人を特定するが――

パークス(アナウンサー)とのやりとりは必要なのか(w


 The Adventure of the Bad Boy 1939.7.30
  悪を呼ぶ少年の冒険

ボビー・ヘイズ…………………悪い子(バッドボーイ)の
サラ・ブリング…………………少年の伯母の
フローレンス・ヘイズ…………少年の母親の
メルトン博士……………………ワシントン広場の医師
ミスター・ゴルディーニ………奇術師の
ウェバー(ヘル)………………………バイオリン教師の
エラリー・クイーン……………探偵の
ニッキイ・ポーター……………その秘書の
リチャード・クイーン警視……ニューヨーク市警の
トマス・ヴェリー部長刑事……ニューヨーク市警の
プラウティ博士…………………ニューヨーク市警の
フリント…………………………ニューヨーク市警の
ピゴット,ヘイグストローム…ニューヨーク市警の

ヘイズ母子と伯母サラが暮らす家庭で、サラが砒素中毒で死んでいた。
一週間前にも同様の毒殺未遂事件が起こっており、
エラリイは10歳の少年ボビーに疑いをもっているようなのだが……。

つか、犯人、逃れる気がまったくないよね(^^;


 The Adventure of Mr.Short and Mr.Long 1943.1.14
  ショート氏とロング氏の冒険

エラリー・クイーン……………探偵の
ニッキイ・ポーター……………その秘書の
リチャード・クイーン警視……ニューヨーク市警の
トマス・ヴェリー部長刑事……ニューヨーク市警の
ナポレオン・ショート…………〈20パーセント王〉の
ジョナサン・ロング……………ショート氏の使用人の
電報配達夫
石炭屋

「シャーロック・ホームズの災難 上」に収録された
「ジェイムズ・フィリモア氏の失踪」と同じネタ。
キャストの名前はちがっている。


 The Adventure of the Haunted Cave 1939.10.22
  呪われた洞窟の冒険

※この一編はEQ No.113 (1996年9月号)による

 The Adventure of the Haunted Cave 1939
  幽霊洞窟の冒険 (斎藤匡稔訳)

エラリー・クイーン………探偵
ニッキー・ポータ…………その秘書
クイーン警視………………エラリーの父親
ヴェリー部長刑事…………クイーン警視の部下
コリンズ……………………教授
スー…………………………その妻
コリン・モンターギュ……超常現象研究家
ローラ・モンターギュ……その娘
アレックス・リュイス……コリンの同僚
ガブリエル・ダン…………森の長老
フィンチ……………………山荘の執事

1939年10月22日に放送されたもの。
1944年4月13日に30分ものに短縮され放送、
タイトルは「死者の洞窟の冒険 Dead Man's Cavern」に変更。
Radio and Television Mirror誌(1940年5月号)に掲載。

コリンズの人里離れた山荘に滞在していたニッキーから
幽霊洞窟におびえた手紙をもらったエラリイは腰をあげた。
得体のしれない、怨霊のうめき声のような音が洞窟から響くという。
到着した翌朝、山荘の裏手にある洞窟の調査を予定していた
コリンが背後から絞め殺された死体で発見される。
洞窟の入口前は砂地で、足跡は被害者のものだけ。
さらに翌日、フィンチまでもが絞殺され……。
かつてひとりの山男が何人もの旅人を洞窟に誘いこみ、
絞め殺し、金品を奪い、洞窟内の湖に投げ捨てたという伝承。
今回の犯行は何者の手によるものなのか?エラリイの霊感が働く!


 The Adventure of the Murdered Moths 1945.5.9
  殺された蛾の冒険

エラリー・クイーン……………探偵の
ニッキイ・ポーター……………その秘書の
リチャード・クイーン警視……ニューヨーク市警の
トマス・ヴェリー部長刑事……ニューヨーク市警の
セス・ブラウン…………………レストランの店主の
ジェス・ペンドルトン…………花婿になりたがっている
バージニア・ウェンダー………花嫁になりたがっている
ウェンダー氏……………………その父親の
モートン・ピングル……………婦人服の卸売業者の

父ウェンダーにピングルと婚姻するよう強要されたバージニアだが、
彼女はジェスを恋しており、彼もまた彼女を同様に想っていた。
そんな火種をかかえていたある晩、
宿泊したキャビンでウェンダーがガス中毒死を遂げた。
状況から殺人であるらしい。
その部屋には数匹の蛾が死んでおり、
それをみたエラリイはたちまち事件の真相を見抜いた。
殺された蛾が語るものとは?

エラリイの結婚アレルギーは笑えるなあ(w


 The Adventure of the Black Secret 1939.12.10
  ブラック・シークレットの冒険

リチャード・クイーン警視……ニューヨーク市警の
トマス・ヴェリー部長刑事……ニューヨーク市警の
マイク・キャラハン……………〈ワールドワイド保険〉の調査員の
エラリー・クイーン……………素人調査員の
ニッキイ・ポーター……………その秘書の
エドマンド・ブラック…………〈C・D・ブラック社〉の社長の
アブナー・ワトスン……………その共同経営者の
バーベッジ氏……………………帳簿係の
キャスパー・リデル……………〈ブラック社〉の従業員の
ミス・フランダース……………〈ブラック社〉の従業員の
警官、書店の客、あごひげの男

老舗稀覯本売買古書店〈ブラック社〉で、
稀覯本が相ついで盗まれる事件が発生していた。
なりゆきから事件に首を突っこむことになったエラリイ。
そんな最中、アブナー・ワトスンが射殺されてしまう。
盗難事件、業界をゆるがす秘密、そして殺人のなぞをエラリイが断つ!

エラリイが犯人として捕まったり、
ライバルとしてマイクと探偵競争をしたり、
ミステリも3つあって、おまけにダイイングメッセージ付き。
盛りだくさんの内容でした。


 The Case of the Three Macklins
  三人マクリンの事件

ミニ・ミステリ。
ナイトクラブの歌手ジェニー・ガイは
"ニューヨークの富豪400人"に属するマクリン判事とその妻、
さらに息子を相手に強請りをくり返していた。
そうしてある晩、ついに彼女は殺されてしまう。
容疑者はいずれも呼びだされていた3人のマクリン。
現場に残されたコートを手がかりに、
エラリイはすぐさま犯人を特定してしまうのだが――

このネタはちがう短編でも使われていましたね。
あとこれだけ放送年月日が不明なんですけどっ。
The Adventure of the Murdered Moths 2005 
and Other Radio Mysteries Volume 2

「死せる案山子の冒険 聴取者への挑戦U」
飯城勇三訳 (論創社)
密室、ダイイングメッセージ、オカルト。
本格ミステリ・ファン必読のラジオドラマ版
「エラリー・クイーンの冒険」シナリオ集第2弾。
「国名シリーズ」と「ライツヴィルもの」、
両者の要素を兼ね備えた表題作を含む7編に加え、
法月綸太郎による解説を収録。

 The Adventure of the Last Man Club 1939.6.25
  〈生き残り(ラストマン)クラブ〉の冒険エラリー・クイーンの事件簿2」にも収録。

 The Adventure of the March of Death 1939.10.15
  死を招くマーチの冒険

エラリー・クイーン……………探偵の
ヴェリー部長刑事………………ニューヨーク市警の
クイーン警視……………………ニューヨーク市警の
サミュエル・マーチ……………現ナマ(ドウ)を腐るほど持っている
ジャスパー・ベイツ……………その秘書の
パトリック・マーチ陸軍中尉…マーチの息子の
ロバート・マーチ………………マーチの息子の
エドウィナ・フェイ……………ロバートの妻の
ロバータ・マーチ………………マーチの娘の
グレーンジ侯爵…………………ロバータの夫の
フィッツロイ氏…………………弁護士の
ハウイー…………………………ニューヨーク市警の
陸軍大佐、当番兵、各国の電話交換手(フィリピン、アルゼンチン、ペルー、
モンテカルロ、プエルトリコ、フランス、アルジェリア、エジプト)、医師

ニューヨーク最大のデパートを所有する大富豪サミュエル・マーチ。
彼に呼ばれたエラリーは恩知らずな3人の子供たちの捜索を依頼される。
やがて世界中に散らばった3人の子供たちが集まり、
サミュエルは明日にも新しい遺言状にサインをすると宣言。
そこには子供たちには一銭も財産を遺さず、
20年間忠実に勤めた秘書のベイツに全財産をゆずると記されていた。
そうして事件が発生。サミュエルが自室で刺殺されたのだ。
その手もとのデスクには"MARCH"とナイフで刻まれていた。
彼はなぜ最後のメッセージにファミリーネームを選んだのか?
(大文字だけど……いいよね)

ニッキー不在で荒れるエラリー、殺されかけるクイーン警視、
酔っ払うヴェリー部長、犯人への罠、全体的にとりとめない感じ(^^;
解説のニッキイのエピソードのほうがおもしろい(w
ついでにヴェリーの奥さんの名前はマリーらしい。

 The Adventure of the 
 Man Who Could Double the Size of Diamonds 1940.5.5
  ダイヤを二倍にする男の冒険世界の名探偵コレクション10」にも収録。

 The Adventure of the Woman in Black 1940.1.14
  黒衣の女の冒険

フィリップ・ジャーニイ………イギリス作家の
ノーマ・ジャーニイ……………フィリップの妻の
ランシング博士…………………フィリップの主治医の
オーグルビー……………………一族の友人の
テベッツ…………………………ロンドンっ子(コックニー)の
ジョン・キース…………………フィリップの異父兄の
クレメンス・ハル………………フィリップの妹の
エラリー・クイーン……………探偵の
ニッキイ・ポーター……………その秘書の
リチャード・クイーン警視……ニューヨーク市警の
ヴェリー部長刑事………………ニューヨーク市警の
フリント…………………………ニューヨーク市警の

クイーン家に著名な作家のジャーニイ一行が訪れ、
ジャーニイ一族にまつわる幽霊の話をした。
フィリップの祖父や父が黒衣の女の幽霊を
3度見たあとに不幸な事故で命を落としており、
ついにフィリップの前にも現われたというのだ。
はたして彼は青銅製の水差しで頭部を強打され殺害されてしまう。
不気味にただよう幽霊の正体とは?

なんと平凡な幽霊、犯人、犯罪、動機(^^;
心臓の悪い相手にショック死を仕向ける工作に徹しろと。
映写のほうが無茶でもよっぽどすごかったぜ。

 The Adventure of the Forgotten Man 1940.4.7
  忘れられた男たちの冒険

マンハッタン……………………ホームレスの一人の
カンザス…………………………ホームレスの一人の
カリフォルニア…………………ホームレスの一人の
ディキシー………………………ホームレスの一人の
ヤンク……………………………ホームレスの一人の
エラリー・クイーン……………探偵の
ニッキイ・ポーター……………その秘書の
クイーン警視……………………ニューヨーク市警の
ヴェリー部長刑事………………ニューヨーク市警の
サディアス・V・タイタス……やかまし屋の富豪の
マック……………………………警備係の
サミュエル・J・ボロック……巾着切りヤンクの本名
バック……………………………その飼い犬

誇りを保ち共同生活を送るホームレスたちの前に
新顔がやってきた。ヤンクと名付けられた彼だが、
財産の共有の掟を破り追放されてしまう。
その一週間後、ホームレスたちの小屋から彼が死体で発見された。
なぜ彼はこの場所に舞い戻り殺されてしまったのか?

"アイルランド風幸運"は指輪を指していたのかな。

 The Adventure of the Dying Scarecrow 1940.1.7
  死せる案山子の冒険

エラリー・クイーン……………探偵の
ニッキイ・ポーター……………その秘書の
クイーン警視……………………ニューヨーク市警の
ヴェリー部長刑事………………ニューヨーク市警の
パパ・マシュー…………………農夫の
ママ・マシュー…………………その妻の
ジョナサン・マシュー…………二人の息子で舞台裏にいる
ジェド・ビゲロー………………作男の
ホーマー・クレイ………………農夫の
ジュリー・クレイ………………その妻の
ハークネス博士…………………医者の
ジェフ・ウィテカー……………保安官
サム・スモール…………………治安判事
看護婦、ウェイトレス

7月。カリフォルニアからの帰路、
エラリー一行は中西部ののどかな田園で取り乱した青年と遭遇。
そばの畑に立っている案山子が血を流しているというのだ。
近寄ってみると案山子の格好をさせられた刺し傷のある男の姿が。
すぐに病院へ運ばれ、一命は取りとめたが、
近所のだれもが彼のことをしらず、意識が戻ると脱走してしまう。
そのまま行方はしれず、月日は流れ12月。
ある情報から再びあの田園へとおもむく一行。
今度は真夜中に雪だるまが血を流し、
中から例の男が刺殺された状態で発見され――

プロットの怪奇っぷりが最高です。
田園のマシュー一家も奇人ばかりで秀逸な悲劇ミステリ。

 The Adventure of the Lost Child 1939.11.26
  姿を消した少女の冒険

ハーヴェイ・モレル………………ヘッセン・クロニクル紙社長の
エルシー・モレル…………………その妻の
アリス・モレル……………………二人の娘の
アーサー・リヴィングストン……政治家の
ビル・フリン………………………編集長の
ミス・ドーリイ……………………モレルの秘書の
グリーシャ・ドルブニイ…………発明家の
シルキー・バレット………………ギャングの
エラリー・クイーン………………探偵の
ニッキイ・ポーター………………その秘書の
クイーン警視………………………ニューヨーク市警の
ヴェリー部長刑事…………………ニューヨーク市警の
ディック・スカールピノ…………ギャングの(w
〈殺し屋〉トミー…………………ギャングの(w
新聞社の人々

悪徳政治家の批判記事や発明家との権利をめぐって問題を抱える
新聞社社長ハーヴェイの8才の愛娘が誘拐された。
犯人は身代金10万ドルを要求。
しかし事件は最悪の展開を見せ――

すさまじいサスペンスと緊迫感でした(;´Д`)
普通にうるうる来たよ。あらゆる方面で問題作です。
The Adventure of the Grand Old Lady 2010 
and other television adventures of Ellery Queen

「ミステリの女王の冒険」
飯城勇三編 (論創社)
1970年代半ばにアメリカで放映されたテレビドラマ「エラリー・クイーン」は、
「刑事コロンボ」のコンビ、R・レヴィンソンとW・リンクが
製作総指揮を務めた本格ミステリドラマである。
本書はそのシナリオのうち、英国女流ミステリ作家とエラリーが
推理を繰り広げる未製作シナリオの表題作ほか、4本を収録。
さらにシリーズガイドと、全23話のエピソードガイドを併録したファン必携の一冊。

1975-1976年にテレビ放映されたミステリドラマの台本集。
町田暁雄氏による全23話の詳細なガイド付き。
テレドラクイーンのすべての要素が詰まっています。

 The Adventure of the 12th Floor Express
  十二階特急の冒険
 脚本 デヴィッド・H・バルカン&アラン・フォルサム

エラリー・クイーン………………ミステリ作家兼素人探偵
クイーン警視………………………エラリーの父親。ニューヨーク市警の警視
ヴェリー部長刑事…………………クイーン警視の部下
フランク・フラニガン……………ニューヨーク・ガゼット紙の記者
デイヴ・ティーガーデン…………ニューヨーク・ガゼット紙のカメラマン
ヘンリー・マナーズ………………デイリー・イグザミナー社の社長
ハリエット・マナーズ……………ヘンリーの妹
マイケル(ミッチ)・マッカリー…デイリー・イグザミナー紙のコラムニスト
ソーントン・ジョーンズ…………デイリー・イグザミナー紙の編集長
アルバート(アル)・クリンガー…デイリー・イグザミナー社の顧問弁護士
ゼルダ・ヴァン=ダイク…………デイリー・イグザミナー社の大株主
アーサー・ヴァン=ダイク………ゼルダの孫デイリー・イグザミナー紙の記者
フレッド・ダンホッファー………エレベーター係
ジュディ・アダムス………………四階の受付係
ドロシー……………………………五階の受付係
サリー………………………………十二階の受付係
レイモンド…………………………雑用係(コピーボーイ)
制服警官 警察の鑑識係 六階受付係 夜警 管理人

新聞社社長がエレベーターで1階から12階に向かう。
受付嬢が待ち構えていたが開いた扉の中はからっぽだった。
そのままエレベーターは6階、5階と下降し、
そこでエレベーター内で射殺されている社長が発見される。
ライツヴィルへの旅支度をしていたエラリーは
クイーン警視に釣られ事件に首をつっこむことに。

動く密室のエレベーターは魅力的な現場ですね。
あの違和感ばりばりの電気技師って伏線はまんまなのね(w
作中でエラリイが1912年4月2日NY生まれって表記があった。なぜに。

 The Adventure of the Chinese Dog
  黄金のこま犬の冒険
 原案 ジーン・トンプソン
 脚本 ロバート・ヴァン・スコイク

エラリー・クイーン………………ミステリ作家兼素人探偵
クイーン警視………………………エラリーの父親。ニューヨーク市警の警視
ヴェリー部長刑事…………………クイーン警視の部下
イーベン・ライト…………………ライツヴィルの大富豪
ジュリア・ライト…………………イーベンの娘
ウォーレン・ライト………………イーベンの甥
チルダ・マクドナルド……………ライト家の家政婦
ゴードン・ワイルド………………ジュリアの婚約者
オスカー・エバハート……………ライツヴィルの保安官
ラルフ・ブラウン…………………保安官助手
スチュワート(ステュ)・ライス…保安官助手
ウィル・ベイリー…………………検死官
ヘンリー・パーマー………………食料雑貨店店主
アルギー・サイクス………………ニューヨークの私立探偵
マミー(ウェイトレス) グレース(クイーン警視の秘書)
デルバート(タクシー運転手) 牧師

宝石をちりばめた純金製のこま犬の像。
娘の結婚式のこの記念品に贈ろうとしていたイーベンが、
保安官たちが警備中の屋敷で撲殺されてしまう。兇器はこま犬像。
休暇をライツヴィルで過ごしていたクイーン父子に救援依頼が。

前話と父子の事件に対する意気込みが逆転してる(w
事件関係者がみんなあれだな、難があるなぁ。
兇器から解決の流れはスマート。

 The Adventure of the Mad Tea Party
  奇妙なお茶会の冒険
 原案 エラリー・クイーン
 脚本 ピーター・S・フィッシャー

エラリー・クイーン………………ミステリ作家兼素人探偵
クイーン警視………………………エラリーの父親。ニューヨーク市警の警視
ヴェリー部長刑事…………………クイーン警視の部下
アダム・カー警部補………………一〇四分署の刑事
スペンサー・ロックリッジ………ブロードウェイのプロデューサー
ローラ・ロックリッジ……………スペンサーの妻
レティシア・アリンガム…………ローラの母親
ジョニー・ロックリッジ…………スペンサーの甥
ポール・ガードナー………………建築家
ダイアナ・ガードナー……………ポールの妻
エミー・ラインハート……………女優
ハワード・ビガーズ………………スペンサーの助手で広報担当
ドイル………………………………ロックリッジ家の執事
車掌 タクシー運転手

基本的に原作に忠実。
(「世界短編傑作集4」や「世界の名探偵コレクション10」などに収録)
テレドラの台本にするとこうスリム化されるのかぁという興。

 The Adventure of the Wary Witness
  慎重な証人の冒険
 脚本 ピーター・S・フィッシャー

エラリー・クイーン…………………ミステリ作家兼素人探偵
クイーン警視…………………………エラリーの父親。ニューヨーク市警の警視
ヴェリー部長刑事……………………クイーン警視の部下
フランク・フラニガン………………ニューヨーク・ガゼット紙の記者
ホビー…………………………………ニューヨーク・ガゼット紙の書庫管理人
リンヴィル(リン)・ヘイゲン………〈聖パトリック・デイ殺人事件〉の被告
プリシラ(プリス)・ヘイゲン………リンの妻
テリー・パーキンス…………………リンの共同経営者
ジェフリー(ジェフ)・キャンベル…リンの弁護士
ニック・ダネロ………………………〈聖パトリック・デイ殺人事件〉の被害者
イボンヌ・ダネロ……………………ニックの妻
アーマンド・ダネロ…………………ニックの父
ジェイムズ(ジミー)・ダネロ………ニックの弟
トム・セレブリージ…………………地方検事補
判事……………………………………〈聖パトリック・デイ殺人事件〉の裁判官
ケンプ博士……………………………ニューヨーク市立病院の医師
廷吏 記者1 記者2 警官 ホテルの昼勤のフロント係

ニック・ダネロを射殺した容疑で裁判を受けるリン・ヘイゲン。
犯行当時、現場にひとりの見知らぬ女性がいて、
自分の無実を証言できるはずだと訴えたが、警察は行方をつきとめられず。
大学時代の旧友であるリンの窮地にエラリーが出馬。
調査を進めるうちに鍵を握る女性から電話がかかってくるが……。

タイムテーブルがものをいう事件。
犯行動機は弱いですが(殺人者だらけになる!)、
探偵対犯人の決着の仕方がかっこいいです。

 The Adventure of the Grand Old Lady
  ミステリの女王の冒険
 脚本 ピーター・S・フィッシャー

エラリー・クイーン………………ミステリ作家兼素人探偵
クイーン警視………………………エラリーの父親。ニューヨーク市警の警視
バート・レニアン…………………財務省の特別捜査官
サイモン・ブリマー………………ラジオのミステリ番組のホスト
レディ・シビル・オースチン……女流ミステリ作家
ピーター・デニケン………………ワイン商
ダニエル(ダン)・マクガイヤー…少佐
エレアナ・キャントレル…………従軍看護婦
アンリ・ビスカルド………………車椅子の銀行家
ポール・ビスカルド………………その息子
アーサー・ビショップ……………ファッション・デザイナー
ニコラス・クレイン………………チェスの名人
オリバー……………………………クイーン・メリー号の船長
ベロウズ……………………………クイーン・メリー号の事務長(パーサー)
バトラー……………………………クイーン・メリー号の二等航海士
ホフマン……………………………テレビの取りつけ屋
トミー&ペギー……………………クイーン家の客人
ニュースキャスター 給仕 女性客 男性客 船員 看護婦 女性

ニューヨークに着港した外航船内で刺殺事件が発生。
被害者は元ゲシュタポ幹部で、
偽造紙幣の原版を密輸しようとしていたらしいが発見はされず。
たまたま乗船していたベテラン女流作家と協力し事件に挑むエラリー。

チェスのエッセンスが刺激的な作品。
2重解決は形式としてたまりませんが、むしろシビルに失礼だよなぁ。
この話は未製作になったもので、本邦初公開だとか。
Royal Bloodline : Ellery Queen, Author and Detective

「エラリイ・クイーンの世界」 1974 SSS
間山靖子・浅羽莢子・秋津知子・志方とよ子訳(早川書房)
「エラリイ・クイーンは、アメリカの探偵小説そのもの」(アンソニイ・バウチャー)
の評価どおり、クイーンは国名シリーズの輝かしい出発、
ドルリイ・レーン四部作の充実、ライツヴィルものの成熟と、
つねに最大の情熱を傾けてミステリの王道を歩んできた。
本書は気鋭のミステリ評論家が、全作品の分析はもとより、
雑誌編集、アンソロジーの編纂、ミステリ研究、
そして作品の映画・テレビ・ラジオへのドラマ化まで、
巨匠の多彩な活動をあまさず網羅して、
その魅力の秘密にせまった初の本格的研究である。

著者はフランシス・M・ネヴィンズJr.(Francis M. Nevins, Jr.)
1943年ニュージャージー生まれ。
法律学の大学助教授であり、ミステリの分野でも活躍。
本書で1974年度のMWA特別賞を受賞。

クイーン研究書の最高峰。
幼年時代の写真、経歴からはじまり、
全作品(聖典)の高等批評、雑誌、編纂書から
映画・テレビ・ラジオまで、クイーンのすべてが集結。
文句があるのは目次くらいしか見当たらない。
(もうちょっとていねいに分類してほしい^^;)
本書抜きでクイーンは語れない、ってくらいすばらしい。

そろそろ時代的に完全版を出してもらいたいものです。
Ellery Queen & His Rivals 1979 

「名探偵読本4 エラリイ・クイーンとそのライヴァルたち」
石川喬司+山口雅也編 (パシフィカ)
1930年代、英米で花開いたパズル〈謎解き〉小説の黄金時代、
数々の難事件を解決し、本格ミステリー・ファンを魅了しつづけてきた
名探偵たちのプロフィールと魅力を探る。

名探偵読本です。
全8巻でラインナップは以下の通り。

【1】シャーロック・ホームズ
【2】メグレ警視
【3】ポアロとミス・マープル
【4】エラリイ・クイーンとそのライヴァルたち
【5】シャーロック・ホームズのライヴァルたち
【6】ハードボイルドの探偵たち
【7】怪盗ルパン
【8】金田一耕助

では【4】を紹介。

華麗な推理と颯爽たる身ごなしでファンを魅了する天性のヒーロー
 エラリイ・クイーン

輝く銀髪とすらっとした長身の背後に常に悲劇の翳を宿す老優探偵
 ドルリイ・レーン

巨大な体躯とときおりみせる喜劇的性格で
ファンに愛される英国生まれの二人の探偵
 ギデオン・フィル博士
 ヘンリイ・メリヴェール卿

驚異的な博学と北欧風の美貌、美術と音楽を中心にした
広範な趣味とペダントリーを武器とする精神貴族
 ファイロ・ヴァンス

美食と蘭をこよなく愛し、ホームズの私生児と噂される
超肥満巨体の安楽椅子探偵
 ネロ・ウルフ

がメイン。なかでもクイーンに特化しています、タイトル通り。

研究、評論、エッセイ(カー問答、新問答まで!)から、
クイーン編"黄金の二十"やヴァンダインの"二十則"、
カーの"黄金の四大公理"など作家本人による随筆もあり。
やっぱり山口雅也大師父の筆はばつぐんだね。

徹底的ともいえるほど中身があるので、
クイーンファンならぜひとも手元に置いておきたい一冊です。
入手困難だけれど、根性で奪取しましょう!

しかし、かもよしひさ氏のデザインはなんとかならんのか(w
地図(住居、NYやライツヴィル)はいいけど、
相関図(人物)がアメコミ調というか、リアルでこわいです(w



おまけ☆
本書のQ宅の見取り図を参考に「ザ・シムズ2」で再現。
こんな感じ→ その1 その2
ついでにQ親子を住まわせる(w →ハイ・ポーズ
Ellery Queen and His Rivals 1999 

「名探偵の世紀 エラリー・クイーン、そしてライヴァルたち」
森英俊・山口雅也編 (原書房)
なぜ僕たちは名探偵に魅せられるのか。―すべての答はここにある!!
クイーン、カー二大巨頭の未収録初公開作品競演!
幻の雑誌『ミステリ・リーグ』紙上再現、
カー、ライス、スタウトらの初公開エッセイを収録!
また北村薫のパスティーシュ“短編”など
人気ミステリ作家の記事も満載!!
今世紀最後の徹底保存版。

上の「名探偵読本」の強化版とでもいいましょうか。
20年の時を経て決定版の登場です!
本書では新たなライバルが加わっています。

パリの"メフィストフェレス"
 アンリ・バンコラン

クレイグ・ライスが生んだ破天荒な酔いどれ探偵トリオ
 J・J・マローン
 ジェイク・ジャスタス
 ヘレン・ジャスタス

クイーンが中心であることに変わりはありません。
目玉は〈ミステリ・リーグ〉紙上再現かな。
エッセイ「クイーン好み」や、
読者の声に答える「クイーン編集長への手紙」、
ヴェリー部長刑事が見た名探偵だらけの夢の話、
そこに出てくる間違いを探す「読者への挑戦」など
本書でしか読めないような部分が盛りだくさん。
ラジオ・ドラマ「重なった三角形」も貴重。

 重なった三角形(The Double Triangle)

クイーン家に取り乱した青年が駆けこんでくる。
オーソン・ベイリーと名乗る彼は
自分でも知らない男を殺すかもしれないと訴えた。
辛抱づよく事情を訊きだすエラリイ。
どうやら彼はふとしたきっかけで
自分の妻が不貞を働いていることを知ったらしい。
そこでエラリイにその相手をつきとめてほしいと依頼。
この単純な浮気調査を引き受けたエラリイは
ニッキーに笑われつつ、翌朝、彼の家を張りこみ開始。
郵便配達夫、セールスマン、
背中に三角形のコゲがついたコートの男、
そしてひとりの夫人がおとずれ状況は一変。
それまで応対していたベイリー夫人が出てこないのだ。
家内へ突入したエラリイは射殺された夫人を発見し――

あとカーのこわい台本もあるよ。
「死体盗人(The Body Snatchers)」ってタイトル。

ほかにも魅力的なエッセイ・評論もたっぷり。
ヴァンダインがぼろくそで同情しちゃったな(^^;
ケツを一蹴り、ってのはわかるけど、袋叩きじゃね。
のりりんのクイーン論も神がかってるよね。
某階堂が浮いてるけど、まあいつものことか。

一番仰天したのが山口雅也天子のライツヴィル論。
なにあのサプライズ・エンディング!
なんだっていまさらあんな事実が><
いやあ、ふるえたですよ。うめいたですよ。

さて、「名探偵読本」の名物(?)だった不気味なイラストが
本書ではすべてカットされています。
これはこれで残念といえば残念(w
ほかにも削られているエッセイ等もあるので、
かならずしも本書だけでいい、というわけでもないんですね。
やはり両方そろえるのがベストですぞ。
「エラリー・クイーン Perfect Guide」 2004
「エラリー・クイーン パーフェクトガイド」 2005

飯城勇三・著/編/訳 (ぶんか社文庫/ムック) 
2005年はエラリー・クイーン誕生100周年。
幻の未訳作を含めて全46作品の徹底解説ほか
映像・漫画なども完全網羅、秘蔵インタビュー、
クイーンを愛する作家が選んだベスト5など
本格ミステリーの巨匠を完全解析。

ムック「Perfect Guide」の詳細はこちら→
文庫版「パーフェクトガイド」の詳細はこちら→

はい、もういうことありません(w
およそ理想的なガイド本です。
終始ほめちぎりですよ。
もちろん、どちらも買うのがベストですが、私見では、
「Perfect Guide」はライトユーザー向け、
「パーフェクトガイド」はヘビーユーザー向けかなぁと。
前者は装画、イラストのカットが多いんですよ。
(漫画もあるし。エラリイがきれいな石原良純みたいだけど)
後者ではほとんど削られ、代わりにラジオドラマが掲載されているので
すでに聖典を読破してる人にはたまらないでしょう。

その辺の紹介だけしてしておこう。


 サソリの拇指紋の冒険(The Adventure of the Scorpion Thumb)

ラジオ&テレビジョン・ミラー誌1940年12月号掲載。
クリスマスの翌日、クイーン宅に現われたウェーバー氏。
彼の会社の金庫の金2万5千ドルが消えたらしい。
容疑者はふたりだけで、
ひとりは共同経営者で億万長者のマッケイ。
ひとりは事務長で正直者の義父ロビンソン。
およそ動機がなく、警察沙汰も嫌ってエラリイに調査を依頼。
さっそく行動を開始したエラリイは関係者たちの
新年パーティにさそわれ、その席上、マッケイが毒殺されてしまう。
盗難事件、そして殺人事件の真相は?

 チェリーニの盃の冒険(The Adventure of the Cellini Cup)

ラジオガイド誌1940年1月26日号掲載。
クイーン父子とニッキーは
パーカー・ギャラリーのオークション室にいた。
失われた名品とされていた純金のチェリーニの盃が出品されるのだ。
この盃は金策に困窮した老ケンドールが屋根裏部屋に転がっていたもの。
ケンドールはパーカーの鑑定すべきというアドバイスを無視し、
1000ドル即金で売りわたしたが、
この盃の実際の価値が判明するや、盃を返せと逆ギレ。
むろん、そんな言い分は通らずオークション開始。
結局、6万5千ドルで競り落とされた、その晩。
パーカー宅に覆面の泥棒が入り、盃が盗まれてしまう。
犯人はだれなのか、エラリイが挑む!

 クイーン好み

「ミステリ・リーグ」の連載エッセイ。
同誌は1933年創刊10月号、11月号、12月号、翌年終刊1月号のみ。
この時期に書かれたというのもポイントです。

ミステリー殺人事件の顛末について
 (ABOUT THE AFFAIR OF THE MYSTERY MURDER CASE)

第一号より。題名についての小話。

高等批評
 (THE HIGHER CRITICISM)

第一号より。高等批評と採点方式。項目は――

1、プロット
2、サスペンス
3、解決の意外性
4、解決の分析
5、文体
6、人物描写
7、舞台設定
8、殺人方法
9、手がかり(トリック)
10、読者へのフェアプレイ

――で、これらを各10点、合計100点満点で評価しようとうもの。
本書にはいくつかの作品の採点表もありますが、転載はやめよう。
ただ、「レーン最後の事件」が84点なのはいかがかと(w

ちなみに、50点が水準作(average)、それ以下が凡作(poor)、
60点で佳作(fair)、70点で良作(quite good)、
80点で秀作(excellent)、85点で傑作(extraordinary)、
そして90点以上で名作(classic)とランクするみたい。

来るべき世界の姿
 (THE SHAPE OF THINGS TO COME)

第三号より。未来のミステリを推理!


とまあ、こんな感じ。
しかし、カラーの初刊本一覧は何時間ながめていてもあきないねぇ。
The World Series Crime 1942 

「エラリー・クイーン探偵事務所」須原和男訳 (語学春秋社)
ワールド・シリーズ第6戦,9回裏2死満塁。
観戦者の目は,大リーグきっての強打者,
スパークスのバットに注がれている。
第3戦まで火を噴く勢いのスパークスだったが,
突然スランプに陥ってしまった。
なぜなら,彼愛用のバット“アンクル・サム”が何者かに盗まれたからだ。
イーグルス敗北の危機!!
3時間以内に真犯人を突き止めろ――
E・クイーン探偵事務所に緊急の連絡が入った。

CD付きの音声教材です。公式サイトで視聴もできます。
イングリッシュ・トレジャリーシリーズのラインナップはリンク先参照(本書はNo.19)

おそらく、同社の Midnight theater シリーズ3の

1985,92「ワールド・シリーズの犯罪」(カセット付)

のリメイク(2006)と思われます。訳者もおなじですし。
原作は例によってラジオ・ドラマ。
CD音声はオリジナル音源を使用しているんですって!感激!

では登場人物とあらすじを。

スパークス(スパーキー)……イーグルスの強打者
リリー…………………………その妻
マック・マックルーン………イーグルスの監督
デイトン………………………イーグルスのオーナー
スージー………………………デイトンの個人事務所員
パゴーリ………………………大物ギャンブラー
コリンズ………………………ラークスの監督
バック・フィッシャー………イーグルスの一塁手
テッドおじさん………………スポーツキャスター
フロイド………………………チームスタッフ
エラリー・クイーン…………探偵
ニッキー・ポーター…………エラリーの秘書
クイーン警視…………………エラリーの父
ヴィーリー巡査部長…………その部下

イーグルス対ラークスのワールド・シリーズ最終戦。
イーグルスの強打者スパーキーは不振にあえいでいた。
彼の愛用するバット"アンクル・サム"が盗まれていたのだ。
そして最終決戦当日。
マックルーン監督はエラリーにバットの捜索を依頼した。
バットはスパーキー夫妻のアパートで盗まれ、その間に訪問した者は
デイトン、パゴーリ、コリンズ、フィッシャーの4人だった。
それぞれにエラリーの尋問が行なわれるが、みな関与を否定。
いったいだれが、なぜ、いかにして盗みだしたのか。
ついに試合は9回裏までせまってしまう。
エラリーは決着前にバットを取りもどすことができるのか?

消えたバットの行方は想像つきますが、
犯人はうまいことずらしましたね。
音声といっしょに読むという経験も新鮮で滋味があります。

そうそう、いちおう教材なので、
勉強になるかどうかの観点でいうと、効果はあやしいです(w
テキストはページの左側に英語、右側に日本語訳があるだけで、
ポイント説明や解説なんて皆無ですから。
60年以上も前というのも現代英語と差がありそうだし。
古典名作ならいざしらず、こんな作品では汎用性もあるまいに。
こんな作品といってもクイーンファンには
すさまじい価値があるのですがががっ。
まったく、なんだってわざわざこの作品が
選ばれるような椿事が起こったのでしょうね?
「配達されない三通の手紙」(松竹) 1979 
美しい三姉妹の住む地方の上流家庭で起こった殺人事件を描く。
エラリー・クイーンの小説「災厄の町」の映画化で
脚本は「絞殺」の新藤兼人、
監督は「鬼畜」の野村芳太郎、
撮影は「俺は上野のプレスリー」の川又昂がそれぞれ担当。

邦画です。映画レビューはやはり、

CinemaScape−映画批評空間−

でしょう。はい、貼りたかっただけです(w

詳細はこちら→

片言の日系三世ボブがエラリイらしい。
なんかタンクトップ+短パンでマラソンしてたけど
気のせいだよな。

「災厄の町」を「災厄の家」にしたような映画。
舞台は山口県萩市。
基本的な部分はおなじなので、
小説未読ならネタバレは覚悟しましょう。


さて、重要なのは特典映像。
ダネイが登場していると聞いて購入したわけですが、

尺が短すぎるorz

時間にして10秒くらい……。
いや、たとえ数秒だとしても、
カラーで動いて肉声が見聞きできるのだから
ファンなら絶対購入すべきですけども。
あれインタビューっぽいんですよ。
なのになんだってカットしたのかなあ。
それともあれで全部なのかなあ、ちがうよなあ。

あと、本編より特典の紀行のほうがおもしろかったような。
「フジテレビ開局50周年記念DVD Yの悲劇 DVD-BOX」
(ポニーキャニオン) 1978
ストーリーが難解で映像化されなかった
エラリー・クィーンの名作のドラマ化。
耳の聞こえない探偵が事件を解決する。
探偵役に石坂浩二を配し、設定等すべて日本に置き換えての連続ドラマ化。
さらには、警部の娘(夏目雅子)も調査に加わり、探偵の助手として活躍。

放送年月日:1978/7/15-1978/8/19 毎週土曜日 22:00-22:54 放送

詳細はこちら→

アマゾンで7kかぁ、国産テレドラだし……。まあ、そのうち。
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